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特別展『日本の仮面』開会式ご挨拶あいさつ

皆様、本日はようこそ、みんぱく創設五十周年祈念特別展「日本の仮面―芸能と祭の世界」の開会式・内覧会にお運びくださいまして、ありがとうございます。

館長の吉田憲司でございます。

特別展『日本の仮面』開会式ご挨拶あいさつ

ここ数日、不順な天候は、続いておりましたが、「日本の仮面―芸能と祭の世界」展の開会式の今日は、打って変わって快晴。桜のつぼみも一気に膨らんだのではないかと思います。今日はまるで、日本の仮面がここみんぱくに集結して、こぞってみんぱく創設50周年を祝ってくれているかのように思えてきます。

私たち国立民族学博物館(みんぱく)は、国立学校設置法の一部を改正する法律の施行により、博物館機能をもつ文化人類学・民族学の分野の大学共同利用機関として1974年6月7日に創設され、1977年にこちら大阪千里の70年万博の跡地に開館しました。本年2024年で、創設50周年を迎えます。

みんぱくには現在、専任教員が五十四名おりますが、それぞれが世界各地でフィールドワークに従事し、人類文化の多様性と共通性、そしてそれらの文化のつながりについて調査研究を続けています。

みんぱくが過去50年をかけての収集してきた標本資料、つまりモノの資料の総数は、現在、約34万5千点を超えました。このコレクションは、20世紀後半以降に築かれた民族誌資料のコレクションとしては、世界最大規模のものです。また、みんぱくは、その施設の規模の点で、現在、世界最大の民族学博物館になっています。

この度、ここにみんぱくの創設五十周年記念事業として特別展「日本の仮面―芸能と祭の世会」を開催いたします。

50周年の節目に当たる今年、記念のシンポジウムや展示が目白押しに予定されておりますため、創設50周年記念の式典というものは、改めては開催しないことにいたしました。慣例では、これまで、式典は開館の周年事業として開催してきておりまして、3年後、開館50周年に当たっては記念の式典を開催させていただくことになるかと思います。

ただ、今日のこの特別展の開会式には、みんぱくが所属しております人間文化研究機構の木部暢子機構長にもお越しいただいおり、この後式辞を頂戴することになっております。創設50周年の年にあたり、本日のこの特別展の開会式は、実質的に創設50周年の記念式典という意味合いを帯びてきたと実感をしております。本日は、これまでの特別展の開会式と比べて、別して多くの皆さまにお越しいただいております。皆様には、本日、ご参集いただきましたこと、改めて御礼申し上げます。

今回の特別展では、日本各地の祭りや芸能に登場する仮面、それも能、狂言や神楽の面にとどまらず、田楽面や行道面、面掛行列の面など総計700点をこえる仮面が特別展会場に集結し、日本における仮面の歴史をたどるとともに、その日本全国への展開と、日本の祭りにおける人と仮面の多様なあり方をご紹介いたします。

この展示では、民博の所蔵品はもとより、日本各地の社寺に所蔵されている貴重な仮面も数多く展観されます。それは、過去五十年にわたる民博の仮面の収集の積み重ねとともに、仮面をめぐる研究の蓄積、仮面を用いる祭り・芸能の担い手の方々とのつながりの上に立って初めて実現できた賜物にほかなりません。今回の展示に向けて貴重な仮面とその関連資料をご提供いただきました皆様に、この場を借りて衷心よりの御礼を申し上げます。

仮面は、多くの現代人にとって、すでに身近なものではなくなっているかもしれません。仮面といえば、伝統芸能保存会の人びとや能楽師・狂言師の方々がかぶるもので、自分とはかけはなれた世界のものと思っている方も多いかもしれません。でも、漫画やアニメの世界では、仮面をかぶったヒーローやヒロインがつぎつぎに生み出され、子供たちの熱狂をさそっています。不意に仮面とでくわしたとき、仮面が自分に近づいてきたとき、人は一様に驚きと慄きの表情をみせます。私たち一人一人の心のなかには、仮面と共鳴する生きた感覚が、少なくともなにがしか、今でも共有されているように思われます。

もちろん、仮面はどこにでもあるというものではありません。日本の祭に常に仮面が登場するわけでもありません。世界に視野を広げても、仮面を有する社会は、一部の地域にしか分布しません。その意味で、仮面は、人類文化に普遍的にみられるものではありません。

ただ、世界の仮面の文化を広くみわたして注目されるのは 、仮面の造形や仮面の制作と使用のありかたに大きな多様性がみられる一方で、随所に、地域や民族の違いを越えて、驚くほどよく似た慣習や信念がみとめられるという事実です。相互のあいだに民族移動や文化の交流がおこったとは考えられない、遠く隔たった場所で酷似した現象がみとめられるというのは、やはり一定の条件のもとでの人類に普遍的な思考や行動のありかたのあらわれだと考えてよいだろうと思います。その意味で、仮面の探究は、人間のなかにある根源的なものの探究につながる可能性をもっています。

今回の特別展を通じ、日本の仮面と、それらの仮面をめぐる文化の特徴が明らかにされると同時に、仮面という装置そのものへの私たちの理解がこれまで以上に深まることを願っております。

では、この後、日本各地から集結した仮面たちとの対面を、存分にお楽しみください。どうぞ、よろしくお願いいたします。

本日は、開会式に御参集いただき、本当に有り難うございました。

特別展『日本の仮面』開会式ご挨拶あいさつ

館長の活動の一端を館長室がご紹介します

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