常設展言語展示の更新――コロナ後の楽しみの一つに

世界には7000を超える数の言語がある。民博常設展の言語展示は、「世界のことば」と「ことばの世界」という2つのコンセプトで、その世界中の言語の多様性と、その裏に潜んでいる一様性とを見せる展示となっている。今年3月25日にその言語展示は、音楽展示とともに、3ヶ月間の更新期間を経て再開した。システム更新が中心ではあったのだが、せっかくなので、コンピュータ制御の各装置や、世界の絵本のコーナーにまで、手を加えた。

言語展示場は、民博の中でもかなり異彩を放っている区画となっているだろう。きらびやかな衣裳も、異形の仮面も、素朴な民具も、乗り物も信仰も生活感もない。窓から光の差し込んだ狭い一角に、言ってしまえば、無機質な装置が並んでいるのだ。右手の壁は一面パネルだし。いや、手に取れる物質による展示もあるにはあるのだが、他の展示エリアが装置少なにモノに溢れているのを思うと、真逆の印象があるだろう。

なぜと言えば、言語には物体としての実体がないからである。一部の言語には文字があって、パネルや絵本で見せてもいるし、それだけでも世界中に様々あって興味深い。だが文字は言語ではなく、あくまで副次的に言語を書き留めているものに過ぎない。実体としての言語は、音声とか、手形や動作などとかのみである。だからこその、装置展示なのである。

家庭や職場のパソコンが、数年もすれば不具合を起こすように、装置展示のマシンだって、時とともに、へたってしまう。今回のリニューアルでは、システムを改善しつつ、コンテンツの情報を常時追加できる、伸びる展示へとアップグレードした。画面デザインも手入れをし、モニタを大きいものに入れ替えもして、使い勝手を向上させた。

触れる展示は感染症の間は不安かと思う。幸い、これは「常設」展である。急ぐ必要はない。新型コロナウイルス感染症が終息した暁にでも、新・言語展示を、ゆったり安心して味わってみていただきたい。

吉岡乾(国立民族学博物館准教授)

関連写真

言語展示に足を踏み入れて最初に目にする光景


言語カード(新規導入)では、言語のあらましを知れる


大きな「小さな王子さま」が待っている


関連情報

本館展示(音楽展示、言語展示)のリニューアルオープンについて★2021年3月25日(木)