公開シンポジウム「日本におけるユニバーサル・ミュージアムの現状と課題――2020オリパラを迎える前に」

日時 | 2019年11月3日(日・祝)~11月4日(月・休) |
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場所 | 国立民族学博物館 第5セミナー室 |
参加 | 一般公開(参加無料/要事前申込/定員:各日100名[先着順]) ※定員に達したため、申込受付は終了いたしました。 |
後援 | 全日本博物館学会、日本博物館協会、日本ミュージアム・マネージメント学会 |
お問い合わせ | 国立民族学博物館 グローバル現象研究部(広瀬) 〒565-8511 大阪府吹田市千里万博公園10-1 国立民族学博物館研究部 菊澤研究室 電話:06-6878-8437 |
趣旨
2020年、日本でオリンピック・パラリンピックが開催される。この国際的な大イベントをどのように迎えればいいのか。そしてオリパラをきっかけに、日本社会はどんな方向をめざすべきなのだろうか。
1964年の東京オリンピック、1970年の大阪万博は、日本が先進国に仲間入りしたことを国内外に印象付ける祭典だった。ここでいう「先進国」とは、政治的・経済的な意味である。21世紀、令和という新時代に実施される東京オリパラ、大阪万博は、文化的にも日本が先進国であることを証明しなければならない。文化的な成熟度を測る有力な指標として「障害」がある。20世紀、人類はアビリティ(能力=できること)をひたすら拡張してきた。その流れの中にオリンピック、万博があるともいえる。アビリティを追い求める発想から必然的に零れ落ちてしまうのがディスアビリティ、すなわち「障害」なのである。既存の社会システム、当たり前とされる価値観・世界観に「障害」を取り入れることにより、人間が依拠するアビリティの定義は再考を迫られる。
ミュージアムは、近代文明のシンボルとして誕生した。近代とは「より多く、より速く」というトレンドの下、人間のアビリティを進化させる技術革新の時代である。そんな近代社会では、五感の中でも情報の伝達量、スピードに優れている視覚が重視されてきた。そのため、今日のミュージアムの展示でも、視覚的に見る・見せることが大前提とされている。
こういった視覚優位・視覚偏重の博物館・美術館の常識を改変するのがユニバーサル・ミュージアムである。それゆえ、ユニバーサル・ミュージアム研究は近代と真正面から対決する思想運動ともいえるだろう。国立民族学博物館では2006年の企画展「さわる文字、さわる世界」の開催以来、共同研究、科学研究費プロジェクトなどを通じて、ユニバーサル・ミュージアムの意義と可能性を追求してきた。今回の公開シンポジウムは、民博における過去10年余のユニバーサル・ミュージアム研究の総括と位置付けることができる。
また本シンポジウムは、2020年の秋に予定されている民博の特別展「ユニバーサル・ミュージアム-『未開の知』への旅」(仮題)のプレイベントでもある。冒頭に掲げた二つの問い、「オリパラをどのように迎えればいいのか」「オリパラ後、日本社会はどんな方向をめざすべきなのか」に対する答えが、本シンポジウムから得られるものと確信している。
シンポジウム1日目はアートに注目する。アートとは本来、ユニバーサルな(誰もが楽しめる)表現手段である。1日目の三つのセッションでは主に制作者にご登壇いただき、「触」をキーワードとしてアートの本義を探る。2日目は博物館・美術館の学芸員、研究者の事例報告を中心に三つのセッションを組み、「ユニバーサル」を具体化する多様な方途について議論を深める。ミュージアムが近代文明のシンボルであるならば、そのミュージアムの存在形態を根本から問い直す研究と実践は、「近代」を超克する英知を人類にもたらすに違いない。
アートは人間のさまざまなる「生のあり方」(ルート)を自由かつ柔軟に描く。多彩なルートを分類・整理し、「生」の選択肢を提示できるのがユニバーサル・ミュージアムである。シンポジウム1日目がアートの創造者、ルートを切り開く人々のセッションだとすれば、2日目はアートの活用者、ルートを踏み固める人々のセッションということができる。本シンポジウムが日本のユニバーサル・ミュージアムの現状を把握し、未来を展望する場になれば幸いである。さらに、近代的なアビリティの桎梏を脱し、日本発の新概念として「ユニバーサル・ミュージアム」を広く世界に発信できればと切望する。さあ、2020年へ、そして2020年から!
プログラム
11月3日(日・祝)
12:00 – | 受付開始 | |
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13:10 – 13:15 | 開会挨拶 吉田憲司(国立民族学博物館) 趣旨説明 広瀬浩二郎(国立民族学博物館) |
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13:15 – 14:00 | 講演 「『未開の知』に触れる―ユニバーサル・ミュージアム研究の回顧と展望」 小山修三(国立民族学博物館) |
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14:00 – 15:20 | セッション Ⅰ: 「彫刻を超克する―制作と鑑賞の新たな地平」 |
コーディネーター:篠原聰(東海大学) パネリスト:冨長敦也(彫刻家) 北川太郎(彫刻家) 片山博詞(彫刻家) 高見直宏(彫刻家) |
15:20 – 15:35 | 休憩 | |
15:35 – 16:55 | セッション Ⅱ: 「アートで対話を拓く―自己と他者、物と者のコミュニケーションから」 |
コーディネーター:堀江武史(府中工房) パネリスト:戸坂明日香 (アンドロイドデザイナー) 宮本ルリ子(陶芸家) 前川紘士(美術作家) 加藤可奈衛(彫刻家) |
16:55 – 18:15 | セッション Ⅲ: 「さわれないものへのアプローチ―映像・風景・宇宙の物語」 |
コーディネーター:大石徹(芦屋大学) パネリスト:亀井岳(映像作家) 安芸早穂子(歴史復元画家) ヨーコ・ソニア(アーティスト) 間島秀徳(日本画家) |
18:30 – 20:00 | レセプション(レストラン みんぱく) |
11月4日(月・休)
9:45 – 10:30 | 講演 「『+』から『×』へ―鑑賞と制作を組み合わせるワークショップの可能性」 半田こづえ(明治学院大学) |
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10:30 – 12:00 | セッション Ⅳ: 「博物館を飛び出そう―野外活動のユニバーサル化に向けて」 |
コーディネーター:山本清龍(東京大学) パネリスト:宇野晶(滋賀県立陶芸の森) さかいひろこ (イラストレーター) 藤村俊 (美濃加茂市民ミュージアム) |
12:00 – 13:00 | 昼食休憩 | |
13:00 – 13:45 | 講演 「『合理的配慮』再考―世界の感触を楽しむために」 広瀬浩二郎(国立民族学博物館) |
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13:45 – 15:15 | セッション Ⅴ: 「触図活用のABC―アーティスト、視覚障害者、学芸員の協働」 |
コーディネーター:真下弥生(ルーテル学院大学) パネリスト:桑田知明(デザイナー) 松山沙樹(京都国立近代美術館) 岡本裕子(岡山県立美術館) |
15:15 – 15:30 | 休憩 | |
13:45 – 15:15 | セッション Ⅵ: 「不滅のユニバーサル・ミュージアム―私たちが描く22世紀の博物館像」 |
コーディネーター:黒澤浩(南山大学) パネリスト:鈴木康二 (滋賀県文化財保護協会) 藤島美菜(愛知県美術館) 堀江典子(佛教大学) |
17:00 – 17:30 | 総合討論 コーディネーター:原礼子(国際基督教大学博物館) |
お申し込み方法
「日本におけるユニバーサル・ミュージアムの現状と課題」と明記の上、以下の記入事項を添えてメール又はFAX でお申し込み下さい。2名様以上でお申し込みの場合は、各自記入事項を明記下さい。
10月上旬にはメール又はFAX にて参加の可否をお知らせいたします。
※応募者が多数の場合はご参加いただけないことがあります。
※定員に達したため、申込受付は終了いたしました。