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寄食という生き方―埒外の政治-経済の人類学 ★

館外での出版物

書名 寄食という生き方―埒外の政治-経済の人類学
著者名 内藤直樹・森明子
出版社 昭和堂
発行年月日 2025年3月31日
判型・体裁 A5版
頁数 412頁
ISBN 9784812224168
定価 5,720円(税込)
研究成果 共同研究成果:
カネとチカラの民族誌:公共性の生態学にむけて(2018.10-2023.3)

主題・内容

本書は、従来の政治や経済の論理をはみ出た<埒外>の存在である<寄食者>を断罪するのではなく、彼らの論理や実践に目を向け様々な価値観に開かれた理解を目指しています。そして困難を抱える人々を支援する制度の<埒外>に位置づけられがちな営みのなかに潜む社会的創発の可能性を探究しました。

おすすめのポイント、読者へのメッセージ

本書は「寄食」=しばしば主の許可なく「傍らで食べる」ことに関わる古今東西の営みを比較した寄生・依存の人類学的研究です。そうすることで本書は、オルタナティブなケアの可能性を、それ必要とする者の視点から構想しています。

書評等での紹介

沢山美果子, 2025, 『文明動態学研究』vol.4, 岡山大学文明動態論研究所

目次

はじめに――寄食という視点について(森明子)

序章 「埒外の政治-経済」の人類学――公共性のエコロジー(内藤直樹)

【第I部 スキマをとらえる】
第1章 スズメが寄宿する都市――インフラストラクチャーと鳥類の関係(三上修)
第2章 ギャンブルと飲酒の場所づくり
    ――オーストラリア先住民社会における『福祉』(飯嶋秀治)
第3章 幸運なすれ違いがつくる場所――チリの先住民医療の現場から(工藤由美)
第4章 排除された人々が生み出す社会
    ――新宿の段ボール小屋集落に注目して(北川由紀彦)
第5章 物音と逃奔、そして帰還――ハウジング・オンリーの抑圧(山北輝裕)

【第II部 寄食がつくる経済】
第6章 寄食者(パラジット)の共生
    ――東京都北区における障害者運動とだめ連の遭遇について(深田耕一郎)
第7章 聖なる共住の場――近代ドイツにおける慈善施設のケア空間(中野智世)
第8章 布施がつくる『開発』
    ――タイの仏法センターにおける移民・難民の出家について(岡部真由美)
第9章 うろんな歓待
    ――フィンランドのフードバンクにみる「公正」な分配のエコロジー(高橋絵里香)
第10章 これといった用のない「訪問者」
    ――ブッシュマン観光ロッジを行き交う人々(丸山淳子)

【第III部 公共空間のゆくえ】
第11章 ぎこちないランドスケープ
    ――オーストリアの家族農業とEU共通農業政策(森 明子)
第12章 国有林森林鉄道と地域住民の絡まりあい
    ――高知県東部・魚梁瀬森林鉄道を事例に(岩佐光広・赤池慎吾)
第13章 捨て子の生と公共空間――近世の捨て子の現場から(沢山美果子)
第14章 難民キャンプのエコロジー
    ――地勢と難民・紛争と観光・支援と環境の結びつき(久保忠行)
第15章 難民がつくる都市――サハラ以南アフリカにおける難民の経済活動(内藤直樹)

【第IV部 異種の出会い】
第16章 海と毒――多種の出会い、多重のスケール(木村周平)
第17章 地球への薬効――薬用植物から考える公共空間の生態学(モハーチ ゲルゲイ)
第18章 ほどく、たかる、すまう――自己攻撃時代の生の哲学(藤原辰史)

おわりに――「何の変哲もない暮らし」のエコロジー(内藤直樹)