国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

インド西部の地方都市における宗教実践とローカリティ形成に関する人類学的研究(2019-2022)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|基盤研究(C) 代表者 三尾稔

研究プロジェクト一覧

目的・内容

インドの地方都市はグローバル化の新たなフロンティアとなり、伝統的なネイバーフッド(身体の近傍に広がる実体的地理的空間)は変容しつつある。しかし、宗教実践に根差したローカリティ(対面的な社会関係に基づいて経験される生のあり方)を瞥見してみると、住民はネイバーフッドとローカリティを切断させることなく、独自の文化を維持しているように思われる。これは従来のグローバル化論の予想とは異なっており、それがインド社会の持続性の基盤となっていることが予想される。
本研究では、研究代表の調査研究の実績のあるインド西部の地方都市(ラージャスターン州ウダイプル市)を具体的事例として取り上げ、同市固有の神の寺院を核とした宗教実践とそれを支える人びとの社会関係の動態を社会人類学的手法によって調査し、グローバル化のもとでのインドの地方都市のローカリティの持続と変容の特徴の解明に貢献することを目ざす。

活動内容

助成事業期間中の実施計画

本研究は、インドの地方都市をグローバル化の新たなるフロンティアと捉え、ローカリティ形成の基盤である宗教実践に着目し、地方都市がグローバル化や経済発展の影響を受ける中で、住民がどのようにローカルな生を意味あるものにしているかという問いの解明を目ざすものである。
上記の問いの解明にむけて、本研究では具体例として研究代表が現地調査を継続してきたインド西部の地方都市ウダイプルを取り上げ、同市の旧市街のヒンドゥー教文化を特徴づけるローカルな神、チャールブジャ神の寺院をめぐる宗教実践に焦点をしぼり、その動態ならびに人びとのローカリティ形成の変容を社会人類学的手法によって解明することを目的とする。
より具体的には、ウダイプルの旧市街を中心に1回あたり2週間程度の参与観察やインタビュー形式の聞き取り調査を重ね、①チャールブジャ神寺院の近傍の街区の構成や社会構造 ②チャールブジャ神寺院を核とした宗教実践とそれを支える人びとの構成と関係性 ③その実践の参加者の生に持つ意義 ④今日の社会状況の中でローカリティの再生産に意義を持ちうる他の宗教的実践の有無 ⑤もし④があるとしたら②と④の相互関係 ⑥最初からカースト混住が想定されて建設され、チャールブジャ神寺院などの中心的寺院のない新市街の社会構成と宗教実践の把握 ⑦新市街との比較を通じた旧市街の特徴の把握といった諸点の解明にあたる。
本格的現地調査は平成31年度から3年計画で実行し、4年目の34年度には補充的調査を行うとともに調査成果を論文としてまとめ発表する。現地調査はチャールブジャ神寺院の大祭礼が行われる春(4月頃)と夏(8月末頃)を中心に年2回から3回ずつ実施する。31年度は夏の大祭礼の時期に調査を行い、事例とする寺院とそれを支えるカースト集団を選定する。事例としては、a)寺院を中心とした街区への集住の維持度 b)カーストの階層的地位 の2つの基準から相互に対照しやすい4例程度を選ぶ。31年度はさらに祭礼はないが婚儀が集中的に行われる冬期(1月頃)にも調査を行って、寺院での実践と人びとの生との関わりを把握する。32年度は31年度に選定した寺院と街区で春と夏の大祭礼、及び平常時での調査を実施し上記①~⑤の論点の解明を目ざす。必要に応じ、元の街区からの移住者の移住先での追跡調査も行う。33年度は32年度と同じ時期に調査を行って事例を増やしつつ、新市街での聞き取り調査も行い、上記⑥、⑦の解明にあたる。また32年度までの成果を踏まえて学会で研究発表を行う。34年度は学会発表で得られるコメントも参考にして不足している点を補う調査を2回程度実施し、最終的な成果を論文としてまとめて学会誌等に投稿する。