国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

生理用品の受容によるケガレ観の変容に関する文化人類学的研究(2017-2019)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|基盤研究(C) 代表者 新本万里子

研究プロジェクト一覧

目的・内容

本研究は、「トランスナショナリズム(Transnationalism)」を含む従来の移民研究における分析視点を補い、移民が出身先の家族や友人と関係を継続することや、出自の国家・民族を基盤として関係する側面だけでなく、移住先において、状況に応じて、移住先社会のマジョリティや他の移民と関係を構築することを明らかにする。具体的には、京都市・東九条地域において日本人、在日コリアン、さらにフィリピン人移住者が関係を構築する過程を焦点とする。これらの動向に注目することは、日本国内における、日本人と複数の出自の海外移住者が関係を形成する研究の前進となる。また、海外のフィリピン人移住者研究、在外コリアン研究にも発信し、フィリピン人移民、在外コリアンそれぞれが同胞以外の人びとと関係する過程に注目するという新しい視点を導入する。

活動内容

◆ 2018年4月より転入

2019年度実施計画

資料収集がまだ十分とはいえない東部高地州で調査を実施し、当該地域における生理用品の普及の状況と月経をめぐる慣習について資料を補充する。また、生理用品を輸入し販売している企業にアクセスし、生理用品を販売する上で何らかのイメージを流布しようとする意図はあるのかないのか、パプアニューギニアで生理用品を販売する上での苦労や工夫はあるのかなどについても聞き取りを行う。
 次年度は本研究の最終実施年度であり、学会発表や雑誌論文を通して研究成果を公表していく。

2018年度活動報告

本研究は、生理用品の受容による月経のケガレ観の変容を、ジェンダーの視点から文化人類学的に考察することを目的としている。
 平成30年度は、パプアニューギニアの農村部と都市部において、生理用品へのアクセスと学校教育の影響、NGOによる衛生指導に関する調査を行った。また、首都ポートモレスビーでは、生理用品のほか、生理用品の宣伝媒体となっている雑誌、新聞、薬局のチラシ、ポースター等を収集した。平成30年度の研究実施計画では、生理用品を供給する企業によるイメージ戦略についても研究する予定だったが、調査の結果、パプアニューギニア国内で販売されている生理用品は、現在のところすべて輸入品であり、輸入品を販売している業者による販売活動において、生理用品に関するイメージ戦略には力が入れられてはいないと考えられた。また、農村部では雑誌等が流通していないこともあり、月経にまつわる文化的側面への影響は、現時点では、宣伝活動による企業のイメージ戦略よりも、むしろ実質的な生理用品の流通や、学校とNGOによる衛生教育が関わっていると考えられた。日本など先進国では、企業によるイメージ戦略が月経にまつわるイメージの転換に果たした役割が大きかったことと比べると、月経にまつわる慣習に影響を及ぼす要因の違いとして比較しうる資料となったと考えられる。東セピック州の調査地については月経にまつわる既存の社会的慣習についての調査をほぼ終えており、生理用品が普及し衛生教育が行われているという現在的な状況のもとでの、月経をめぐる女性たちの対応を明らかにできると考えられる。

2017年度活動計画

当該年度、本研究では、京都市・東九条地域を集住地域とする在日コリアン、日本人、フィリピン人移住者の関係に焦点を当て、研究計画調書において示した3つの過程のうち1つを重点的に明らかにする。(1)多文化交流 サロンに集まるフィリピン人たちの同施設内での活動と地域の人びとと関係する過程である。
特に、当該地域におけるフィリピン人グループや集まる個人たちを対象の中心とし、「東九条マダン」、フィリピン人信徒KYOTO NANBUグループなどと関わる日本人、在日コリアンも調査の視野に入れることとする。調査はフィールドワークと参与観察、社会関係構築過程を理解するためのインタビューなどを活用し、実施する。
そして、調査で得られた情報の一部は京都市・東九条地域にも還元する。調査については、主に研究代表者が行う。但し、いくつかの参与観察についてはベル裕紀氏を研究協力者として協働して実施する。さらに、「東九条地域研究会」を実施する。研究会では、京都市・東九条地域を専門としている社会学者である山口健一氏(福山市立大学教員)、山本崇記氏(静岡大学教員)を招聘し、フィールドデータを民族誌とするため、助言をうける機会とする。行程は次のとおりである。
4月(多文化交流サロンなど関係グループと調査実施過程、注意事項などの打ち合わせ、多文化交流サロン春まつりへの参与観察)、5~12月(多文化交流サロンでのフィリピン人が参加する企画での参与観察)、8月(多文化交流サロン夏まつりへの参与観察)、7~12月(11月上旬に開催予定である東九条マダンの実行委員会活動合計8回への参与観察)、12月(クリスマス前後の活動KYOTO NANBUグループ参与観察、多文化交流サロンに関する中間報告を日本移民学会の冬季大会において報告)、1月(多文化交流サロン、フィリピン人活動参加主要メンバーにインタビュー調査)、2月(多文化交流サロン所長M氏、職員U氏へのインタビュー調査)、3月(データの整理、多文化交流サロン・ニュースレターにてフィリピン人利用者の活動紹介、東九条地域関係研究会を開催し、多文化交流サロンに関して報告)