国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

日本手話、台湾手話、韓国手話における語と意味の歴史変化の解明(2019-2022)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|基盤研究(C) 代表者 相良啓子

研究プロジェクト一覧

目的・内容

本研究の目的は、歴史的に関連がある日本手話ファミリーの語や表現の意味および用法の変化を明らかにすること、また、その成果をこれまで進めてきた音韻、形態の変化に関する研究成果と合わせて手話言語学における史的変遷を体系的に示すことである。
本研究は、また、これまで日本手話の研究では行われてこなかったグローバルな視点を重視して研究を進めるという点で創造性がある。オランダのナイメーヘンに本部を置くラドバウド大学のOnno Crasbornが運営する手話言語のデータベースGlobal Signbank (https://signbank.science.ru.nl/)を利用して、語の形と意味を分析するが、そのために有効な語や表現の意味や概念の登録の仕方をCrasbornと共同で検討する。

活動内容

助成事業期間中の実施計画

【1年目】現在使用されている表現と似ている形をもつ古日本手話のデータ約「100語」を抜き出し、これらの語彙について音韻および形態の情報を記述する。現在使用されている日本手話については、原が作成した『日本語-日本手話事典』(1997)を基にした語彙の音韻情報のデータベースの中から関連する語を選択し、Global Signbank に登録する。これを日本手話の「標準手話」と位置づけ、相良が収集した大阪、東京、台南、台北、ソウル、釜山で得られたデータを整備する。対象とする話者が高齢のため、日本手話のデータ収集をできるだけ早めに開始する。また、ハンブルクで開催される国際手話言語学学会(TISLR13)で日本手話ファミリーを対象とした語彙の形とその変化についての発表を行い、他の専門家からのフィードバックを得る。
【2年目】1年目に作成したデータを、Global Signbank に登録して基盤データとし、それを用いて分析を進める。対象となる語の音韻および形態の情報を記述し検索することにより、同じ形の語がもつ言語的特徴を横断的に抽出できるようにする。同時に、意味・概念の変化についてのデータ収集の準備に取りかかる。データ収集の構想が整った後、3手話それぞれについて、80才以上と30代から40代の話者、それぞれ2組ずつの会話を通して、文脈による語彙の使い方や意味の違いに焦点をあてたデータの収集を行う。国内では、歴史的関連がある東京と大阪の他、熊本など、語の意味の変化についての記録がある変種も含めて収集する。台湾では台北と台南、韓国ではソウルと釜山で調査を行う。ニューメキシコ大学で開催される言語学会(HDLS14)で中間発表をする。
【3年目】収集したデータを分析し、意味と用法の違いを分析する。Global Signbankへの「概念」の情報の追加について、適切な記述法をオランダのチームと検討し、情報の追加を進める。さらにその結果を踏まえて研究分担者の菊澤、原と音声言語と手話言語における語の形と意味の変化のあり方について通言語的な観点から研究を進める。
【4年目】語の形と意味の記述に基づいて、双方の間の関連性を分析し、変化の過程を明らかにする。また、データベースの課題や今後の運営について Global Signbank を利用している研究メンバーとラドバウド大学で意見を交わし、次の研究に展開させる。全体的な比較を通して研究成果をまとめ、国際手話言語学会(TISLR14)で発表する。日本語と英語で論文を執筆する。