国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

スタッフの紹介

島村一平
島村一平 SHIMAMURA Ippei
****・機関研究員
専門分野
  • 文化人類学、モンゴル研究
各個研究
個人ホームページ

[写真]アガ・ブリヤートのシャーマン

経歴

学歴
  • 早稲田大学 法学部卒(1993)
  • モンゴル国立大学大学院 社会学研究科 民族学専攻 修士課程修了(1998)
  • 総合研究大学院大学 文化科学研究科 地域文化学専攻 博士後期課程 単位取得退学(2004)
職歴
  • (株)クリエイティブネクサス テレビ番組制作部(1993.4~1995.2)
  • 国立民族学博物館 講師(研究機関研究員)(2004.4~2005.9)
  • 奈良大学 非常勤講師(比較民族学Ⅰ,Ⅱ)(2005.4~現在)
  • 京都外国語大学 非常勤講師(比較文化論)(2005.9~現在)
  • 滋賀県立大学 人間文化学部 専任講師(2005.10~)

学位

民族学修士(モンゴル国立大学 1998)

専門分野

文化人類学、モンゴル研究

研究のキーワード

モンゴル、ブリヤート、ポスト社会主義、シャーマニズム、エスニック・アイデンティティ、ディアスポラ

研究課題

ポスト社会主義モンゴルにおけるシャーマニズムの活性化 ― アガ・ブリヤートのアイデンティティの危機と再構築

モンゴル系の集団アガ・ブリヤートは、歴史的な経緯から、3つの近代国民国家(モンゴル国・ロシア連邦・中華人民共和国)の国境に分断されて居住している。

アアガ・ブリヤート人は、現在のモンゴル国の北、シベリア南部居住してきたモンゴル系集団であるブリヤート・モンゴル人の一派である。20世紀初頭、ロシア革命の内戦による混乱をさけて、彼らの一部は、故地であるアガ草原(現在のロシア連邦チタ州アガ・ブリヤート自治管区)から、草原の国境を越えて集団で現在のモンゴル国領内や中国内蒙古領内へ亡命した。

現在、モンゴル国東部に住む彼らの間で、ひとつの異変が起きている。それは、シャーマンの数が急激に増加していることである。かつてモンゴル国では共産主義イデオロギーの下、70年にわたって「宗教」は否定されてきた。ところが1990年の社会主義崩壊以降、湧き出るかのようにシャーマンが出現しているのである。

調査してみると、アガ・ブリヤートの人口約1万4千人のうちおよそ1%近くがシャーマンになっていることがわかった。モンゴル国においてシャーマニズムを信仰する集団は、フブスグル県のダルハド人、トゥヴァ系のツァータンといった辺境の2,3の少数集団に限られるが、彼らにはこのように急激な「シャーマン増殖現象」は見られない。

アガ・ブリヤートのシャーマン増殖現象は、国境を越えた運動ともいえる様相を呈している。ロシアに住むアガ・ブリヤート人は、モンゴル国のアガ・ブリヤートのシャーマンのもとに修行にやってきて新たにシャーマンとなっている。逆にモンゴル国のアガ・ブリヤートのシャーマンたちは、ロシアのブリヤート人たちに招かれて、シャーマンのイニシエーションの指導を行うと同時に父祖の地ロシアのチタ州のアガ草原のシャーマニズムの聖地を訪ねている。

実は、帝政ロシアによる19世紀の記録では、離散以前のアガ・ブリヤートはブリヤート内の諸集団の中で、もっとも仏教化が強くシャーマニストの数が少ない集団であった。つまりアガ・ブリヤートにおけるシャーマンの増殖は、単純にポスト社会主義時代における「伝統の復興」と捉えることはできない現象だといえる。私は、彼らのシャーマニズムを「伝統の復興」ではなく「活性化」として捉え、集団としてのアイデンティティの危機とその再構築というパースペクティブから研究をしている。

所属学会

日本文化人類学会、国際モンゴル学会、日本モンゴル学会

研究業績

論文
2005
「患者」が「治療者」になるということ ―モンゴル・ブリヤート人のシャーマニズムの事例から 」『現代のエスプリ』 8月号 pp.52-62、 至文堂。
2005
(印刷中)「阿古-布利亜特人的尋根活動:薩満教復興的新●(門の中に単の字)釈」『世界民族』2005年1号、翻訳:包路芳・時春麗・薩茹拉、北京:中国社会科学院。
2005
「モンゴル・ブリヤート人の悲劇の記憶」『ユーラシア草原からのメッセージ』松原正毅・小長谷有紀・楊海英(編)、pp.167-188、平凡社。
2004
The Movement for Reconstructing Identity through Shamanism : A case study of the Aga-Buryats in Post-socialist Mongolia, Inner Asia vol.6(2),Cambridge : The White Horse Press,197-214.
2002
The Roots-Seeking Movement Among the Aga-Buryats: New lights on their shamanism, History of Suffering, and Diaspora. In Mongolian Culture Studies IV - A People Divided : Buriyat Mongols in Russia, Mongolia and China. Konagaya Yuki(ed.),Cologne:International Society for The Study of The Culture and Economy of The Ordos Mongols (OMS E.V.) ,88-110.
2000
Darkhad shamanism:The cult of vengeful spirit of shamans (Mongolian), BULLETIN The IAMS News on Mongol Studies No1(25), No2(26), Ulaanbaatar : International Association of Mongol Studies, 43-50.
2000
「アガ・ブリヤートのシャマン儀礼における家畜の供犠の位相」『北アジアにおける人と動物のあいだ』小長谷有紀(編)pp.207-239、東方書店。
2000
「平原に聴く、シャーマニズムの息吹」『季刊 民族学』93:90-103、千里文化財団。
1998
『ダルハド族のオンゴド信仰、あるいは神々のたそがれ』総合研究大学院大学に提出の修士論文代用(日本語)、ウランバートル。
1998
Yapony khaanchlal ba Mongolyn khaanchlalyg boo morgoltei kholbon sudalsan n'、国立モンゴル大学大学院社会科学研究科 修士論文 (モンゴル語:邦訳『王権とシャーマニズム-日本とモンゴルの比較から』)
雑誌
2005
「反骨のモンゴル人研究者:オラディン・ボラグさん」『民博通信』108号、国立民族学博物館。
2004
More than One "Homeland" : Diasporic Imaginations of the Aga-Buryats, Minpaku Anthropology Newsletter 19, Osaka: National Museum of Ethnology.
2004
「路上の歓楽街―モンゴル国・ウランバートル市」『月刊みんぱく』8月号、国立民族学博物館。
2004
「舌あらば、足あり―モンゴル」『月刊みんぱく』7月号p15、国立民族学博物館。
2003
「日本からみたモンゴル社会 街をかける遊牧民たち」『科学』73(5)、599-600、岩波書店。
2001
「活動顛末記―開催国日本へのひとこと」『MoPI通信』6(7.21) モンゴル・パートナーシップ研究所。
2000
「@モンゴルで出会うと―その1」『モンゴル通信』5:11-12、びわ湖・フブスグル湖交流協会。
1998
「逆グルメ天国・モンゴル」『モンゴル通信』2:1-2、びわ湖・フブスグル湖交流協会。
事典
2004
Yellow Shaman. In Shamanism : An Encyclopedia of World Beliefs, Practices, and Culture. M.N.Walter and E.J.Friedman (eds.), Santa Barbara: ABC-CLIO, pp.649-652.
2004
「Humphrey,Caroline and Onon,Urgunge 'Shamans and Elders-Experience, Knowledge, and Power among the Daur Mongols'」『文化人類学文献辞典』小松和彦・田中雅一・谷泰・原毅彦・渡辺公三(編)、弘文堂。
翻訳
2005
J.オユンゲレル著「モンゴル国の新社会経済体制下における人口流動の地理学的問題」『モンゴル国における土地資源と遊牧民』小長谷有紀・辛嶋博善・印東道子編、pp116-125、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所。
映像制作
1998
「モンゴル人へのインタビュー」(企画・撮影)、『大モンゴル展』、国立民族学博物館。
1996
「僧院の暮らし」(企画・撮影)、モンゴル国ガンダン寺付属仏教大学芸術学部。
1994
『BSスペシャル・大草原に音は湧き立つ-坂田明とミジンコ空挺楽団』(取材ディレクター)、NHK-クリエティティブネクサス。
1994
「宇宙から見た地球の環境変化」(ディレクター)、『茨城県立自然博物館展示映像ソフト』、日本ビクター・クリエイティブネクサス。
1993
『多摩六都子供博物館展示映像ソフト』(アシスタント・ディレクター)、日本ビクター・クリエイティブネクサス。
学会発表等
2005
『モンゴル草原の生活世界』 放送大学京都学習センター、面接授業 (5.28,29)
2005
「朝青龍はなぜ強いのか:モンゴル遊牧文化から日本社会を考える」 兵庫県阪神シニアカレッジ(5.20)
2005
The Movement for Reconstructing Identity through Shamanism : A case study of the Aga-Buryats in Post-socialist Mongolia, 第19回国際宗教学宗教史会議世界大会:東京(3.30)
2004
「ポピュラー音楽から見た現代モンゴル」『アジア中東理解講座・モンゴルを知ろう』主催:国際交流基金(12.14)。
2004
「シャーマニズムと癒し」主催:I・Iクラブ、大阪生涯学習センター(11.15)。
2004
「周縁サブカルチャーのパラドクス―ポスト社会主義モンゴルにおけるエストラード音楽の現状から」日本国際文化学会(7.3)
2003
「シャーマンの神話分析から」国立民族学博物館 共同研究会『モンゴル高原における環境保全型経済の構築』代表者:小長谷有紀(6.16)。
1999
「モンゴル国フブスグル湖周辺の少数民族集団について」滋賀県 びわ湖・フブスグル湖交流協会 設立総会における講演(5.8)
館外活動(大学教育、社会活動等)
2005
日本語書籍モンゴル語翻訳企画、(印刷中)『遊牧がモンゴル経済を変える日』(小長谷有紀編著)。
2002
技術移転協力「ゴビ地域における遊牧民支援・浅井戸掘削プロジェクト」、モンゴル国のNGO「21世紀遊牧社会センター」との共同事業(8.20~9.30)。
2002
モンゴル人学生の卒論指導協力、モンゴル国立文化芸術大学(2002.1-2002.5)。
2000
ボランティア調査「日本語図書送付活動における現地の利用状況の評価」、(財)大阪国際交流センター(2000.4)。
2001
ボランティア通訳(モンゴル語)「東アジア大会(大阪市主催)」(2001.5)。
1998
通訳(モンゴル語)・コーディネート「モンゴル・フブスグル湖エコツアー」主催:びわ科学懇談会(1998.5~1998.8)。
1999
~モンゴル・パートナーシップ研究所、会員。
1999
~びわ湖・フブスグル湖交流協会、企画委員。

関連ページ

『民博通信』第108号【ひと】「オラディン・エルデン・ボラグさん」