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シルクロードの滋味 ウズベキスタンのレーズン、クルミ

2026年2月2日刊行
寺村裕史(国立民族学博物館准教授)

中央アジアの国、ウズベキスタンの名産品と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。色鮮やかな陶器、一般的にスザニとよばれる美しい刺しゅう布、伝統的な織物のアトラスなどが特に有名だろう。これらに加え、食べ物では、バザールで必ず目にするのがブドウやアンズといった果物や、クルミ、ピスタチオなどのナッツ類である。中央アジアは乾燥したステップ気候で、長い日照時間もあり、果物を乾燥させたドライフルーツはお土産としても人気が高い。

その中でも筆者のおすすめは干しブドウ(レーズン)とクルミだ。ウズベキスタン産のレーズンはジューシーで甘みが濃く、味わい深い。クルミは、ほのかな甘みと薄皮由来の渋みが特徴で、ローストするとカリッとした食感が味わえる。クルミは漢字で「胡桃」と書き、「胡」は異民族や外国を意味する。ペルシアからシルクロードを通じて中国、日本へと伝わったとされ、シルクロードを行き交った商人たちの保存食の一つでもあったという。

バザールにて山積みで売られているレーズンやクルミ
=ウズベキスタンのサマルカンドで2022年10月、筆者撮影
バザールにて山積みで売られているレーズンやクルミ
=ウズベキスタンのサマルカンドで2022年10月、筆者撮影

2023年にユネスコ世界遺産に登録された「シルクロード ザラフシャン・カラクム回廊」には34の遺跡や建築が含まれる。その一つが日本・ウズベキスタン共同調査隊が発掘するカフィル・カラ遺跡である。同遺跡は8世紀初頭の火災で焼けたと推定されているが、シタデル(城塞じょうさい)の食糧庫と考えられる部屋から炭化したクルミが出土している。カフィル・カラ遺跡は、シルクロードの文化交差路として有名なサマルカンド中心部から南東約10キロの場所に位置しており、6~8世紀ごろを中心にシルクロード交易で活躍したソグド人の王の離宮という説が有力な遺跡だ。当時のソグド商人たちもクルミを食べ、また商品として運んでいたのだろうか。

こうした歴史や文化を紹介するため、国立民族学博物館では3月19日から特別展「シルクロードの商人(あきんど)語り―サマルカンドの遺跡とユーラシア交流―」を開催する。本展では「商人」をキーワードに、古代遺跡から出土した考古遺物、現代の刺しゅう・織物・楽器・民族衣装、宗教や信仰に関する資料など、シルクロードを行き交った文物を商人の活動に焦点を当てて展示する。中央アジアにおける文化の多様性と広範な交流・交易の実態を視覚的に紹介することが目的だ。

展示の終章「現代に生きるシルクロードの遺産」では、ウズベキスタン産レーズンやクルミを輸入し日本国内で販売する企業を紹介し、その協力を得てミュージアムショップでも購入できるよう計画している。おすすめの食べ方はレーズンとクルミを一緒に口に入れること。レーズンの甘みとクルミの歯ごたえが絶妙なハーモニーを生む。展示資料の鑑賞だけでなく、ショップでの購入を通じて味覚も楽しめるこの機会に、ぜひ足を運んで現地の味も体験してほしい。

関連ウェブサイト

特別展「シルクロードの商人(あきんど)語り―サマルカンドの遺跡とユーラシア交流―」