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現代のイングランドにおける霊媒師の実践とその変貌に関する研究(2022転入-2024)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|基盤研究(C)

河西瑛里子

★2022年4月1日転入

目的・内容

研究の概要

現代のイングランドにおける呪術として、霊や神と交信する霊媒師を取り上げ、交霊術が現代でも機能している理由を明らかにする。既存の呪術研究は、欧米以外の地域での呪術が対象となってきた。それに対し、イングランドの交霊術を対象とすることで、地域的な偏りを解消し、これまでの呪術研究の成果が欧米地域にも当てはまるのかを検討することができる。そこで、①交霊術がいかなる変貌を遂げながら展開されているのか、②交霊術はいかなる行為とプロセスによりリアルなものだと認識されていくのか、③交霊術のいかなる側面が、現代のイングランドの人々を惹きつけているのか、という3点を明らかにする。

研究の目的

①社会の変化に対応しながら、イングランドにおける交霊術は、これまでと現在、どのように行われ、人々に受けとめられてきたのか、文献やメディアを中心にその変貌を明らかにする。それにより、西洋近代社会における、呪術の位置づけの変容を提示する。
②現代の交霊術の実践の実態を、霊媒師とクライアントが実践中に得ている身体的な感覚の変容に焦点を当て、把握する。それにより、超自然的存在との交信という状況が、それぞれの霊媒師やクライアントに、どのようにしてリアリティをもったものとして信じられていくのかを検討する。
③交霊術が実用的に用いられている占いやヒーリング、死者などからのメッセージの伝達に携わっている霊媒師に焦点を当てる。それにより、交霊術がなぜ現代のイングランド人にアピールしているのかを考察できる。

活動内容

2023年度実施計画

死者の霊を降ろす交霊術は、欧米では19世紀半ばから広がり、イングランドでは心霊主義教会として組織化され、現在でも各地に教会が存在している。心霊主義教会から独立して活動する霊媒師の中には「霊媒師」と名乗らない者もいるが、本研究では彼らも「霊媒師」に含む。そして便宜上、前者を心霊主義教会の霊媒師、後者を独立系霊媒師と名付ける。前者は知人のつてがあるデボン州エクスマスと心霊主義教会の多いロンドン、後者は知人のつてがあり、独立系霊媒師が参加する催し物が多いサマーセット州グラストンベリーを中心に調査する。社会における位置づけを探るため、占い、ヒーリング、死者などからのメッセージの伝達といった、自らの能力を社会の中で生かしている霊媒師に焦点を当てる。
2022年度 4月~7月[呪術の先行研究の精査。インターネットから交霊術の概要を把握(目的①)。オンラインでの交霊術のセッションに参加(目的②)]8月[渡英。大英図書館で交霊術の文献調査(目的①)。心霊主義教会の霊媒師の予備調査(目的②、ロンドンとエクスマス)]9月[調査結果の整理と分析]10月~12月[占いとヒーリングの文献の精査(目的①)]1月~2月前半[霊媒師の著書の精査(目的②③)]2月後半~3月[渡英。心霊主義教会の霊媒師の本調査、独立系霊媒師の予備調査(目的②③、ロンドン、エクスマス、グラストンベリー)]
2023年度 4月[調査結果の整理と分析]5月~7月前半[最新の呪術研究の精査。「宗教と社会」学会、日本文化人類学会で研究成果を発表]7月後半~8月[渡英。心霊主義教会の霊媒師の補足調査と独立系霊媒師の本調査(目的②③、ロンドン、エクスマス、グラストンベリー)。英国宗教学会で発表]9月[日本宗教学会で研究成果を発表。調査結果の整理と分析]10~2月[『宗教研究』や『文化人類学』に論文を投稿]3月[渡英。独立系霊媒師の補足調査(目的②③、ロンドン、グラストンベリー)。大英図書館で交霊術の文献補足調査(目的①)]
2024年度 4月[最新の呪術研究の精査。調査結果の整理と分析]5月~8月[『宗教と社会』やJournal of Contemporary Religionなどに論文を投稿]9月~3月[民族誌の執筆。近接領域の研究者と現代の呪術に関するセミナーを開催(3月、大阪、国際ファッション専門職大学)]
現地調査が難しくなった場合は、オンラインでのセッションや交霊会のライブ配信、ZOOMでの占い、オンラインでの癒しのワークショップなど、インターネットを活用して、現地調査に代える。また、これまでのつてを辿ってオンラインでインタビューを実施する。なお、成果報告として研究成果を出版し、今後の研究推進のため、各所に献本することを予定している。