国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

食の認識体系とその変容ータイにおけるMSG(グルタミン酸ナトリウム)の消費と拒絶(2018-2019)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|研究活動スタート支援 代表者 大澤由実

研究プロジェクト一覧

目的・内容

本研究は、グローバルに消費されるMSG(グルタミン酸ナトリウム)を例に、その消費と拒絶という食の選択に着目し、選択の背景にある食の認識体系がどのように構築され変容するのかを明らかにする。現在調味料や添加物として消費されているMSGは、日本での販売からわずか半世紀足らずで世界中に消費が広まった。同時に、MSGの拒絶や消費にまつわる否定的な動きが世界各地で見られる。本研究は食の人類学の視点から、MSGの大量消費国の1つであるタイにおいてどのようにMSGの消費が広まったのか、そして近年どのように拒絶に至ったのか、その過程と背景を解明する。MSGの消費と拒絶という現象から、グローバル化と食、食・健康に関する情報と選択、食品工業・食品科学への信頼性、社会性と食などの、現代が抱える食と健康に関する課題について包括的に考察し、食べることの複雑性・多層性を探求する。

活動内容

2018年度活動計画

本年度は、タイにおけるMSG(グルタミン酸ナトリウム)の消費、購入等関する定量的データ、及びMSGの受容と消費に関する歴史的文献を収集する。MSG に関する新聞、雑誌、インターネット記事、MSG産業に関するアーカイブ、マーケティング資料、市場調査報告書等をタイおよび日本において収集する。
同時に、タイの首都バンコクと第二の都市チェンマイ及びその周辺において、2回の現地調査を行う。現地調査ではタイにおける、食の専門家(研究者、食産業関係者、飲食店など)及び一般消費者への聞き取り調査を通じて、MSGの消費と拒絶の実態を調査する。具体的には(1)一般家庭において、どのように MSG やうま味を持つ食品が消費されているのかの調査、(2)MSG 不使用を掲げている・いない飲食店等でのMSGの利用と消費に関する聞き取り調査、そして(3)MSG の消費に纏わる噂、健康被害例などの収集を行う。