国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

肉食性動物のドメスティケーション:毛皮産業近代化における人と動物の関係の変化(2019-2022)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|若手研究 代表者 大石侑香

研究プロジェクト一覧

目的・内容

中世以降に拡大する世界的な毛皮交易は野生毛皮動物の乱獲と資源枯渇を招いた。これを受けて19世紀には毛皮として価値の高い肉食性毛皮動物の家畜化が進み、世界商品としての毛皮の生産方法が狩猟から飼育へと移行する。本研究の目的は、どのように野生毛皮動物の家畜化が行われ、人と動物の関係にどのような影響を与えたかについて解明することを目的とする。具体的には、ミンクやキツネ、タヌキを対象に、①19世紀以降に日本と北ユーラシア、北米において肉食性毛皮動物の家畜化を経て近代毛皮産業(生産・流通・消費・装いの文化)が展開する経緯、②それによる人間の動物観・行動ならびに毛皮動物自体の身体・行動等の変化を解明し、超域的な人と動物の相互関係の移り変わりの過程を文献と民族誌的調査により明らかにし、越境的・歴史的観点から検討し、毛皮と人のグローバルヒストリーとして表す。

活動内容

助成事業期間中の実施計画

2019年度:4月-8月は先行研究の収集・整理を行う。国立国会図書館および日本毛皮協会において『毛皮ジャーナル』や毛皮産業関連の社史、農業政策等の資料を収集し、キツネ・タヌキ・ミンク等の家畜飼育の展開過程を整理し、日本の毛皮産業全体像を明らかにする(国内旅費、その他)。9月にロンドンの大英図書館等で毛皮産業の近代化過程とその後の取引に関する資料を収集し、家畜化が世界規模の毛皮交易にもたらした影響を考察する(海外旅費、資料購入のための物品費、その他)。11月-12月にサンクトペテルブルクの人類学・民族学博物館にて毛皮に関する物質・文献資料の収集・精査を行う(海外旅費)。1月-2月に、北海道、新潟、山形でミンク・キツネ・タヌキ飼育にかつて従事した人々を対象に、当時の生産体制や技術、動物観の変化について聞き取り調査を行う(国内旅費)。なお、関連する書籍および調査で使用するビデオカメラと周辺機器、記録メディアを購入する(物品費)。なお、資料整理のために人件費・謝金を使用する。
2020年度:6-7月にシベリアのキツネ飼育場において現地調査を実施し、飼育者の技術や動物観、動物自体の身体や行動の変化を明らかにする(海外旅費、資料購入のための物品費、その他)。また、2月にサンクトペテルブルクにおいて国際毛皮競売に関する資料収集及び毛皮業者への聞き取りを行い、ソ連から現在までの生産・流通システムを解明する(海外旅費、資料購入のための物品費、その他)。なお、研究成果発表にかかる英文校閲のため人件費・謝金を使用する。
2021年度:7月に日本の奈良県と北海道において毛皮なめし・縫製業に携わる方々にインタビュー調査を行う(国内旅費)。また、11月-12月にフィンランドのミンク飼育場で現地調査を行い、飼育者の技術や動物観、動物自体の身体や行動の変化を明らかにする。また、その他北欧の競売会社や生産者団体等を対象に聞き取りを実施する(海外旅費、資料購入のための物品費、その他)。なお、フィンランド語通訳のために人件費・謝金を使用する。
2022年度:8月-9月に1860年代に世界で初めてキツネ家畜化が成功させたカナダのプリンス=エドワード島で現地調査を行い当時の記録を収集し、どのように家畜化が行われたか再構成する(海外旅費、資料購入のための物品費)。また、12月に日本毛皮協会や毛皮関連業者、日本企業が参加する香港国際毛皮競売の調査を行い現在の流通システムを把握する(国内旅費・海外旅費)。なお、研究成果発表にかかる英文校閲のため、人件費・謝金を使用する。以上の調査研究を総括し、超域的な人間と動物の相互交渉の歴史という観点からドメスティケーションの過程と展開を考察する。