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未発表原稿分析によるJ.-C.マルドリュスの執筆過程の解明(2019-2023)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|基盤研究(C)

岡本尚子

目的・内容

現在、『千一夜物語』仏語訳者J.-C.マルドリュスの遺族が所有していた未発表原稿を含む遺品の調査が数名の研究者により進められている。本研究ではその中から彼が晩年に取り組んでいた『福音書』の翻訳とされる未発表原稿Cinq conteurs divins dans la lumiere(光に満ちた5人の神の言葉の語り手)を校訂し、制作の過程で使用されたとみられる聖書の引用やメモ等の資料と共に分析を行う。本研究ではこうした調査により、ほとんど情報が残っていないマルドリュスの晩年の活動、及び下書きなどの資料がほとんど残されていないことから不明な点が多いマルドリュスの執筆過程を明らかにし、彼の活動を再評価することが目的である。

活動内容

2023年度実施計画

2022年度事業継続中

2022年度活動報告(研究実績の概要)

令和4年度は以下の調査を行った。
1.J.-C.マルドリュスによるCinq conteurs divins dans la lumiere(光に満ちた5人の神の言葉の語り手)手稿に関して、以下の研究調査を行った。①マルドリュスによる手稿の解読及び転写・データ化、②『マルドリュス遺贈コレクション』内の関連資料調査、③本手稿執筆の背景に関する調査。以上の調査については令和5年度も継続予定である。尚、本研究課題の主要な調査対象となっている手稿の現物について、フランスで確認作業を行う予定であったが、新型コロナウイルス流行の影響で渡仏が難しい状況が続いていたため、国内で可能な作業を集中して行った。令和5年度は現地調査を行う予定である。
2.マルドリュスの関係者から新たな情報を得ることができ、詳しい調査を開始するための準備作業を行った。特に、これまで明らかになっていない晩年のマルドリュスの活動についての情報を追加できる可能性が高くなっている。
3.マルドリュスの活動による他分野への影響についての研究の一環として、『千一夜物語』を含むオリエンタリスムと西洋音楽の相互作用に関する調査を行い、その成果の発表として音楽の実演を含む講演会を行った。
4.『千一夜物語』関連の研究調査として、ペティス・ド・ラ・クロワによる『シンドバード航海記』手稿について、バイエルン州立図書館とクリーヴランド公立図書館それぞれが所蔵している手稿の比較検討を行った。また、日本語訳の作成を行い、出版に向けた準備作業を行った。

2022年度活動報告(現在までの進捗状況)

令和4度までの新型コロナウイルスの流行にともない、現地調査が難しい状況が続いたため。令和5年度は現地調査を再開できる見込みである。

2021年度活動報告(研究実績の概要)

1.J.-C.マルドリュスによるCinq conteurs divins dansla lumiere(光に満ちた5人の神の言葉の語り手)手稿に関する研究調査①マルドリュスによる手稿の解読及び転写②『マルドリュス遺贈コレクション』内の関連資料調査、および執筆の背景に関する調査:1.については次年度も継続予定。
2.『マルドリュス遺贈コレクション』のカタログ(Catalogue du fonds Joseph-Charles Mardrus,traducteur des Mille Nuits et Une Nuit)の執筆・編集作業:これまで行った『マルドリュス遺贈コレクション』調査及びマルドリュス自身に関する新知見を含む論文を加えた遺贈コレクションの目録を共同執筆し、フランスの出版社(Editions Abencerage,Aziz Ghozzi)より出版した。
3.『千一夜物語』関連の研究調査:ペティス・ド・ラ・クロワによる『シンドバード航海記』手稿の校訂・編集作業:バイエルン州立図書館蔵の手稿を、アラビア語版を含むクリーブランド州立図書館蔵の手稿と照らし合わせて校訂を行い、『シンドバード航海記』の成立過程に関する論文を加えて出版した。
尚、本研究課題の主要な調査対象となっている手稿の現物について、フランスで確認作業を行う予定であったが、依然として新型コロナウイルスの感染拡大が続いており、渡仏できない状況が続いているため、当面は国内で可能な作業を集中して行い、渡仏が可能になったのちに確認作業を行う予定である。

2021年度活動報告(現在までの進捗状況)

依然として新型コロナウイルスの感染拡大が続いており、現地調査が不可能になっているため。

2020年度活動報告(研究実績の概要)

本年度は以下の研究項目を実施した。
1.本研究課題の主要な調査対象であるJ.-C.マルドリュスによる『福音書』の翻訳Cinq conteurs divins dansla lumiere(光に満ちた5人の神の言葉の語り手)手稿に関する研究調査①マルドリュスによる手稿の解読及び転写②『マルドリュス遺贈コレクション』内の関連資料の調査③当該作品が執筆された時期のマルドリュスの周辺に関する調査:1.については今年度も継続予定である。
2.マルドリュスに関する研究調査①『マルドリュス遺贈コレクションカタログ』の執筆・編集作業。現時点では2021年度末の出版を目指して編集作業を行っている。②マルドリュスの出身地エジプトの伝説的女性歌手ウンム・クルスームについての伝記的小説、Selim Nassib著「OUM」(Editions Balland,1994)の翻訳を出版(『詩人の恋・アラブの歌姫ウンム・クルスーム物語』(スタイルノート、共訳))。③これまで行ったマルドリュス及び『マルドリュス遺贈コレクション』調査に関する論文の執筆
3.『千一夜物語』関連の研究調査①ペティス・ド・ラ・クロワによる『シンドバード航海記』(クリーブランド州立図書館ならびにバイエルン図書館蔵)の校訂・編集作業②『シンドバード航海記』の成立過程に関する論文の執筆
尚、本研究課題の主要な調査対象となっている手稿の現物について、フランスで再度確認作業を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大により、依然
として確認作業が不可能になっているため、当面は国内で可能な作業を集中して行い、渡仏が可能になったのちに確認作業を行う予定である。

2020年度活動報告(現在までの進捗状況)

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、フランスによる現地調査を中止せざるを得なく、現物資料の確認が不可能となっている。

2019年度活動報告

本年度は、研究開始にあたり研究のために必要な環境を整え、調査対象であるJ.-C.マルドリュスによる『福音書』の翻訳とされるCinq conteurs divins dansla lumiere(光に満ちた5人の神の言葉の語り手)手稿のデータ化を開始した。具体的には以下の作業を行った。
①『マルドリュス遺贈コレクション』内の関連資料の調査:これまでデジタル化したマルドリュス関連の資料の中で、調査対象の手稿に関連するものの確認作業を行った。②手稿の解読及び転写:これについては、フランス人研究者にも協力を依頼し、現在進行中である。③調査対象が執筆された時期に関して、マルドリュス周辺の情報収集を行った。④マルドリュス関連の研究として、2021年度出版予定である『マルドリュス遺贈コレクションカタログ』の編集作業及び論文執筆を行った。⑤マルドリュスに関する研究の一環として、彼の出身地エジプトの伝説的女性歌手ウンム・クルスームについての伝記的小説、Selim Nassib著「OUM」(Editions Balland,1994)の翻訳を行った(共訳:2020年度出版予定)⑥『千一夜物語』関連の研究として、ペティス・ド・ラ・クロワによる『シンドバード航海記』に関する調査を行った。
尚、2月~3月にかけて、フランスにおける現地調査を行う予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大により、現地調査を取りやめた。そのため、当初予定していた現地で資料の確認を行う調査が実施できず、やむを得ず研究計画を一部変更することとなった。