国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

紛争後社会のレジリエンス:オセアニア少数民族の社会関係資本と移民ネットワーク分析(2019-2022) 基盤研究(C)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|基盤研究(B) 代表者 丹羽典生

研究プロジェクト一覧

目的・内容

本研究は、オセアニア地域を対象として紛争後の社会におけるレジリエンス(紛争・災害などから復興する力)について、少数民族との関係から解き明かすことを目的としている。世界的にみて紛争は、1980年代後半以降グローバル化の影響のもと一部で悪化したが、近年は関係修復の局面に入っている。
本研究では、紛争によって分断化された社会の中でオセアニア少数民族が繰り広げる社会関係の修復に関する戦略を分析する。具体的には、ローカル社会のもつ社会関係資本の差異と特質の活用からグローバル化されたネットワークを利用する戦略までを分析することを通じて、紛争後の分断をいかに乗り越えるのかという、レジリエンスのメカニズムについて考察する。

活動内容

2019年度実施計画

本研究では、オセアニア島嶼部における地域的なハブでもある多民族国家フィジーと関係をもつ少数民族に焦点化する。当地は、1987年に起きたオセアニア史上初のクーデタ以降、断続的にクーデタなどの政治問題が繰り返され、その政治的動向がひろく関心の的となっている。
フィジーにおける少数民族は、植民地時代に経済的法的に不安定な位置におかれ、紛争後の国家では政治的社会的に周辺化されてきた。また、人口統計すら整備されていないなど、基礎的な情報から不足している。本研究は、本年度は、フィジーの国立公文書館・大学図書館・関係省庁での史料調査及び少数民族集落における民族誌的調査を通じて、基礎的データの十全な整備を行う。前者の文献調査については、集落の形成・移転、他民族との混交状況、自助組織の形成状況と既存政党との関係についてあきらかにする。少数民族関係データは、フィジー以外にも少数民族の本国、オーストラリア、ニュージーランドといった域内大国及びイギリスという元宗主国のあいだに散在しているため、必要に応じてそちらでも資料の収集を行う。
後者の民族誌的調査については、また研究分担者は各人が対象とする少数民族関係の集落や都市の拠点などにおいて予備的な現地調査を行い、各少数民族が置かれた状況、紛争とのかかわり、紛争後の戦略について、概括する。少数民族の移動に伴いフィジー国外にて現在居住している場合は、可能な範囲でそちらのフォローアップ調査も行う。
全員で、文献・調査研究によって得られたデータをもとに議論を進めることで、各民族の特徴と差異について検討する。またそうした知見をもとに次年度以降の調査の進め方を吟味する。