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海外フィールド経験のフィードバックによる新たな人類学的日本文化研究の試み

研究期間:2020.10-2023.3

代表者 片岡樹

キーワード

国外フィールドワーク、 ホームに帰る人類学、 日本

目的

本共同研究の目的は、国外フィールドでの民族誌的経験を通して、文化人類学による日本社会/文化理解の新たな視角を提案することである。我が国における文化人類学は、戦後しばらくまでの時期を除けば、主に国外フィールドにもとづく異文化理解の学として発展してきた。異文化理解とは異文化を自文化と参照する営為であるため、それは必然的に一種の自文化論となる。ただしこの自文化論はほとんどの場合、研究者自身にとってもじゅうぶんに意識化されることはなく、あくまで民族誌の行間に埋め込まれている。しかし実際には、梅棹忠夫や佐々木高明、中根千枝の例が示すように、日本の人類学には、海外ですぐれた民族誌的研究を行ってきた人類学者が日本文化に関するユニークな仮説を提案するという良質な知的伝統が存在する。本共同研究では、そうした伝統を新たに継承すべく、国外での民族誌的研究の経験を重ねてきた研究者たちが、暗黙裡の参照項として措定してきた日本文化を対象化することで、国外フィールド発の日本研究の新たな可能性を提示したい。

2021年度

【館内研究員】 飯田卓、平井京之介
【館外研究員】 市野澤潤平、川瀬由高、川田牧人、桑山敬己、黄潔、島村恭則、清水展、中谷文美、中村昇平、平野美佐、松村圭一郎
研究会
2021年11月20日(土)13:00~17:00(国立民族学博物館 大演習室 ウェブ開催併用)
桑山敬己(関西学院大学)「『ethnographic reading in reverse/民族誌の逆さ読み』(2004/2008)とその後」
川田牧人(成城大学)「我が事としてみる/他所事のようにみる」
総合討論:今後の進め方について
2022年1月30日(日)13:00~18:00(国立民族学博物館 第6セミナー室 ウェブ開催併用)
島村恭則(関西学院大学)「なぜ私は民俗学者なのか?」
黄潔(名古屋大学)「国東の鬼から観る、考える」
菅豊(東京大学)「アヒルを食べない日本人、カモ食べない中国人―東アジアの技術と所有と自然観」
総合討論
2022年3月11日(金)13:00~18:00(国立民族学博物館 第6セミナー室 ウェブ開催併用)
平野美佐(京都大学)「カメルーンから沖縄へ:貨幣を通してみえるもの」
休憩
松村圭一郎(岡山大学)「『地域研究』に抗する人類学:ホームとフィールドの往復から」
休憩
内藤直樹(徳島大学)「誰にむけて語るのか:アフリカ研究者が日本の世界農業遺産申請に関与した経験」
休憩
総合討論


2020年度

本研究は、これまで主に海外で調査を行い、現在では日本の研究にも着手している人類学者を中心に組織するが、しかし海外フィールドと国内フィールドの往還から日本研究への新たなアプローチをさぐる、という本研究を遂行する上では、それに加えさらに
A)日本で自文化研究をする外国出身研究者
B)海外で日本研究に従事した経験をもつ日本人研究者
C)日本研究から始めて海外調査にも着手し始めた研究者
の視点を補うことが有効である。そのためメンバーの一部にA)B)C)それぞれの分野を担う研究者を加え、また必要に応じて該当する分野のゲスト講師を研究会に招聘する。
本研究に関する研究会は、初年度に2回、第二年度と第三年度にはそれぞれ4回ずつ、合計10回の実施を予定する。
初年度の研究会では、海外フィールド調査の経験を日本研究に適用するにあたっての基礎的な問題関心を共有する。海外の視点を経由させた日本文化研究は、実際には岡正雄にはじまり梅棹忠夫、佐々木高明など多くの研究蓄積を有している。またこの文脈では、海外の人類学者による日本研究も参考になるであろう。初年度は、これらの研究群の得失を検討することで、本共同研究が依拠する理論的立場を明らかにし、共有する。

【館内研究員】 飯田卓、平井京之介
【館外研究員】 市野澤潤平、川瀬由高、川田牧人、桑山敬己、黄潔、島村恭則、
清水展、中谷文美、中村昇平、平野美佐、松村圭一郎
研究会
2021年2月23日(火・祝)13:00~18:00(国立民族学博物館 第6セミナー室 ウェブ会議併用)
片岡樹(京都大学)「全体趣旨」
清水展(関西大学)「横須賀ネイティブの自文化=自分化(?)グラフィーという企て」
片岡樹(京都大学)「逆さ読みの日本論へ」
全体討論
研究成果

本年度は初年度ということもあり、2月23日に第一回のキックオフミーティングをハイブリッド形式で行った。同研究集会を通じ、メンバー間の問題意識の共有を行うことができたのは、次年度につながる成果ということができる。また当日の討論からは、海外フィールドを経由させた「自文化語り」や「民族誌の逆さ読み」が、海外フィールド経験者の視点からの日本論への切り口として一定の有効性があることが確認された。これらはいずれも、異文化のフィールドで日本との意外な共通点を発見することで、自文化に再び同一化を図るというベクトルによるアプローチである。それとは反対の極として、日本を異文化として発見し、異文化研究で培ったツールを適用するというアプローチもあり得るだろう。次年度以降は、この二つの極を念頭に、さらに討論を深めていく予定である。