現代社会における人格概念の変容と拡大
研究期間:2025.10-2028.3
代表者 福井栄二郎
キーワード
人格、グローバル化、代替不可能性
目的
本研究の目的は、人格概念が変容・拡大する様態を「代替不可能性」という視座から明らかにし、人格論の新たな理論構築を行うことである。
M.モースが述べたように人格は社会的な構築物である。それゆえ個別社会のなかで「誰が人間なのか」といった問題は、それほど自明なことではない。そして急速に展開するグローバル化は、このローカルな人格概念の変容・拡大に拍車をかけている。生成AIによって「復活」される死者、長期間凍結保存される受精卵、飼い主と同じ墓に埋葬されるペットなどは、その最たる事例だろう。そしてそこに通底しているのは、人格の「代替不可能性」である。
本研究は、①当該社会における「人格」とは何かを明らかにし、②それが近年どのように変容・拡大しつつあるのかを「代替不可能性」という視座から検討したうえで、③グローバル社会の動態を含めた新たな人格論を構築する。そのため文化人類学だけでなく、平和研究、生命倫理学、人形研究、民俗学といった近隣領域の知見も積極的に用いる。
2025年度
研究会を2回開催する。初回は代表者の福井が研究会の趣旨説明を行う。これまでの人格研究を概観し、問題点を指摘することで、本研究会の目的や視座、分析枠組みを他のメンバーと共有する。第2回目以降は、各メンバーが自らのフィールドで得たデータを提示しつつ、当該社会の人格概念がどのようなものなのか、またそれがどう変容しつつあるのかについて発表を行う。
2回目以降の研究会については、適宜、ゲストスピーカー(とくに若手研究者)を招聘することで、上記メンバーでは補えないテーマや地域をカバーし、議論に奥行きをもたせる。また必要であれば、オンライン等で読書会を行い、これまでの人格論の到達点と問題点を共有しておく。
【館内研究員】 | 中川理、平野智佳子 |
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【館外研究員】 | 碇陽子、市田真理、菊地浩平、笹月桃子、中空萌、中谷文美、深川宏樹 |