国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

再現模写・仮想空間構築による敦煌莫高窟千仏図が有する規則的描写の複合的評価(2019-2021)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|基盤研究(B) 代表者 末森薫

研究プロジェクト一覧

目的・内容

中国甘粛省にある敦煌莫高窟の北朝、隋、唐の時代に造営された窟の多くには、趺坐仏を等間隔に並べ規則的に配色を施す千仏図が描かれている。千仏図は、同じ配色の趺坐仏が斜めに連続する視覚的特徴と、隣り合う趺坐仏の頭光・身光の配色関係による視覚的特徴を有し、参拝者の動作を導いたり、観念的な意味を付すなど、石窟内に宗教的空間を創出する上で大きな役割を担ったことが想定される。しかし、現状では彩色の変退や光環境の変化により、千仏図の規則的描写が参拝者などに与えた元来の視覚的な効果は限定的にしか分からない。本研究では、A)彩色材料・描写技法の検討に基づく千仏図の再現模写の制作・評価、B)デジタル技術による石窟仮想空間の構築・運用、C)心理学実験による視覚認知の解析、の複合的な方法により、千仏図の規則的描写が石窟空間にもたらす特徴を実証的に評価し、仏教信仰の場である石窟空間を改めて解釈する。

活動内容

2019年度実施計画

初年度となる2019年度は、三ヵ年の詳細計画を作成した上で、研究代表者の末森と研究分担者の八木が莫高窟を管轄する敦煌研究院との協議を進める。そして、研究対象窟を選定し、下記三つの項目について調査・研究を進める。
A)再現模写の制作(担当:末森、園田、日髙)
先行研究の整理、現地調査を通して、研究対象窟に描かれた千仏図に用いられた彩色材料および技法を検討する。その結果に基づき、彩色材料および技法を再現した、配色の異なる二つの千仏図の模写を制作する。模写制作においては、絵画制作や彩色材料を専門とする研究者の協力を得る。また、制作した再現模写について光学調査を実施し、仮想空間に反映する彩色の基礎データを得る。
B)石窟仮想空間の設計(担当:末森、安室、八木)
現地調査において、研究対象窟の二次元画像データ、三次元点群データ、光環境のデータを取得する。その結果に基づき、デジタル技術を用いた彩色や光環境の再現方法を検討し、石窟仮想空間の実装設計をおこなう。
C)視覚認知実験の評価因子の検討(担当:末森、日髙、八木)
再現模写および石窟仮想空間を用いた視覚認知実験に向け、評価因子を整理し、予備実験をおこなう。予備実験をおこなうにあたっては、造形心理・彩色心理を専門とする研究者の協力を得る。