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不確実性の時代における家族の潜勢力――モビリティ、テクノロジー、身体 (2021.4-2024.3)

テーマ区分:人間 6 人口問題と家族・社会

代表者:森明子

研究期間:2021.4-2024.3

プロジェクトの目的・内容

本プロジェクトは、現代世界において、社会の基本的な集団とされる家族が決して安定的ではなく、調整/再調整がたえず行われていることに注目する。そのような調整がどのような意味をもつのか、個別の状況のなかで検討し、21世紀の世界にあらわれつつある社会像を明らかにしようとする。

家族のかたちは多様であるだけでなく変動的でもある。家族はときどきの状況に応じて、居処を変え、構成を変え、また機能を他者に委ねたりもする。人類学を含むさまざまな分野の研究者が家族をいかに表象するか、長く議論を重ねてきたが、家族を普遍的に定義することばがあるわけではない。現実の家族は、いつでも異質な要素を含みうるし、機能をアウトソーシングすることもあるのだ。それでも人間は家族ということばを手放そうとしない。

本プロジェクトは、家族はどう定義されるかということよりも、家族は何をしているのか(ドゥーイング)ということを、その流動的な様相とあわせて明らかにしていく。流動的な家族は、さまざまな制度やテクノロジー、インフラを動員し、それに支えられることで作動している。そこでは、人間の身体をめぐって繊細で複雑な調整が行われ、なんらかの不都合がおこれば、補填や代理はこの連なり(セッティング)において再調整される。気をつけなければいけないのは、そのような再調整が、現代世界においてますます重要性を増していることである。

現代世界は不確実性の時代である。20世紀後半以降、産業構造の変化とグローバル化の進展は、経済や社会のしくみを、全球的に根底から揺り動かし、冷戦後の世界秩序はいまだに見定めることができない。災害、紛争、難民、感染症などが、ますます広範で甚大な影響を与えるようになり、他者も人間ならざるものも、ともに投げ込まれた予測不能の非日常的空間が日常化しつつある。そこで本プロジェクトでは、近親者の集まりとしての家族の枠組みよりも、人間以外のものがともに家族のドゥーイングに関わっている局面に光をあてる。そして、近年の人類学において、ケア、医療制度、生殖医療、建造環境、トランスナショナリズムなど、別々のテーブルで論じられているイッシューを、流動する家族という視点からとらえ直し、現代世界の社会的なものを根底から問う議論を展開する。

期待される成果

現代世界を不確実なものにしている要因のひとつは、これまで人々の生の基盤をなすと考えられてきた国家―市場―家族の連鎖が、世界のいたるところで機能不全を起こしていることである。たとえば日本の場合、家族に多くを依存しながら諸制度が設計されているが、そこで前提とされている家族と現実の家族は乖離していて、それが少子高齢化をより深刻にしている。こうした状況に対して家族の実情にあった施策が求められるのはもちろんだが、諸制度がさまざまな要素と複雑にからみあう状況で、有効な施策を見つけることは困難である。本プロジェクトは、家族と社会を二分する考え方をいったん宙づりにし、家族の境界線上でモノや制度や身体が、複雑にからみあいながら調整が行われていること、そこから新たなつながりがつくられつつあることに注目し、流動する家族の潜勢力を示す。グローバル化する世界は、脆さとともに予想外の出会いに満ちていて、さまざまな生の場であらわれている調整もさまざまである。国際的な共同研究を通して、全球的な視野のもとに社会的なものの編成を根底的に問い直し、あらたな実在の可能性に寄与することが期待される。

みんぱく公開講演会

2021年11月12日(金)
みんぱく公開講演会「流動化する家族のかたち――少子高齢社会を文化人類学から考える」

プレシンポジウム

2022年3月5日(土)
プレシンポジウム 「不確実な時代の家族とケア」

国際シンポジウム

2022年度に開催予定