村瀬正紘(MURASE Masahiro)
在学生の研究内容
村瀬正紘(MURASE Masahiro)

所属
人類文化研究コース
指導教員
主任指導教員:松本雄一/副指導教員:齋藤晃
研究題目
インカ帝国における地方社会の様相——ワヌコ盆地における入植民ミトマクーナの実態から
研究キーワード
インカ帝国、ミトマクーナ、入植民、地方社会、ワヌコ
研究の概要
本研究は、15世紀後半から16世紀前半にかけて南米アンデス地方を中心として栄えたインカ帝国における地方社会の様相について、ミトマクーナと呼ばれる入植民の実態を足がかりとして考察を行うものである。
インカ帝国は現在のエクアドルからチリ、アルゼンチンに至るまでの広大な領域を支配した。この領域の内部にはきわめて多様な民族が存在し、インカ帝国はその支配のスタイルを各地方の地理的、政治的な条件に応じて変化させていた。インカがその帝国的システムの中に各地方を取り込んでいくプロセスの中で、さまざまな政策が実行されたが、その中でも重要なものの一つが、各地の統治のために被支配民を移住させる制度である。
アンデス地域では高度ごとに自然環境と生育する作物が異なるため、それぞれの高度帯における農耕及び牧畜といった生業を垂直的にコントロールする必要があり、伝統的に共同体の中核地から各高度帯に人々を派遣し、その派遣された人々はそこで一時的あるいは恒常的に生業を行っていた。この植民とも言える営為を国家的戦略として用いたのがインカ帝国である。国家的な植民の制度において強制的に移住をさせられた人々は「ミトマクーナ」と呼ばれる。ミトマクーナとはケチュア語で「よそ者たち」という意味を表すことばである。
本研究は、ミトマクーナが派遣された地域の一つである、現在のペルー中央部に位置するワヌコ盆地を調査対象地域とする。ワヌコ盆地の先住民社会を扱った文書記録の分析と、遺跡の発掘調査から得られる考古学的データの分析を通じて、ミトマクーナの実態を明らかにすることによって、インカ帝国の支配下に置かれたワヌコ地方の社会の様相の解明を目指す。