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モーリタニア料理を食べに行こう!〜セネガル〜

セネガル北部の地方都市ルーガを訪れた際、モーリタニア料理を提供するレストランに出くわした。国道沿いに最近開店したそのレストランは「ハイマ・ナール」という名で、ウォロフ語で「アラブ系のテント」を意味する。

モーリタニアはセネガル川の北側に位置し、アラブ系とアフリカ系の人びとが共存する国だ。川を挟んだセネガルとは歴史的に往来があり、文化的にも共有する部分は多いものの、1989年にはセネガル・モーリタニア紛争も経験している。こうした背景と関係があるかは定かではないが、私はこれまでセネガル各地で調査を続ける中で、モーリタニア料理を提供するレストランに出会ったことはなかった。

店内に入ると床一面に絨毯が敷かれており、客は床に座して食事をとる。セネガルの一般的なレストランはテーブル席が基本だが、この店はモーリタニアに多く暮らす遊牧民たちの生活様式を思わせるものだった。その日のメニューは、チェブヤップだった。セネガルにも同名の料理があり、油で揚げ煮した肉を香味野菜やスパイスで煮込み、その出汁で米を炊いたものだ。一方、この店で提供していたチェブヤップは油で揚げ煮した肉を使った米料理であることは共通しているものの、塩とコショウを中心とした素朴な味付けであった。派手さはないが、肉の旨味がしっかりと感じられた。

食後には、ズリグという飲み物が提供された。ズリグは凝乳を水で割り、レモンと砂糖で味を整えたものである。油っぽい米料理のあとに飲むと、胃にやさしく、すっきりとした清涼感が広がった。この店のズリグは牛乳で作られていたが、モーリタニア人たちはラクダの乳でもズリグを作るらしい。ラクダの乳もちょうど販売されていたので試しに飲んでみると、ほのかな塩味とコクがあり、こちらもまたおいしい。モーリタニア文化の一端に触れながら、私は川の向こうに広がる砂地と、そこでの暮らしに思いを馳せた。

池邉智基(国立民族学博物館助教)



関連写真

モーリタニア風チェブヤップ。羊肉とジャスミンライスをシンプルに味付けしたもの
(筆者撮影、セネガル、2025年)

 

食後に飲むズリグ(筆者撮影、セネガル、2025年)