東アジア展示<アイヌの文化>
アイヌは、北海道を中心に日本列島北部とその周辺にくらし、寒冷な自然環境のもとで独自の文化をはぐくんできた先住民族です。江戸時代に幕府による支配が始まり、明治時代に同化がすすめられると、アイヌは差別を受け生活に困るようになりました。しかし近年、日本政府はその歴史的事実を認め、アイヌ民族を尊重した政策に取り組みはじめました。ここでは、伝統を継承しつつ、あらたな文化を創造する人びとの姿を紹介します。
展示セクション
●アイヌとは ●カムイと自然 ●現代そして未来
主な展示品紹介
木彫「藤戸タケ像」
- 標本番号:H0189023
- 地域:北海道 釧路市 阿寒町
- 1992年制作
作者の藤戸竹喜(1934-2018)は、父のもとで12歳から熊を彫り始め、「木彫り熊」が基本となっていると言う。1969年に阿寒湖畔の寺に観音像を納めたのを機に、作風をひろげた。本作は祖母がモデル。
木彫「アイデンティティ3」
- 標本番号:H0277688
- 北海道 平取町二風谷
- 2015年制作
作者の貝澤徹(1958-)は、先人の残した民具や儀礼具から刺激を受けつつ、独自の表現をしたいと、メッセージをこめた新しい木彫に取り組む。同シリーズの作品は(公財)アイヌ民族文化財団とカナダ国立美術館が所蔵。
木彫「ユーカラクル/語り部」
- 標本番号:H0277698
- 地域:北海道 釧路市 阿寒町
- 1984年制作
作者の床ヌブリ(1937-2014)は10代から阿寒湖畔で木彫りを始め、30代には阿寒アイヌ文化保存会結成に尽力するなど、若手の育成にも貢献した。「ユーカラクㇽ」は代表的なテーマのひとつで同名作品が多数ある。
首飾り
- 標本番号:K0002195
- 地域:北海道
- 1903年収集
ガラス玉を連ねた首飾りは、女性が盛装時に着けるもので、宝物として受け継がれてきた。ガラス玉は交易品により、中国大陸産のものが樺太経由で北海道に入り、18世紀後半になると本州産のものが多く流通するようになった。
飾り金具付き帯
- 標本番号:K0002425
- 地域:樺太
- 1907年収集
樺太アイヌの女性が日常的に用いたもので、皮製の帯にさまざまな金属の飾りが付いている。東京大学の人類学者・坪井正五郎が西海岸の粂子舞で収集した際、彫刻の施された木製の鞘のみを持ち帰ったという。
矢筒
- 標本番号:K0002074
- 地域:北海道
- 20世紀初頭収集(推定)
狩猟用の矢を入れる矢筒で、額にかけて背負うためのタㇻ(ひも)が取り付けられている。筒の本体は木製でサクラ樹皮が巻いてある。タㇻの取り付け部分には文様が彫刻され、祈りに用いるイクパスイ(捧酒箸)が付けられている。
仮面
- 標本番号:K0002378
- 地域:千島(色丹島)
- 1899年収集
民族学の先駆者・鳥居龍蔵が収集したもので、アイヌの仮面として知られる世界で唯一の資料。鳥居は、伝説の幽霊・悪鬼の仮面であるとし、アラスカやカムチャツカの先住民との共通性を指摘した。実際に着けるには小ぶりである。
熊送り用祭壇模型(複製)
- 標本番号:H0273159
- 地域:北海道
- 2011年制作
もととなった資料は東京大学理学部人類学教室旧蔵資料(K0002278)で、20世紀初頭の製作と推定される。損傷があり、組み立て不可能だったため、アイヌ文化伝承者育成事業の研修生たちが調査をしながら、複製した。
イタ(盆)
- 標本番号:H0277697
- 地域:北海道 平取町二風谷
- 2015年制作
二風谷のイタとアットゥシは、2013 年に経済産業省の「伝統的工芸品」に北海道で初めて指定された。イタは木製の盆で、渦巻きやうろこ様の精緻な彫刻が施される。写真は、貝澤守(1965-)の作品。
アットゥシ(樹皮繊維製布)帯
- 標本番号:H0277696
- 地域:北海道 平取町二風谷
- 2014年制作
二風谷のアットゥシは、イタとともに2013 年に経済産業省の「伝統的工芸品」に指定された。アットゥシは着物のみならずバッグなどの小物にも用いられ、和装用の帯も人気が高い。写真は藤谷るみ子(1948-)の作品。