特別展「復興を支える地域の文化-3.11から10年」―― 十日町で発見された包紙(つつみがみ)文書

東日本大震災から10年を迎えるこの春、国立民族学博物館は特別展「復興を支える地域の文化-3.11から10年」を開催する。本展では、さまざまな被災地の復興を後押ししてきた、郷土芸能や生活文化などの「地域文化」を紹介する。筆者が担当した「第3章 災害を契機とした地域文化の再発見」の後半では、新潟県十日町市の着物文化に焦点を当てる。十日町は、古代より上質な布を生産していた地域であり、江戸時代には麻織物の越後縮、明治以降には絹織物の明石ちぢみや後染めの十日町友禅で、その名を全国にとどろかせた。

2004年、中越大震災にみまわれた十日町市では大量の古文書や写真類も被災した。震災後ほどなくして、市民と行政が協働する「十日町市古文書整理ボランティア」が結成され、地域の共有財産である被災資料を救う活動が進められた。被災資料のひとつである「松村屋根津家屏風包紙文書」(包紙文書)は、使用済の古文書を継いで慶応元年(1865年)に屏風の保護紙に転用されたものである。包紙文書の各古文書には江戸時代における越後縮の商いの記録が残されており、ボランティアが中心となり判読を進めた結果、江戸将軍家や大奥に越後縮が納められていたことも実証された。

古文書56枚を継いでつくられた包紙文書には、継ぎ目や上書き箇所などに読めない文字が散見され、判読作業は滞っていた。そこで、筆者らはさまざまな特性の光を用いた撮影調査によって読めない文字の可視化に取り組み、ボランティアの判読作業を支援した。震災を通して発見された包紙文書は、地域にとって重要な歴史を明らかにするとともに、地域の人びととの繋がりを通して十日町の魅力を教えてくれた。

特別展では、2m四方ある包紙文書をはじめ、十日町で織られた各種の着物、十日町で制作されたろうけつ染めの見本裂(みほんぎれ)、写真館の店主が三代にわたって記録した十日町の写真を紹介する。十日町の「地域文化」の魅力に触れていただきたい。

末森薫(国立民族学博物館助教)

関連写真
中越地震後に発見された包紙文書の撮影調査風景
中越地震後に発見された包紙文書の撮影調査
十日町市古文書整理ボランティアの皆さんとの打ち合わせ風景
十日町市古文書整理ボランティアの皆さんとの打ち合わせ

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特別展「復興を支える地域の文化―3.11から10年」