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「日本の仮面」という問い

全国各地の祭りや芸能に登場する仮面を見ると、その造作や用い方などに、地域ごと、時代ごとのさまざまな違いがあり、2つと同じものはないほどである。さらに、昭和30年代以降、テレビやマンガで人気を博した月光仮面などの仮面ヒーローや、現在も各地のプロレスで活躍している仮面レスラーのマスクを含めれば、多様性はいっそう際立ってくる。そうなると、「日本」の仮面とはなにか、「日本」という領域に存在する多種多様な仮面全体を包括的にとらえた場合、どのような理解が可能かといった疑問がわいてくる。

また、人びとは、芸能や祭りにおいて仮面をつけた役をみると、仮面をつけた人の演技ではなく、仮面が表す存在そのものの出現とみてしまうのではないだろうか。それが、人が仮面をつけて一時的にふんした仮の姿でないとすると、仮面の「仮」の字はいかにもそぐわない。能の「面(おもて)」、奥三河の花祭の「面形(おもてがた)」のように、実際に各地で仮面を用いて芸能や祭りを演じる人びとが、仮面を「仮面」とは呼ばないことも、おそらくそれと無関係ではない。仮面が「仮」の「面」でないとすると、「仮面」は一体なんなのかをあらためて考えてみる必要があるように思われる。

特別展「日本の仮面-芸能と祭りの世界-」の準備を進め、多くの仮面に接するにつれて、そうした問いを強くいだくようになった。今回の展示では、全国各地の多種多様なたくさんの仮面が一堂に会する。せっかくの機会である。それらの仮面を材料として、「日本の仮面」という問いについてもう一度考えてみようと思う。

笹原亮二(国立民族学博物館教授)

関連ウェブサイト

国立民族学博物館 みんぱく創設50周年記念特別展「日本の仮面――芸能と祭りの世界」



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