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南北端で肉をたのしむ/上 氷河の絶景とバーベキュー (2022年11月)

2022年11月5日刊行
宮前知佐子(国立民族学博物館助教)

最近どうも肩身が狭い。というのも筆者は、スイーツビュッフェよりも焼き肉食べ放題を、クリームで飾られたパンケーキより、背脂で覆われたラーメンを好む肉食系女子だからである。女子というにはトウが立っているが、肉食であっても、そこは女子で通したい。いや、肉食だからこそと言うべきか。食物は熟成させた方がうまいと信じている。

さて、肉食は悪なのか。ベジタリアンやビーガン対応の店が増え、菜食が推奨される世の中になった。それでも肉を求めてしまうのは、過去の当コラムにあった言葉を借りれば「肉に出合った人間の性(さが)なのか」。だが今は考えるのをやめよう。今回と次回の2回にわたり、筆者の忘れられない肉の味をお届けしたい。

パタゴニアでの野外調査中振る舞われたアサード(グリル前)と雄大な氷河
(左)野外調査中に振る舞われたアサード(右)雄大な氷河
=いずれもアルゼンチン・パタゴニアで2020年3月、筆者撮影

ヒトが定住する地球最南端と最北端は、アルゼンチンのウシュアイアとノルウェーのロングイェールビーンという町らしい。ヒトの住むところに食あり。最南北までは達していないが、筆者の至高の肉食紀行は緯度高めの地での出来事だった。まずは南端、アルゼンチンでの体験から。

アルゼンチンはパタゴニアが、筆者史上最南端となるフィールドワーク地だ。国立科学博物館が中心となり実施した恐竜化石の調査に参加した。真冬の東京を発(た)ち、真夏のブエノスアイレスに到着し、再び飛行機で、エル・カラファテへ。エル・カラファテは温暖な気候で、氷河の近くに位置するとは到底信じられない。車に乗り、緑豊かな山を登っていく。すると、植栽がどんどん変化していくのが、植物に疎い筆者の目にも明らかだった。湿地をぬけ、岩だらけの荒涼とした風景が広がると、そこがキャンプ地だった。崖の向こうは氷河。壮大なファンタジー映画のような景色に興奮した。世間から隔絶され、曜日感覚が鈍ってきたある日、週末にバーベキューをやろうと提案された。バーベキュー! でもどうやって? 道具も何もないこの場所で?

週末の朝、謎はますます深まるばかりだった。朝から準備しても、ありつけるのはお昼過ぎだという。実は、アサードと呼ばれるアルゼンチン式バーベキューは、他国の焼き肉とはだいぶ趣が異なる。グリルというよりスモークに近い。見たことのない巨大な肉塊を数時間かけてじっくりいぶす。何もないキャンプ地では、転がる石を集め、たき火台を組み上げるところから料理は始まる。といっても心配ご無用。日本に鍋奉行が居るように、この国にはアサードマスターが存在する。肉の世話は彼らに任せ、マテ茶をたしなみながら、仕上がりをゆっくりとマテばよい。結果、ほどよい空腹と氷河をのぞむ絶景の中でいただくバーベキューは、控えめに言って最高だった。