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修了生等の進路

地域文化学・比較文化学専攻 修了生等の進路(令和3年7月1日現在)

修了生等の進路

勤務先(勤務形態) 人数(名) 地域(名)/比較(名)
修了生等 大学等研究機関(常勤) 75 37/38
大学等研究機関(非常勤) 37 15/22
企業等 28 12/16
140 64/76

大学等研究機関(常勤)勤務先一覧

青山学院大学、愛知淑徳大学、愛媛大学、大阪大学、神奈川大学、金沢星陵大学、鹿児島純心女子大学、川崎医療福祉大学、関西外国語大学、神田外語大学、京都大学、京都精華大学、京都文教大学、京都外国語大学、県立広島大学、神戸大学、神戸市外国語大学、神戸山手大学、神戸女学院大学、芝浦工業大学、四天王寺国際仏教大学、静岡大学、静岡文化芸術大学、滋賀県立近代美術館、女子栄養大学、清泉女学院、就実大学、成蹊大学、大東文化大学、中部大学、中京大学、筑波大学、東京大学、東京外国語大学、東北学院大学、東洋大学、帝京大学、長崎純心大学、奈良県立大学、南山大学、日本赤十字九州国際看護大学、日本大学、阪南大学、広島市立大学、宮崎公立大学、山形大学、龍谷大学、立命館大学、上海師範大学、インドネシア学術総局、ライデン大学(オランダ)、ソウル大学(韓国)、青海民族大学蔵学院(中国)、中国社会科学院(中国)、国立民族学博物館、国立歴史民俗博物館、総合地球環境学研究所

喬旦加布チョルテンジャブ
(平成30年3月学位取得|中国青海民族大学 准教授)

私は2009年4 月に中国・青海省から私費留学生として日本にきました。留学前は、青海師範大学で、チベット語チベット文学を専攻しました。留学後は、北海道大学に3 年6ヶ月間在籍し、修士課程で初めて文化人類学を専攻しました。そして、総研大地域文化学専攻に進学しました。日本での生活は9 年間ほどになります。

私の場合、出身村の伝統文化に関心を持ち、自分とは何か、人間とは何かという文化人類学の視点で自身の出自に関わる歴史や文化などを研究したいと考えました。博士課程の研究テーマは、主に近年のチベットアムド地域の青海省一帯で見られるチベット仏教の復興運動と民間信仰の変容にかかわる問題で、青海省黄南蔵族自治州同仁県ワォッコル村の事例から、それら宗教にかかわる変化の実態を考察しました。

総研大地域文化学専攻の基盤機関である国立民族学博物館は、多言語による世界各地の民族学・文化人類学、民族誌、地方誌などに関する文献、映像、音声、標本資料を多く収蔵しており、世界でも有数の研究機関であると言っても過言ではありません。また、多岐にわたって民族学・文化人類学の最先端で活躍されている研究者が在籍し、大学院生に対して一対一の丁寧な研究指導を行っている点も魅力です。さらに、国内外におけるフィールド調査に対するサポート体制と学術振興会、その他の助成金の申請、雑誌への投稿に至るまで、指導も充実しています。また、一般の大学より研究会や国際シンポジウムなどが頻繁に行われ、大学院生でも研究発表を行う機会も多く、自分が目指す研究にとって最高の条件が備わっていたと思います。

現在、私は中国青海民族大学の准教授として主に大学院生に対して、人類学の理論や方法論に関する知識を教えながら、大学の民族博物館の展示にも携わっています。いま考えると民博で学んできた知識が大いに役に立っており、これから総研大の地域文化学専攻へ受験を希望する後輩の皆さんには是非とも豊かな研究環境を活用して欲しいと思っております。

今中崇文
(平成28年3月学位取得|京都市文化財保護課文化財保護技師[民俗文化財担当])

総研大の地域文化学専攻・比較文化学専攻が設置されている国立民族学博物館は、日本でも有数の文化人類学・民族学の研究センターです。学部から修士課程まで東洋史学専攻に在籍していた私は、中国のイスラームを信仰する少数民族、回族の日常的な宗教実践やコミュニティについて関心を持ち、その解明にはフィールドワークが不可欠になることから、ここならば充分な指導を受けられるのではないかと考え、総研大に進学しました。

実際、総研大在籍中には、フィールドワークを実施するための多種多様なサポートを受けることができました。先生方からの指導・助言はもちろんのこと、院生同士で交換されるフィールドワークの情報も大いに役立ちました。総研大の研究支援制度を利用し、追加調査の費用をまかなわせてもらったこともあります。デジタルカメラやレコーダーといった機器も借り出すことができます。

民博には、文化人類学・民族学だけでなく、民俗学や考古学、博物館学、保存科学など、幅広い分野の先生方が在籍されています。そこに集う学生もさまざまな分野の出身者で構成されており、ゼミや講義は言うに及ばず、学生同士で繰り広げられる議論も多岐にわたります。さらには、民博が主催する共同研究会やシンポジウムなどに参加させてもらい、国内外のさまざまな分野の専門家と直接交流することが可能です。現在、私は民俗文化財担当の文化財保護技師として、京都市内の有形・無形民俗文化財の保護に携わっていますが、しばしば思わぬところで、民博での耳学問で得られた知識が役に立っています。

自らの研究を深めるとともに、その幅を広めるためにも、総研大・民博はこれ以上ない環境といえます。貪欲に活用していただきたいと思います。

島村一平
(平成22年3月学位取得|国立民族学博物館 超域フィールド科学研究部 准教授)

私は、モンゴルのナショナリズムやエスニシティの問題を特にシャーマニズムを切り口に研究してきた。意外なことであるが、モンゴルのシャーマニズム研究は、ここ10数年、欧米の人類学者の間でホットスポットとなっている。私が院生であった頃(2000年前後)も、ケンブリッジやハーバードといった大学の博士院生が10人以上、モンゴルでシャーマニズムをテーマにフィールド・ワークを行っていた。そうした事情から、私は日本語よりもむしろ英語やモンゴル語で成果を発表することを意識してきた。モンゴル語でも書くのは、現地の研究者や一般の人々にも読んでもらいたいからだ。それと、実は欧米のモンゴル研究者も読む。つまり現地語の方が、日本語より研究上のパブリシティが高いのである。そうした国際発信力が評価されたのか、いくつかの学術賞をいただいた。

総研大のいいところは、まず私のような門外漢を受け入れてくれる度量の深さがある点だ。実は私は法学部の出身で、卒業後ドキュメンタリー番組の制作会社に就職した。そこでたまたま取材で訪れたモンゴルに魅せられ、会社を辞めて留学を果たした。したがって修士課程はモンゴルの大学の出身である。こうした私を受け入れてくれたことに本当に感謝している。第二に総研大の地域文化学・比較文化学両専攻が置かれている国立民族学博物館は、日本最大の文化人類学の研究所であるという点である。クリフォード・ギアツいわく「ある学問がどんな学問なのかを知りたければ、その学問を研究している人びとが実際にどんなことをしているかをまず見るべきである」。みんぱくほど「人類学者」と呼ばれる人びとが普段何をしているのか、参与観察できる場所はない。人類学者を目指す皆さん、総研大の両専攻は良いですよ。

宮脇千絵
(平成24年9月学位取得|南山大学人類学研究所 研究員[国際化推進事業担当])

中国語を専攻していた学部生のときに訪れた特別展「異文化へのまなざし」が、私と民博、そして文化人類学という学問との出会いでした。それ以来ファンであった民博のなかに入りたい、それも私が総研大に進学した理由のひとつです。

総研大は、調査研究をサポートしてくれる体制も整っていますし、学生主体のジャーナルやフォーラムなど研究成果を発表する場も多く準備されています。年間を通して開催される国内外のシンポジウムや学会の運営補助といった「研究外」活動もまた、研究者としての実務的資質を育んでくれました。中国雲南省のモン(ミャオ族)の服飾文化を研究する私にとっては、博物館におけるモノの扱い方、展示に関して実践的に学べる場でもありました。ほぼ毎日院生室にいた私は、総研大の資源を存分に活用した学生の一人だったのではないかと自負しています。

一大研究拠点である民博を離れたいま、そこでのたくさんの「出会い」が大きな財産となっていることを実感します。研究活動は時に不安で孤独なものです。しかし博士課程の苦楽を共にした同世代や総研大の歴史を紡いできた先輩方の活躍、指南し後押しとなってくれる教員や民博に集う多彩な研究員の存在は、ひとりの研究者として自立するための支えになってくれます。

総研大の充実した研究リソース、そこで培うことのできる幅広い人脈を、これから入学する後輩のみなさんにも引き継いでいってもらいたいと思います。

長沼さやか
(平成20年3月学位取得|静岡大学 人文社会科学部社会学科 准教授)

私は、中国南部の広東省において、かつて船などに住みながら移動生活をしていた水上居民の人々を対象に研究をしています。広東周辺では、宗族という父系出自集団が村落社会の基礎となっています。宗族の成員たちは、自分たちの祖先が漢文明の発祥地である黄河流域から移住してきたという伝説や系譜を持ち、出自の正統性を強く意識しています。一方で水上居民は起源説や系譜を持たないことから、宗族の成員たちに非漢族とみなされていました。水上居民と宗族の集団間境界には、漢族という巨大な民族集団を再考する糸口が隠れており、それが博士論文を執筆するポイントとなりました。

ところで、私が博士課程に入学した2001年頃には、フィールドワークの実施に制限がともなう中国を研究対象とする文化人類学者は多くはありませんでした。そうしたなかで民博は、中国を含む世界各地の研究機関と連携し、現地調査や学術交流をおこなっていました。研究のために必要な文献、施設の充実はもちろんですが、フィールドワークに不可欠な社会的ネットワークが民博にはありました。それは開館以来、民博や総研大に関わってきた人々すべてが地道に築き上げてきた「人脈力」であり、かけがえのない財産です。その財産をこれから総研大に入学する後輩の皆さんにも、ぜひ引き継いでもらいたいと思います。

陳夏晗
(平成23年3月学位取得|中国厦門市社会科学院 助理研究員)

私の研究課題は、現代東南中国における宗親会の復興、とくに歴史上の検討をふまえ、近年の社会的、経済的、政治的変動に応じた復興過程とそのあり様を民族誌的に記述することである。

国立民族学博物館は、大学共同利用機関として、国内外のさまざまな専門分野の研究者と分野横断で高度な学術研究が進められており、さまざまな共同研究会やシンポジウムなどの機会がとても多い。しかも、専門や関心分野の異なる多数の院生や教員が集まり、多角的な視点からのコメントを投げかれてくれる大学院生のゼミが頻繁に行われている。さらに、民博図書館は、専門書の蔵書の充実が抜群である。

民博は、比較文化学の方法だけではなく、比較文化研究の環境も提供している。異なる地域と分野の研究者との交流を深めていくことが可能であり、豊富な英文・中国語・日本語の文献資料を存分に活用することができる。私にとって、比較文化学の視野から、東南アジアや東アジア社会への理解を深めるにつれて、中国社会もより深く分かるようになった。

こうした民博の魅力は、民博から離れている私にとって、いつも懐かしく思うことである。今後、総研大に入学する学生には、ぜひ民博の豊かな研究環境を存分に活用してほしい。

渋谷綾子
(平成22年3月学位取得|東京大学資料編纂所 特任助教)

私が総研大・民博で過ごした5年間は、研究環境に非常に恵まれていた。一番の理由は,研究の実施に必要な実験機器類を自由に利用することができたことである。私の研究テーマは、日本の旧石器時代や縄文時代の植物食について,世界各地の考古学調査で近年導入された残存デンプン粒分析を用いて解明することである。研究を進めるためには生物顕微鏡や顕微鏡カメラなどの機器類やクリーンルームなどの設備を必要とした。これらは私個人で導入することは非常に難しいが、幸いにも、民博の動植物標本資料室にある機器類を利用する許可が得られたため、分析や実験を着実に進めていくことができた。

また院生ゼミでは、研究テーマや分野の異なる院生たち、教授陣を相手に研究発表を行うため、他分野の研究者に対して自分の研究成果を理解してもらうための訓練を積むことができた。これは、学会や研究会での研究発表において非常に役に立った。

このような恵まれた環境が、学位論文として研究成果をまとめる基盤となったと思う。


※インタビュー内容、所属等は取材当時の情報になります

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