国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。
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中国地域の文化展示のフォーラム型情報ミュージアムの構築

研究期間:2016.4-2018.3/ 強化型プロジェクト(2年以内) 代表者 横山廣子

研究プロジェクト一覧

プロジェクトの目的

中国地域の文化の展示場は平成26年3月に新構築され、その後に来館した国内外の人びとから種々の反響が寄せられているが、現状では、新構築展示を通じて収集・整備・蓄積された文化資源の活用と享受は、主として来館者の範囲にとどまっている。そこで、中国地域の文化の展示を対象に、日本語と中国語のフォーラム型情報ミュージアムのコンテンツを作成し、一般公開するシステムをいかに構築するかを研究し、完成させる。それにより、この文化資源は、その価値を共有する人びとが空間的に大きく拡大するのみならず、時間的にも展示場の変動をこえて将来にわたって長く継承されていくことになる。資源の活用を増大させることにより、文化資源自体に新たな情報を付け加え、またその意味合いを深化させていく。

プロジェクトの内容

本プロジェクトで公開するコンテンツは、新構築後に展示されている標本資料ならびにその代替候補として選定された標本資料を対象とし、標本資料の写真、展示場のキャプションやパネル解説などの情報に加えて、本館の標本資料データベースにある基本情報、標本資料に関して記述した種々の文字情報、動画情報などから構成される。館員と国外の研究者やソースコミュニティの人びととの協働を通して標本資料に関する情報を整理・補充・収集してデータベースを準備した上で、一般公開用コンテンツを作成する。公開システムは、双方向的に情報交換できる仕組みを備え、継続的に情報の追加が可能なように設計し、フォーラム型ミュージアムを実現する。
本館の先行するフォーラム型情報ミュージアム・プロジェクトは、データベースの構築を主たる目的とするものが多数を占めてきたが、本プロジェクトは、情報ミュージアムとしての発信に重点をおく。コンテンツ作成の前段階としてのマルチメディア・データベースの準備においては、利用に適したものがあれば、先行のプロジェクトから生まれた情報生成型データベース・システムを活用する。
具体的には、次のような段階を踏んで本プロジェクトを実施する。
1.対象とする標本資料を確定した後、それらに関する上述した各種の情報を収集・整理して日本語のデータベースを完成させ、それを中国語訳する。
2.中国語のデータベースを元に、ソースコミュニティや現地の研究者の協力を得て、標本資料の基本情報の補充につとめ、その他の関連情報を集める。この作業の過程において、必要性と効果の高いものについて、国外研究協力者による標本資料の熟覧あるいは館内研究員と国外研究協力者による現地調査を行い、データベースの充実をはかる。
3.収集・整理された日本語および中国語のデータベースの情報を検討し、一般公開用コンテンツを作成する。
4.コンテンツの内容およびフォーラム型の情報ミュージアムとして必要な機能を備えたオンラインで一般公開するシステムを設計し、公開する。

期待される成果

中国地域の文化の展示では、たとえば民族衣装については、現地で着用している人びとの写真をすべての民族衣装に付け、一部については着用を動画で解説する電子ガイドを製作するなど、標本資料を文化的脈絡とともに展示することに努めた。しかしながら展示場内で提供できる情報量は限られている。本プロジェクトで完成するフォーラム型情報ミュージアムは、それに比べて格段に多彩で内容の充実した文字情報ならびに映像情報を提供するものとなる。しかも、フォーラムの場を通して情報が継続的に深化し、発展していく可能性があり、そこからのフィードバックとして研究の進展も見込まれる。現在、地球上において中国語を解する人口は非常に多く、本プロジェクトによって文化資源の活用の大幅な拡大が期待される。また、情報ミュージアムが広範な領域に向けて情報発信することにより、博物館の存在価値を高めることにもなると思われる。

2016年度成果
  1. 今年度の研究実施状況
    新構築後の中国地域の文化展示場での展示をウェブ公開できる情報ミュージアムのシステムを構築することが本プロジェクトの目的である。ウェブ公開により、博物館まで来ることができない一般の方々に、広く展示を見ていただくことが可能になる。同時に、国外の研究者やソースコミュニティの人々などとの間での双方向的情報交換をおこない、それを通して標本資料に関する情報の充実もはかる。
    今年度の最初の作業として、本プロジェクトで対象とする展示資料の範囲を定め、展示場とは異なるウェブ公開の特質を考慮してウェブ用の展示単位を検討し、確定する作業を実施した。さらに本情報ミュージアム・システムの全体デザインの検討も行なった。その結果、当初、目指していて日本語および中国語での公開に加え、日本語、中国語、英語の3言語で公開する方針を定めた。中国語は字体の異なる簡体字、繁体字があり、その両方の字体での公開をするため、合計4種類の文字によるウェブ公開用のデータベースを作成した。
    具体的には、展示単位ごとのセクション、サブセクション、コーナーなどの解説文、写真および描画パネルのキャプション、展示資料のキャプションについて、3言語、4フォントでの文字データを揃えるための、翻訳および整理作業をおこなった。
    また、展示単位ごとのウェブ公開用の写真の構成を検討し、システムにアップするためにフォルダ別に写真映像データを整理した。展示場の限られたスペースに比べ、ウェブ上では必要に応じて、展示場よりも多くの写真を掲載することが可能である。実物そのものを直接見ることができないという情報ミュージアムに弱点を、写真を中心とする展示情報を付加することで補うことができた。
  2. 研究成果の概要(研究目的の達成)
    対象とする展示資料の確定ならびに展示単位確定作業を通じて、合計784の展示単位を確定した。中国地域の文化展示場で展示されている標本資料数は、1070件近くある。標本登録上の標本資料単位数に比べて、展示単位数が少ないのは、一つのセットとしてウェブ上で公開したほうが効果的な場合、複数の標本資料を一つの展示単位としてまとめることにしたためである。また、標本資料の展示がなく、写真のみによって情報を伝えている展示もあり、その場合は、写真資料を一つの展示単位とした。
    展示をウェブ上の情報ミュージアムとして提示する場合、展示場内のレイアウトとは異なる配慮が必要であり、プロジェクト・チームで合議を重ねて、ウェブ公開に適合した提示方法を編み出した。
    当初は、展示資料のソース・コミュニティの主たる言語である中国語と日本語での情報発信を想定していたが、作業の進展に沿って検討した結果、中国語、英語と日本語の3言語での公開が可能であり、目指すべき目標であると判明した。3言語の文字情報の整理ならびに翻訳作業を完了し、次年度にウェブ・システムのデザインを検討し、システムを構築して公開する準備が整った。
  3. 成果の公表実績(出版、公開シンポジウム、学会分科会、電子媒体など)
    今年度からのプロジェクトであり、まだ公開した成果はない。来年度にウェブ公開をするための準備を整えた。