遺伝子化時代の社会集団のカテゴリー化と差異化―インドにおける血と遺伝子を中心に(2019-2022)
科学研究費助成事業による研究プロジェクト|国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
松尾瑞穂
目的・内容
研究の概要
本研究は、インドにおける集団カテゴリーの構築と同定に用いられる血と遺伝子の論理について検討することを通して、集団の差異の「自然化」や「実体化」 にサブスタンスが作用するメカニズムを解明することを目的とする。サブスタンスとは、親子や家族、集団の間で共有し、継承されるとみなされる身体構成物質である。本研究が対象とするのは、インドにおける人種や民族、カーストといった集団の差異化において、血と遺伝子をめぐる言説が、科学的知識として歴史的に生成され、流通し、機能している様態である。歴史、政治、ナショナリズムなどの絡み合いを解きほぐし、社会集団の範疇化や他者との差異化について検討を行う。
研究の目的
本研究は、インドにおける集団カテゴリーの構築と同定に用いられる血/血液と遺伝子の論理について検討することを通して、集団の差異の「自然化」や「実体化」 にサブスタンスが作用するメカニズムを解明することを目的とする。
インドをはじめとする南アジア社会における人種主義は、植民地支配や、啓蒙主義的人種主義とロマン主義的人種主義の交錯、アーリア人概念の変遷、民族とカーストなどが複雑に絡み合って成立している。また、近年では、こうした集団の差異を歴史的な解釈のみならず、より「科学的」だとみなされる遺伝子や生物学的差異によって同定しようとする動きも広がっている。そのようななか、血や遺伝子というサブスタンスは、どのような文脈で、集団の差異化の指標として機能するのだろうか。本研究は、遺伝子化が進展するインド社会において、多様な集団の共存のありかたを探索するひとつの試みである。
活動内容
2022年度実施計画
当初の計画では、2020年9月からイギリス・エジンバラ大学に客員教員として滞在し、本課題の研究を実施する予定であった。しかし、長期にわたる延期の間に、共同研究者の他国への異動や研究環境の変化があり、代替策としてオランダ・ライデン大学での研究を検討する。また、インドとスリランカにおける遺伝子に関する認識調査および、mixed raceであるアングロ・インディアンとバーガーという民族集団に関する調査に着手するため、現地調査に限らずオンライン調査なども併用する予定である。今年度は海外渡航が可能となる可能性が高いため、夏以降にインド・サヴィトリバーイー・フレー・プネー大学に客員研究員として滞在を予定している。各国の大使館等の情報を適時入手し、安全に留意しながら調査研究活動を実施する。また、共同研究者とはオンライン会議等を活用し、議論を継続するとともに、文献資料の読解や先行研究のまとめなど、国内でできることを優先して課題の遂行に努める。
2021年度活動報告(研究実績の概要)
本研究は、インドにおける集団カテゴリーの構築と同定に用いられる血と遺伝子の論理について検討することを通して、集団の差異の「自然化」や「実体化」にサブスタンスが作用するメカニズムを解明することを目的とする。サブスタンスとは、親子や家族、集団の間で共有し、継承されるとみなされる身体構成物質である。本研究が対象とするのは、インドにおける人種や民族、カーストといった集団の差異化において、 血と遺伝子をめぐる言説が、科学的知識として歴史的に生成され、流通し、機能している様態である。歴史、政治、ナショナリズムなどの絡み合いを解きほぐし、社会集団の範疇化や他者との差異化について検討を行うものである。
今年度はインド・サヴィトリバーイー・フレー・プネー大学およびイギリス・エジンバラ大学に滞在し、19世紀インドの人種概念の構築に関する文献資料収集と現地調査、共同研究を開始する予定であったが、新型コロナウィルス感染症の影響により、昨年度同様、すべての渡航計画が中断されてしまった。そのため、すでに着手している南アジアの人種概念とその歴史的展開、および近年の遺伝子や配偶子に関する人類学的論文や民族誌などの文献資料の収集と読解、資料リストの作成、調査訪問先の選定とオンラインでの打ち合わせを継続した。また、学術論文および共著を刊行し、プロジェクトの中間報告として成果刊行に努めた。
2021年度活動報告(現在までの進捗状況)
今年度も新型コロナウィルス感染症のため、予定していた海外渡航と国内外の出張が中止となったため、今年度に計画されていた調査およびエジンバラ、インドでの共同研究は残念ながら延期された。当初の予定では昨年度の9月からイギリスに滞在予定であったが延期となり、またインドとスリランカの状況も予断を許さないため、インドやスリランカ調査を前倒しにするという代替案への変更も事実上不可能であった。共同研究者とのオンラインでのやり取りや、オンラインの国際学会やセミナー、国内学会への参加を通して、可能な限りで本課題の進展に尽力しているが、現地調査が延期されていることによる遅れが生じている。
2020年度活動報告(研究実績の概要)
本研究は、インドにおける集団カテゴリーの構築と同定に用いられる血と遺伝子の論理について検討することを通して、集団の差異の「自然化 」や「実体化」にサブスタンスが作用するメカニズムを解明することを目的とする。サブスタンスとは、親子や家族、集団の間で共有し、継承されるとみなされる身体構成物質である。本研究が対象とするのは、インドにおける人種や民族、カーストといった集団の差異化において、 血と遺伝子をめぐる言説が、科学的知識として歴史的に生成され、流通し、機能している様態である。歴史、政治、ナショナリズムなどの絡み合いを解きほぐし、社会集団の範疇化や他者との差異化について検討を行うものである。
今年度からインド・サヴィトリバーイー・プレー・プネー大学およびイギリス・エジンバラ大学に滞在し、現地調査と共同研究を開始する予定であったが、新型コロナウィルス感染症の影響により、すべての渡航計画が中断されてしまった。そのため、昨年度より着手している南アジアの人種および近年の遺伝子や配偶子に関する人類学的論文や民族誌などの文献資料の収集と読解、資料リストの作成、調査訪問先の選定などを継続するとともに、国際学会や国際的なジャーナルへの投稿など、成果報告に努めた。
また、来年度に実施予定であるイギリス・エジンバラ大学での共同研究と、インドおよびスリランカにおける短期調査の計画と必要機関との交渉などを継続した。
2020年度活動報告(現在までの進捗状況)
新型コロナウィルス感染症のため、予定していた海外渡航、国内外出張が中止となったため、今年度に計画されていた調査およびエジンバラ、インドでの共同研究は残念ながら延期された。当初の予定では今年度の9月1日からイギリスに滞在予定であったが延期となり、またインドとスリランカの状況も予断を許さないため、インドやスリランカ調査を前倒しにするという代替案への変更も事実上不可能であった。共同研究者とのオンラインでのやり取りや、オンラインの国際学会、国内学会での研究発表や参加を通して、可能な限りで研究の進展に尽力しているが、現地調査が不可能な場合のデータ収集の方法を再考する必要がある。
2019年度活動報告(研究実績の概要)
本研究は、インドにおける集団カテゴリーの構築と同定に用いられる血と遺伝子の論理について検討することを通して、集団の差異の「自然化 」や「実体化」にサブスタンスが作用するメカニズムを解明することを目的とする。サブスタンスとは、親子や家族、集団の間で共有し、継承されるとみなされる身体構成物質である。本研究が対象とするのは、インドにおける人種や民族、カーストといった集団の差異化において、 血と遺伝子をめぐる言説が、科学的知識として歴史的に生成され、流通し、機能している様態である。歴史、政治、ナショナリズムなどの絡み合いを解きほぐし、社会集団の範疇化や他者との差異化について検討を行うものである。
ただし、本年度は、まだ課題の交付が行われておらず、実質的な研究活動は来年度から開始する予定である。今年度は、南アジアの人種および近年の遺伝子や配偶子に関する人類学的民族誌などの文献資料の収集に着手し、文献リストの作成、調査訪問先の選定、資料の読解などを行った。また、来年度に実施予定であるイギリス・エジンバラ大学での共同研究と、インドおよびスリランカにおける短期調査の計画と必要機関との交渉などの準備を行った。
2019年度活動報告(現在までの進捗状況)
本年度は、来年度に実施予定であるイギリス・エジンバラ大学での共同研究とインドおよびスリランカにおける短期調査の計画と必要機関との交渉などの準備を行った。訪問先大学から客員教員として滞在することの承認と招聘状の送付が行われたが、2月以降、新型コロナウィルス感染症の蔓延により、イギリスが出入国の禁止措置を取り、大学として外国人客員教員の受け入れを延期するという事態が発生し、来年度の訪問時期が不確定となっているため、ビザの申請手続き等が中断されている。