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特別研究

特別研究

特別研究とは、国内外の学術研究の動向や社会的な要請を踏まえ、学際性を高めることにより、異分野融合や新たな学問分野の創出に向けて、国立民族学博物館が独自に組織し実施する挑戦的な研究です。平成28年度からの第3期中期目標期間の6年間においては、「現代文明と人類の未来―環境・文化・人間」を統一テーマに掲げ、現代文明が直面する喫緊の諸課題に対して解決志向型のアプローチを行いました。
令和4年度からはじまる第4期中期目標期間の6年間においては、第3期中期目標期間から継続して実施するプロジェクトに加え、「ポスト国民国家時代における民族」という共通タイトルのもとに、5つの研究プロジェクトを構成して実施します。ポスト国民国家時代における「民族」の再編成の過程を文化、政治、宗教、社会、環境、歴史等の全体論的な視点からとらえ、人類の共生社会の実現に寄与する新しいアプローチを提示することを目指します。

第4期中期目標期間 テーマ:ポスト国民国家時代における民族

ポストナショナリズム時代の博物館の挑戦――少数/先住民族の文化をいかに展示するか(2022.4-2025.3)
  • テーマ区分:民族と博物館
  • 代表者:鈴木紀
個人、帰属集団、国家の意思をめぐる相克の解明と多文化国家の実現(2023.4-2026.3)
  • テーマ区分:民族と国家
  • 代表者:野林厚志
ルーツをめぐる政治学と共生の技法――ポスト国民国家時代の民族と「歴史」(2024.4-2027.3)
  • テーマ区分:民族と歴史
  • 代表者:松尾瑞穂
民族と宗教――もつれ合う排他性と包摂性(2025.4-2028.3)
  • テーマ区分:民族と宗教
  • 代表者:奈良雅史
政治的暴力・コンフリクトと民族(2026.4-2029.3)
  • テーマ区分:民族と暴力
  • 代表者:丹羽典生

第3期中期目標期間 テーマ:現代文明と人類の未来―環境・文化・人間

不確実性の時代における家族の潜勢力――モビリティ、テクノロジー、身体 (2021.4-2024.3)
  • テーマ区分:人間
  • 代表者:森明子、中川理

コロナ禍に対するローカルな対処としての「文化の免疫系」に関する比較研究(2020.12-2024.3)
  • 緊急枠:現代文明と感染症
  • 代表者:島村一平
パフォーミング・アーツと積極的共生(2018.4-2024.3)
  • テーマ区分:人間
  • 代表者:寺田吉孝、福岡正太
終了したプロジェクト(第3期中期目標期間)

第4期中期目標期間
テーマ:ポスト国民国家時代における民族

「ポスト国民国家時代における民族」について

グローバル化の進行や大規模な人の移動とともに、人種差別、移民排斥、マイノリティ弾圧、民族紛争、ジェノサイドなど、民族間の対立や分断が世界各地で激化している。日本も例外ではなく、多文化共生施策に推進してはいるものの、外国人労働者問題、民族に基づくヘイトスピーチ、民族的マイノリティ差別などの問題は依然として解決しておらず、むしろ深刻化しているようにみえる。

これは、国民国家が地位や影響力を低下させ、民族間関係を管理する体制を以前のように維持できなくなり、もともと異なる歴史的時期や異なる社会で異なる意味を担ってきた民族というカテゴリーが、その意味や境界、使用法をいっそう流動化させたことと関係していると考えられる。また、家族やコミュニティ、国家、ジェンダー、宗教、階級など、民族と重層的に絡み合って作用し世界を秩序づけていたカテゴリーが根本から問い直され、民族カテゴリーとの境界があいまいになっていることとも関連しているにちがいない。ある社会で自然なものとされていた民族の区分が異議を唱えられ、変容している過程を観察することで、我々はその社会の内部で起きている問題について多くのことを理解できるだろう。

本研究の目的は、こうしたポスト国民国家時代における民族の再編成の過程を、文化、政治、経済、社会、環境、歴史等の全体論的な視点からとらえ、人類の共生社会の実現に寄与する新しいアプローチを提示することにある。特定地域における民族集団間の境界における相互作用や、変化する国際情勢のもとでの国家による民族の再分類、地域を越えた民族的アイデンティティの生産過程などを記述するとともに、そうした現場で歴史的に出現してくる新たな民族というカテゴリーの機能や、そうしたカテゴリーをその効果として生産する経済、社会、宗教、環境領域でのさまざまな言説や実践、制度の絡まり合いについて世界的規模で比較することを試みる。とりわけ先住民、国際的な労働移民、民族紛争、異文化表象、エスノナショナリズムなどにかかわる問題に焦点を当て、人類の共生社会の実現に向けて、問題解決を志向する文化人類学的研究の新しいパラダイムを提唱することを目標に掲げる。

第3期中期目標期間
テーマ:現代文明と人類の未来―環境・文化・人間

「現代文明と人類の未来―環境・文化・人間」について

近現代のヨーロッパに発する科学・技術、政治・経済制度、社会組織、思想などからなる西欧文明は世界の多くの国と地域に影響を与えてきた。また、科学・技術の発展は、人類の生活と社会を豊かにすると信じられてきた。しかしながら、人口増加、環境破壊、戦争、資源枯渇、水不足、大気汚染など、大きな負の代償を人類社会にもたらしているともいえる。とりわけ環境問題と人口増加は、人類の生存上、解決を要する大きな課題として、前者は生活空間、食料資源、生物の多様性から戦争、公害、地球温暖化、災害など、人間生活のあらゆる面に影響を及ぼしている。後者は、2060年には100億人を超え、2100年には地球の人口支持力(環境収容力)120億人に近づく一方で、先進国の中には少子高齢化が進み、家族や人間集団の維持・存続に多くの問題をもたらしている。

文明に対応してきた現地社会の「知」から現代文明を問い直すために、特別研究を現代の人類社会が直面する諸課題の分析と解決を志向する研究として位置づける。環境や人口をめぐる地球規模の変動に直接的・間接的に起因する対立軸となる文化現象を設定し、グローバル空間・地域空間・社会空間が構成する多層的生活空間における現代的問題系としてアプローチすることで、旧来の(伝統的な)価値からいかに多元的価値の共存を保障する社会を創成することができるかを解明し、人類社会にとって選択可能な問題解決を志向する未来ビジョンを提出することをめざす。

終了した特別研究・機関研究

※機関研究プロジェクトは、2015年度をもって終了いたしました。