国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。
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国立民族学博物館研究報告

『国立民族学博物館研究報告』は、民族学(文化人類学)の発展に寄与するために、国立民族学博物館が刊行する研究誌です。この目的に即して、民族学、人類学および関連諸科学に関する論文、書評論文、資料、研究ノートを掲載しています。年4回出版。

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国立民族学博物館研究報告 2018 43巻2号

2018年10月31日刊行

バックナンバー

目次

 

43巻1号 All 43巻3号

概要

 

 

アナガーリカ・ダルマパーラのブッダガヤ復興運動とインド
―宗教的普遍主義からシンハラ仏教ナショナリズムへの軌跡―
外川昌彦

 本稿は,シンハラ人仏教徒アナガーリカ・ダルマパーラ(Anagarika Dharmapala)による近代仏教復興運動の軌跡を,ブッダガヤを拠点とした大菩提協会の活動を通して検証する。これまでダルマパーラの活動に関する先行研究では,一方で,世界的な仏教徒のネットワークを組織し,近代のインド仏教復興運動を先導する改革者として評価してきたが,他方で,独立後のスリランカではタミル・ヒンドゥー教徒との23年間に及ぶ内戦をもたらした,戦闘的なシンハラ仏教ナショナリズムの唱道者としての側面が指摘されてきた。しかし,世界の仏教徒に連帯を呼びかけるブッダガヤの運動が,どのような経緯から排他主義的な宗教ナショナリズム運動を導いたのかは,十分には検討されてこなかったと言えるだろう。
 本稿は,ダルマパーラのブッダガヤでの活動が,台頭するインド民族主義運動との連帯の接点を失い,国内のヒンドゥー教徒を刺激する扇動的な活動として植民地政府の疑念を深めることで,ブッダガヤでの活動が行き詰まり,最終的にシンハラ仏教ナショナリズムへと向かう背景を与えてゆく経緯を論じている。

1 問題の所在
  1.1 ダルマパーラとシンハラ・ナショナリズム
  1.2 仏教ナショナリズム運動の源流
  1.3 ダルマパーラの思想的変遷
2 英領インド政府が見たダルマパーラ
  2.1 地所購入の交渉
  2.2 日本の仏像の搬入の経緯
3 インド国内の反発
  3.1 インド言論紙の論調
  3.2 インド民族主義の台頭とブッダガヤ問題
4 ダルマパーラの代表性
  4.1 英領インド人協会
  4.2 ブッダガヤ問題諮問委員会
5 ブッダガヤでの活動のとん挫
6 「シンハラ仏教徒」への言及

* 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所

キーワード:ダルマパーラ,シンハラ仏教ナショナリズム,大菩提協会,ヒンドゥー社会,英領インド政府

 

 

無縁・有縁・縁を訳すコンテキスト
―パプアニューギニア・トーライ社会を対象に―
小坂恵敬

 「二重の翻訳」を特徴とする日本人類学は,知の非対称性を意味する「知の中心と周縁」の問題を解決する可能性を持つ。実現の具体的方法として,日本の民俗概念の他社会への文化翻訳があり,本稿は歴史学者・網野善彦が日本の中世社会を対象に議論した「無縁」と「縁」,派生概念の「有縁」を採り上げる。展開の余地が残る交換に焦点を当て,パプアニューギニアのトーライ社会への文化翻訳を検討する上で,所有表現を利用する。文化翻訳のコンテキストを検討する中で,モノと人との呪的関係が「無縁」になり交換可能となった日本中世社会に対し,トーライ社会では所有表現において身体関係のない譲渡可能表現の適用対象が「無縁」と対応し,交換を可能にしていることが明らかになる。また,「有縁」物の交換は日本中世社会で困難だが,トーライ社会では交換参加者の社会的変化をもたらす重要なものと扱われる。文化翻訳の実践は,自社会と他社会について「知の中心」では提示できない新たな側面を明らかにすることができる。

1 一重の翻訳は可能か
2 無縁・有縁・縁
3 コンテキストとしての所有表現
  3.1 トーライの所有表現
  3.2 血が結ぶ関係
4 無縁と有縁の交換
  4.1 トーライの交換
   4.1.1 商品交換
   4.1.2 贈与交換
  4.2 譲渡可能表現と無縁
  4.3 有縁の交換 5 貝貨タブの扱い
6 結語

* 南山大学人類学研究所

キーワード:知識の生産,無縁,文化翻訳,所有表現,交換

 

 

日本における応援組織の発展と現状
―四年制大学応援団のデータ分析を中心とする試論―
丹羽典生

本稿は,日本の四年制大学における応援団を事例として,応援組織の変化と現状を分析するものである。依拠するデータは,各大学応援団が刊行する印刷物や大学の学友会関連の情報,応援団関係者が運営するホームページやソーシャル・ネットワーキング・サービスなどに散在する各種の情報を中心に筆者が集約・整理した。それらの分析を通じて,以下3 点のことを示した。ひとつめが応援団の起源と拡大について。国公立大学応援団のほとんどが戦後の大学改革と時期を同じくして第二次世界大戦後に起源をもつのに対して,私立大学の古くからある応援団はそうした断絶の影響をあまり受けていないこと。また,ベビーブーム世代の進学期に大学の量的増大に合わせて多くの大学で作られるようになったこと。ふたつめは,応援団の質的変化で,応援団の典型的な型とされることもある三部構成(リーダー部,チアリーダー部,吹奏楽部)は,もとの多機能的な応援団が機能分化とジェンダー構成の変化を経た結果,比較的近年生み出されたものであること。そしてみっつめに,応援団の多くは体育会所属であるが,一定数が独立団体的な位置づけにあることである。

1 はじめに
  1.1 問題提起
  1.2 データ収集の方法
2 応援団関連データ
  2.1 国立大学の例
  2.2 公立大学の例
  2.3 私立大学の例
3 データからみえてくる傾向と論点
  3.1 応援団の起源と普及
   3.1.1 設立時期の違い
   3.1.2 戦後の再編とその影響
   3.1.3 応援団の普及
  3.2 応援団の機能分化とジェンダーの変化
  3.3 大学内における位置づけ
4 終わりに

* 国立民族学博物館超域フィールド科学研究部

キーワード:応援,応援団,学友会,大学,課外活動

 

43巻1号 All 43巻3号
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