国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

アオウミガメを例にした稀少動物に対する人為空間の構造的理解に向けての比較研究(2019-2020)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|研究活動スタート支援 代表者 高木仁

研究プロジェクト一覧

目的・内容

本研究の目的は、地球上で稀少となっている動物に着目して、人類がそれを巡ってどのような人為環境の空間を作り上げているのかを研究することである。これまで申請者はカリブ海にて草食性のウミガメが最も多く漁獲されているモスキート・コースト先住民自治州にて学術調査研究を行ってきたが、そこで見えてきたのは先住民らの残虐性のみだけではなく、近代化された社会における動物の強い管理統制志向でもあった。
本研究では更に広くカリブ海や大西洋、インド沖へと赴き、大航海時代から始まったとされる英国人(旧英領ジャマイカ・英領ケイマン諸島・旧英領トリニダード・トバゴ島・セーシェル諸島)による開発史を追跡して更に理解を深めていく。

活動内容

助成事業期間中の実施計画

初年度は東カリブ海のトリニダード・トバゴ島や英国本国、大西洋上のアセンション諸島を訪れて、現地調査及び公文書や歴史資料の調査を行う。初年度に計上した助成金の9割は、その旅費及びその調査で使う雑費等に充てる予定である。次年度にはインド洋の英領セーシェル諸島および旧英領のサラワク州を訪れて、同様に現地調査や、公文書や歴史資料の調査を行う。初年度同様、計上した助成金の9割を、その旅費及びその調査で使う雑費等に充てる予定である。以下に現地での調査項目及び研究項目設定の背景1)と実地計画2)~5)を以下に示す。1).これまでの調査によって、大量消費地であるモスキート・コーストの近海の英領ケイマン諸島にて20世紀初期頃にスクーナー型帆船と、それに積載可能なキャットボートと呼ばれる小舟が開発され、それがカリブ海での産業開発の基礎を作ったことがわかってきた。現在はその技術がモスキート・コーストの先住民の土地へと伝播し、現地語で「大きな舟(Duri Tara)」と呼ばれるものへと改良されていることもわかった。
2).1)より、調査に赴く英領・旧英領の近海において、英領ケイマン諸島同様、19世紀後半から20世紀中期までの最盛期に、この旧英領の近海でどのような漁獲が行われていたのかを詳細に調査していく。モスキート海岸のようにそれが近海に普及している可能性も捨てきれないため、仔細に調査したい。3).2)を集めて、大英帝国下における熱帯地方を中心としたアオウミガメの漁獲生産や流通の全体像を明らかにする。4).適宜、3)と比較可能な稀少動物の開発に関する資料を集める。それによって、地球の有限性が訴えられる以前、人為による動物資源の開発の最盛期がどのような物であったか提示するための資料を作る。5).これら資料を基に現生人類が地球上でどのような人為環境の空間が創り上げているのかを論じていく。