国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

農の「EU化」に伴うトランシルヴァニア牧畜の再編に関する文化人類学的研究(2017-2019)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|基盤研究(C) 代表者 杉本敦

研究プロジェクト一覧

目的・内容

本研究の目的は、「環境保全・動物福祉・食の安全」に関するEUの畜産基準の導入に対し、ルーマニア・トランシルヴァニアの牧畜民がどのような実践を行って生活を維持し、それをいかに語るのかを、文化人類学的なフィールドワークによって明らかにすることにある。
国家によって牧畜の脱生業化が推し進められる状況に置かれた山村社会と牧畜の再編について研究することで、グローバル化とローカル化の過程を問い直す。また、現代ヨーロッパの牧畜という視点から、流通を前提とした生産活動という問題をも組み込んだ新しい牧畜論の可能性を提示することを目指す。

活動内容

2017年度活動計画

初年度はEUおよびルーマニアの農業政策の概要と、当該地域における実施状況を把握する。
一回目の調査では、ブカレスト及びブラショヴに滞在し、農業政策の担当官を対象に牧畜における生産過程・動物福祉・生産物の安全性の管理と検査方法・流通に関する規定・補助金の交付状況について聞き取りを行う。
二回目の調査では、フィールドワークの対象となるF村M谷のインフォーマントを訪ね、今後の調査研究のための準備を行う。M谷には、2016年3月の時点で、①高齢者が年金と合わせて自給自足的に経営する農家が30軒、②数百頭のヒツジを飼養する大規模農家が2軒、③金銭収入を得るためにウシ飼養に特化した若年層の農家が5軒、存在している。本研究計画では、資源構成と家族構成について十分な資料を収集している①の農家10軒、②の農家2軒、③の農家3軒、計15軒を調査対象に定め、集約的に研究を進める。
彼らとは、博士論文研究以来のフィールドワークにおいて既にラポールを確立し、研究の趣旨・成果の公開方法について説明して受諾を得ている。しかし、今次の研究を開始するにあたり、彼らを訪問して再度これらについて説明し、現状確認を行う。