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人類の創造的いとなみに居合わせる

観光客の水中銃(銛銃)をまねた自作銃 マダガスカル 南西地域圏 2014年

研究者 飯田卓 IIDA Taku
研究分野 生態人類学、文化遺産の人類学
研究地域
(調査地)
マダガスカル島、アフリカ大陸

私の研究

マダガスカルの漁村では、2000年代に安価な中国製品が入手できるようになって以降、さまざまな漁具や漁法が発明されました。自転車のスポークやスプーンの柄、ゴムタイヤを木材と組みあわせた自作の水中銃。トラックのタイヤから金属ワイヤーをゴムごととり出し、地引網に編んだもの。帆かけ船の帆柱が折れると、ペットボトルを筒状に切って破損部にかぶせ、炭火で少しずつ収縮させてぴったり固定させます。
廃材を活用した、環境にもやさしい技術。日本の人たちも学べるのではないでしょうか。

タイヤからとり出した繊維で作った漁網
マダガスカル 南西地域圏 2008年

ペットポトルで折れた帆柱を補修・強化
マダガスカル 南西地域圏 2019年

帆かけ船も地球にやさしく、燃料不要。
マダガスカル 南西地域圏 1995年

一緒に研究している人:スイス ルツェルン大学 フランク・ムッテンツァー

飯田さんは、ヴェズ人の漁業権を初期の論文で記述し、移動漁民としての自覚を失わずにヴェズ人自身が資源を管理できるような漁業制度を提唱しました。水産資源は無主物でもなく独占物でもない、共有物です。しかしそのように言うと、政府や環境保護運動家は早合点しがちです。漁師たちには権利意識がないので、あらたにルール作りをしようというのです。あるいは、すでにある慣習的な権利を、環境保護プロジェクトが認めるべきだというのです。ですが、飯田さんやわたしがおこなった民族誌的研究によると、移動漁民たちは、ゆるやかに共有される水産資源を利用するため、祖先崇拝の儀礼をとおして環境保護プロジェクトからお墨付きを得る努力をしてきました。(日本語訳)
(漁民のほうが政府よりも早くアクションを起こしているという意味です=飯田補足)

In an early article Taku Iida described traditional use rights in fisheries among the Vezo and proposed common property as way for them to manage resources while maintaining their identity as mobile fishers. The idea that fisheries are not open access but rather an unenclosed commons admits of several readings by government and conservationists. It could mean that fishers have no customary rights and conservation should introduce new access rules. Or it could mean that fishers already have customary rights and conservation should recognise this. Meanwhile it has been shown by ethnographers such as Taku or myself that Vezo migrant fishers have used ancestral rituals in ways that led conservation projects to recognise access to the unenclosed marine commons.
Frank Muttenzer (University of Lucerne, Switzerland)