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羽根飾りと山刀――南米ボリビアのマチェテロの踊り

ボリビアのアンデス高地には地域色豊かな舞踏が数多く伝わるが、アマゾン低地にも固有の伝統がある。私の調査地であるベニ県のマチェテロの踊りはその一例であり、2019年、国の無形文化遺産に指定された。先住民モヘニョはこの踊りをカトリックの祭礼で披露する。しかし、踊り手が頭に被る羽根飾りはキリスト教伝道以前に遡る。他方、彼らが手に持つ山刀はスペイン人がもたらしたものである。なぜこのような折衷が生じたのだろうか。

マチェテロとは山刀(マチェテ)の使い手を意味する。踊り手が振り回す山刀は木製の模造品だが、金属製の本物も森の開墾や畑の除草で使われる。他方、コンゴウインコの羽根飾りは祭礼の装飾品に特化している。17~18世紀のカトリックの宣教師の記録によれば、キリスト教改宗以前、モヘニョは祭礼を催すときや戦争に赴くとき、この種の羽根飾りを着用したという。当時の戦士が用いたのは山刀ではなく弓矢だが、今日のマチェテロの踊りにはたしかに戦闘的性格がうかがわれる。山刀は殺傷道具として使われることもあるのだ。

宣教師はモヘニョの「野蛮な」文化全般を蔑視していたが、羽根飾りは例外だった。彼らの記録には、「たいへん美しい」、「ヨーロッパ人の洗練された鑑賞眼にも耐えうる」、などの賛辞が散りばめられている。それゆえにこそ、宣教師は羽根飾りをカトリックの祭礼に転用したのだろう。それでは、山刀はどうなのか。スペイン人には粗野で無粋なこの道具は、金属製品をほとんど知らない先住民には宝物だった。宣教師は釣り針やナイフ、くさびを配って彼らの歓心を買ったが、山刀は斧と並んで最も珍重され、しばしば首長に贈られた。モヘニョにとって山刀は権威の象徴だったのだ。

マチェテロの羽根飾りと山刀は、スペイン人と先住民がそれぞれ相手の文化から最も貴重とみなした要素を選び取ったものだった。その意味で、マチェテロの踊りはふたつの異なる文化的視点が交差した所産といえるだろう。

齋藤晃(国立民族学博物館教授)



関連写真

本館所蔵のマチェテロの羽根飾り(標本番号H0213437)



本館所蔵の山刀(標本番号H0213373)



クリスマスの祭日におけるマチェテロの踊り(筆者撮影)