東アジア展示<朝鮮半島の文化>
朝鮮半島の人びとは、外部の民族から影響を受けつつも、独自の文化を育んできました。有史以前は東シベリアの諸民族から、その後は中国から取り入れた文化要素を、独自のものに再編し、世界に例を見ないほど高度に統合された文化を獲得してきました。近代には日本に植民地支配され、独立後にはふたつの分断国家として急速な近代化を進めました。そして現代には、積極的に世界に進出する韓国人や、コリア系の海外生活者の姿も見られます。こうした文化の歴史的な重なりや躍動性を、精神世界、衣食住、あそびと知をテーマに紹介します。
展示セクション
●精神世界 ●住の文化 ●食の文化 ●衣の文化 ●あそびの文化 ●知の文化
主な展示品紹介
壇君(タングン)の肖像
- 標本番号:H0214469
- 地域:ソウル特別市
- 1998年収集
「朝の鮮やかな国」朝鮮は、早くから国とよべるようなまとまりがあった。そのはじめはつぎのような檀君王倹の伝説として語られる。「天の神が息子の桓雄に、下界に降りて人びとを治めるよう命じた。桓雄は雨、風、雲の三神をはじめ3000の従者をひきいて太白山の神檀樹の木の下に降りた。ある日、トラとクマが来て人間になりたいと願った。桓雄はヨモギとニンニクをあたえ、これを食べて100日のあいだ日光をみなければ人間になれると教えた。トラは途中でやめたが、クマはよくたえて美しい娘となった。この熊女と桓雄は結ばれ、檀君王倹(だんくんおうけん)を生んだ。檀君は平壌に都を定め、国をたててその名を朝鮮とした。のちに都を阿斯達に移し、1,500年のあいだ国を治める。中国の王が箕子を朝鮮の王としたので、檀君は阿斯達の山にはいり、山の神になった」。この話は、のちに建国神話として、朝鮮の人びとの愛国心のよりどころとなっていく。檀君起源によれば、西暦年に2,333年を加算するため、朝鮮は 4,000年をはるかに越える悠久な歴史をもつことになる。
巫神図(ムシンド)
- 標本番号:H0214650 – H0214669
- 地域:黄海道
- 1998年収集
巫神図には、歴史上の名将や、伝説上の人物、道教の神などが描かれる。それぞれの神は、財運、子宝、子どもの成長などを司り、シャマンは依頼主の願いごとや質問を、この巫神図に向かって伝える。
酒幕(チュマク)[再現]
- 標本番号:H0216707ほか
- 地域:忠清南道 牙山市
- 1999年製作
酒幕は、朝鮮半島の伝統社会において旅人が飲食や宿泊をする施設であり、情報交換の場でもあった。これは1920年ごろに建てられた酒幕を再現したもので、もとの屋根は草葺きだったが、展示にあたり銅板に変更した。
木製のキムチ甕
- 標本番号:H0209999
- 地域:江原道 麟蹄地方
- 1900年代はじめ製作
キムチ甕の形態や材質は地域によって多少の違いがある。キムチ甕は味噌・醤油が入れられた甕とともに、家の中庭にある醤甕台(チャントクデ)に置かれるが、その数には家の経済状態があらわれる。
伝統的な婚礼衣装
- 標本番号:H0095404ほか
- 地域:忠清南道 天安市ほか
- 1978年、1982年、2000年収集
新郎は朝鮮時代の文官の常用服を着て、新婦は王室や特権階級であった両班(ヤンバン)の婦女子の礼服で着飾った。結婚式に限って、一般の庶民たちも普段は禁じられている衣装を着ることが許された。
折衷様式の婚礼衣装
- 標本番号:H0274959 – H0274964
- 地域:京畿道 安山市
- 2013年収集
現代の結婚式では、新郎新婦が西洋式と伝統式の衣装を衣替えすることが多い。また、この資料のような、折衷様式の結婚衣装を選ぶ人びとも珍しくない。2010年前後には、特にアールデコ模様の折衷衣装が流行した。
杖鼓(チャンゴ)の奏者
- 標本番号:H0035214ほか
- 地域:ソウル特別市
- 1978年収集
プンムル(農楽)やタルチュム(仮面劇)は、農作業の合間におこなわれた芸能である。人びとはこれらを通して心身の疲れを癒した。ときには、抑圧された被支配層の憂さ晴らしとして、社会の安定を保つ機能もはたしていた。
漫画本
- 標本番号:H0215178, H0215179, H0215181
- 地域:ソウル特別市
- 1999年収集
書店には、日本作家のマンガの翻訳書がたくさん置かれており、日本からもたらされる大衆文化のなかでも、マンガの存在は大きい。
平生図(ピョンセンド)
- 標本番号:H0095223
- 制作:金基昌(キムギチャン)
- 地域:忠清南道 天安市
- 1982年収集
両班の一生を10曲の屏風に描いたもの。誕生、儒学修練、婚礼、科挙及第、宮仕え、還婚などの場面からなり、儒者の理想の生きかたとされた。