国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

人とウミガメの民族誌 -ニカラグア先住民の商業的ウミガメ漁-(2018)

科学研究費補助金による研究プロジェクト|研究成果公開促進費(学術図書) 代表者 高木仁

研究プロジェクト一覧

目的・内容

本書の刊行目的は、カリブ海の東ニカラグア自治州に暮らすミスキート・インディアンのアオウミガメの利用についての記録を残すことにある。
研究地のある東ニカラグアのミスキート諸島近海には、広大な大陸棚が広がっており、入植したイギリス系移民や先住民らは、そこに繁茂する海草を餌とするアオウミガメを生活の糧として利用してきた。19世紀中葉には、この海域でのウミガメ生産が英領ケイマン諸島民らによって産業化し、その肉は欧州へと輸出されて人気を博した。ミスキート・インディアンというのは、この東ニカラグアの熱帯低地に暮らす先住民の混血子孫にあたり、比較的最近まで半自給的な生活を営みながら、この近海でケイマン諸島民の漁を手伝ってきた。その生態の詳細な調査がおこなわれた1970年代以降、この地の人々は内戦を経験し、現在、自治州が設立されるに至っている。本書は、国際動物保護法であるワシントン条約の批准後、自治州の中でインディアンらがどのようにアオウミガメを利用して生活しているのかを記録したものである。