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伊藤紫(ITO Yukari)

在学生の研究内容

伊藤紫(ITO Yukari)

所属

人類文化研究コース

指導教員

主任指導教員:上羽陽子/副指導教員:奈良雅史

研究題目

伝統織物の継承をめぐる文化人類学的研究——伝承会、趣味、作り手の選択

研究キーワード

伝統織物、継承、趣味、作り手の選択、伝承会・保存会

研究の概要

本研究は、伝統織物の継承に取り組む伝承会と、そこで活動する会員たちに注目し、伝統的な手織物制作に趣味的に取り組むという選択を、現代日本の社会生活の中で捉えようとするものである。
伝統織物は、過去から変わらず受け継がれてきたかに思われがちだが、実際には常に変化をたどってきた。先行研究では、織物を含む世界各地の伝統染織について、多様で複雑な変化の諸相が示され、生産地内外の様々なアクターの関与の中で生産者たちがとる選択について、生産地社会の文脈に即して議論されてきた。その際、取り上げられてきた対象は、主に、女性の仕事や親族で従事する職業などとして、伝統染織に取り組むことが地域社会の中で自然ないしは望ましいと見做されているような事例であった。
それに対して、日本各地の伝統織物をめぐっては、織物制作が一般的ではない環境で、個人の趣味的活動として伝統織物継承が選択されている事例が珍しくない。社会学の研究蓄積が示すように、個人の趣味選択は、階層やジェンダーなどの社会構造と深く結びついた社会的営みであり、変化する社会の中で趣味に位置づけられた伝統織物の実態も、研究対象として見落とせないものである。
そこで、本研究では、伝統織物の継承活動を趣味的に展開する織物伝承会を対象に、以下の点から調査分析を進める。
(1) 伝承会の活動実態と、そこでの伝統織物・生産技術の語られ方
(2) 継承活動で選択されている技術・素材等とその継承方法
(3) 会員個人が社会生活のなかで伝統織物に見出す価値と制作実践
(4) 継承活動を取り巻く諸アクターとの社会関係
また、扱う素材や地域性、体制が異なる団体を比較対象とすることで、モノ・動植物や地理的環境、制度の影響についても明らかにしていく。

研究成果レポート