学術資料デジタルアーカイブの活用法としてのデジタルストーリーテリング――X-DiPLASのアフリカ写真コレクションを例とした実践的研究
研究期間:2025.10-2028.3
代表者 小林直明
キーワード
デジタルストーリーテリング、デジタルアーカイブ、アフリカ地域研究
目的
文化人類学などのフィールドワーカーによって撮影された写真資料は、それが公的資金によって実施された学術調査の成果物であったとしても、本人の退職とともに自宅に持ち帰られ(私蔵され)、やがて散逸の危機にさらされることとなる……というケースは少なくない。公的予算にもとづく成果は、大学など公的機関によって保存され、次世代に継承・活用されていくべきではないか。このような問題意識のもと、民博は2016年度より、公募制によるフィールド写真のデジタルアーカイブ事業(DiPLAS:~2021年度、X-DiPLAS:2022年度~)を展開してきた。これまでの9年間で、採択案件数は87件、約38万点の写真資料を受け入れ、データベース数は67件に達している。写真資料のデジタル化・データベース化によって散逸の危機を回避することについては、すでに一定の成果をあげていると評価しえるだろう。
しかし、これらをさらに50年、100年の風雪に耐えるようなものにしていくには、コンテンツが繰り返し活用され、情報が追加・更新されること、それによって学術的・社会的な価値を保ち続けることが重要である。データベースのドキュメンテーション(写真に付与するキャプションなどのテキスト情報)をいかに充実していけばよいか、またできあがってきたデータベースの利活用をいかに促進していけばよいかが、目下の課題である。本共同研究では、このような課題を解決していくための工夫の一つとして、データベースのコンテンツを利用したデジタルストーリーテリング(以下、DSTと略す)を提案し、これを実践していく。研究会における討議の内容を反映させながらDSTを実践することによってこの手法の有効性を検証し、実施例を積み重ねることによって「写真デジタルアーカイブ」全般に波及し得る、さらなる可能性を追求していくことが本研究の目的である。
2025年度
2025年度(10月~、半年間)
第1回 キックオフ集会
・共同研究会の趣旨説明
・DiPLAS/X-DiPLAS事業の経緯について
・X-DiPLAS事業におけるこれまでのDSTの取組について
・共同研究プロジェクトの進め方について
・そもそもDSTとは何か:DSTの歴史と国際的動向について
第2回 ・DSTハンズオン・ワークショップ(その1)
・特別講師による教育工学的な視点からの考察
第3回 ・DSTハンズオン・ワークショップ(その2)
・特別講師による芸術メディア論、文化社会学的な視点からの考察
【館内研究員】 | 飯田卓、石山俊 |
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【館外研究員】 | 赤阪賢、岩谷洋史、小川明子、末原達郎、鈴木岳海、田原範子、西江仁徳、松浦直毅、松田素二、元木春伽 |
研究会
- 2025年11月2日(日)13:30~17:30(国立民族学博物館 大演習室 ウェブ開催併用)
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キックオフミーティング
小林直明(国立民族学博物館超域フィールド科学研究部)・「この共同研究会について」
・共同研究会の趣旨説明
・メンバー紹介
・「DiPLAS/X-DiPLAS事業」について
・「X-DiPLAS事業」におけるこれまでのデジタルストーリーテリングの取組について
・今後の進め方について
小川明子(立命館大学映像学部)・「デジタル・ストーリーテリングの世界」
総合討論