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モンゴル仏教のグローカル実践に関する学際・国際的地域研究(2016-2022)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|基盤研究(A)

代表者 島村一平

2020年4月1日転入

目的・内容

本研究はモンゴルのみならずインド、中国、アメリカなどを舞台にグローカルに展開されているモンゴル仏教の実践を、特に「転生活仏」誕生のポリティクスに焦点を当てて明らかにすることを目的とする。モンゴル仏教はチベット仏教に属しながらも独自の経典や呪術的な宗教実践を生み出してきた。かつて清朝時代モンゴル高原には清朝公認・非公認の転生活仏が数十人いたが、こうした転生活仏が現在、次々と誕生している。中にはアメリカに「転生」しているケースすらある。そもそも活仏はインドのダライラマ法王庁の認定を必要とするが、モンゴルのローカルなポリティクスが深く関わっている。そこで従来の神秘主義的な説明とは異なる活仏誕生の現実を学際的(現在・歴史・他宗教との関わり)国際的(多拠点調査)に明らかにしていくものとする。

活動内容

2022年度活動報告

本研究はモンゴルのみならずインド、中国、アメリカなどを舞台にグローカルに展開されているモンゴル仏教の実践を、特に「転生活仏」誕生のポリティクスに焦点を当てて明らかにすることを目的とする。モンゴル国では、かつて清朝時代に存在した転生活仏が現在、次々と誕生している。そもそも活仏はインドのダライラマ法王庁の認定を必要とするが、モンゴルのローカルなポリティクスが深く関わっている。そこで活仏誕生の現実を学際的(現在・歴史・他宗教との関わり)国際的(多拠点調査)に明らかにしていくものとする。2021年2月に 科研の総まとめとして、オンライン・コンファレンス「(仮)グローカルに展開するモンゴル仏教」を開催する予定であったが、コロナ禍の中、2021年12月に再設定した。しかしこれもコロナ禍の中、実施できず、開催を2022年度に順延することとした。2022年12月17日、18日に国際シンポジウム「現代モンゴルにおける仏教実践と化身ラマ(Buddhist Practices and Reincarnated Lamas in Contemporary Mongolia)」を国立民族学博物館にて開催した。モンゴル科学アカデミーのミャグマルサンボー教授、ビャンバラグチャー研究員、モンゴル国立大学のヤンジンスレン教授のほか、高位の活仏であるジョナン・ハンチェン活仏およびモンゴル仏教総本山ガンダン寺の仏教研究所上級研究員のアムガラン・ラマを招へいした。科研のメンバーの松川節大谷大学教授、滝澤克彦長崎大教授、別所裕介駒沢大学准教授も発表を行った。報告者は新型コロナウィルスに感染し自宅待機であったが、オンラインで趣旨説明および発表を行った。このシンポジウムの成果は、『国立民族学博物館研究報告』に特集号を組んで発表する予定である。そのために年度内にモンゴルの研究者の発表原稿の翻訳作業を終わらせている。

2021年度活動報告

2020年度補助事業実施

2020年度活動報告

2020年度事業継続中

2019年度活動報告(研究実績の概要)

本研究はモンゴル、インド、中国、アメリカなどを舞台にグローカルに展開されているモンゴル仏教の実践を、特に「転生活仏」誕生のポリティクスに焦点を当てて明らかにすることを目的としている。現在、モンゴル高原では転生活仏が現在、次々と誕生している。そこで活仏(化身ラマ)誕生を巡るポリティクスを学際的・国際的に明らかにしていくものとする。
2019年度は、4月に島村と研究協力者のJ.ルハグワデムチグ(モンゴル国立大講師)はスイス・ハンガリーにおいて調査と学会発表を行った。まずスイス・ヴィヴェイ市のラブテン・チョイリン寺院にて、ラマ僧への聞き取り調査および参与観察を行った。またベルン大学が主催した国際ワークショップ(2019年4月23日)にて招待講演を行った。ハンガリーにおいても、モンゴル系の仏教寺院の参与観察を行ったほか、エトヴェシュ・ローランド大学と国際モンゴル学会が共催した国際シンポジウム(2019年4月25日~26日)にて学会発表を行った。別所は、チベット―モンゴルの2つの文化が複合した中国青海省でモンゴル人によって支えられてきた化身ラマの実践を実地調査した。
また滝澤は、2019年11月に、在米モンゴル人社会における仏教の活動実態をシカゴおよびオークランドにおいて現地調査した。特にオークランドでは、モンゴルの言葉や文化を教えるモンゴル学校とモンゴル仏教の化身ラマ、アジャ・リンポチェとの関わりを分析し、アメリカにおけるモンゴル人の民族意識の形成に果たしている仏教の役割について明らかにした。松川は、2020年1月に研究協力者のB. ツォクトバータル(モンゴル科学アカデミー考古研究所研究員)を日本に招聘し,モンゴル国ヘンティ県における活仏とその住座寺院(特に大ブルカン・カルドゥン山周辺の寺院)についての共同研究を行った。
趙は今までのデータを整理し、内モンゴル調査への道筋を立てた。

2019年度活動報告(現在までの進捗状況)

本年度の12月までは、順調に進んでいた。フィールドワークで明らかになった知見を国内外の学会やワークショップで発表できている。また論文の成果も順調に上がってきている。しかし2019年の秋に台風による関西空港の閉鎖や2020年2月から新型コロナウィルスのまん延が2020年2月に始まったことを受け、2020年2-3月予定していた海外調査は、順延せざるを得なくなった。

2018年度活動報告(研究実績の概要)

本研究はモンゴルのみならずインド、中国、アメリカなどを舞台にグローカルに展開されているモンゴル仏教の実践を、特に「転生活仏」誕生のポリティクスに焦点を当てて明らかにすることを目的としている。かつて清朝時代モンゴル高原には清朝公認・非公認の転生活仏が数十人いたが、こうした転生活仏が現在、次々と誕生している。そこで従来の神秘主義的な説明とは異なる活仏誕生の現実を学際的・国際的に明らかにしていくものとする。
2018年度は、島村は8月にモンゴル国においてモンゴル国立大やモスクワ大の研究協力者とともにフィールドワークを行い、反ダライ・ラマ勢力であるシュグデン派の化身ラマ(活仏)であるザワー・ダムディン氏やアマルバヤスガラン寺院のアグワン・イシサンボー活仏に面会し聞き取り調査を行った。また彼らが行っている招福儀礼の観察調査も行った。松川は同じく、モンゴル国バヤンホンゴル県にて活仏の仏教寺院(ラミン・ゲゲーン寺院,ガチェン・ラマ寺院,チンセジグト・ノモンハン寺院)の現地調査を行った。小長谷は、台湾においてかつて内モンゴルにおいて序列第一位で後に台湾に亡命した章嘉活仏(ジャンジャホトクト)にかかる調査に従事した。滝澤は、前年度に引き続き活仏アジャ・リンポチェの活動のほかに台湾においてモンゴル活仏にかかる調査をした。趙も引き続き中国内モンゴルで調査を行っている。
成果としては、4月に『季刊民族学』164号において「モンゴル仏教と化身ラマ」という特集号が組めたのは大きな成果であった。またそれぞれのメンバーが国際学会や国内学会で発表を行ったり、論文やエッセイを執筆し発表した。興味深いことに活仏の調査を通じて社会主義時代のモンゴルにおいて仏教実践が単純に抑圧されていたのではなく、呪術的な実践として維持されていたことが明らかになってきたのも大きな成果であり、本年度中に論文として発表した。

2018年度活動報告(現在までの進捗状況)

それぞれのメンバーが異なるアプローチを採用しながらも有機的に研究目的に肉迫しつつあり、学会発表も行っているし論文化もしていることからおおむね順調に進展しているといえよう。

2017年度活動報告(研究実績の概要)

本年度は、調査としては、モンゴル国にて活仏のライフヒストリーの聞き取り調査を行った。またインドの北部のダライラマ法王の座するダラムサラや、ニューデリー、ワラナシ、ブッダガヤ他においてモンゴル仏教のグローバルなネットワークと活動の実態について現地調査を行った。そこでチベット・モンゴル仏教の将来を担う若手僧侶が少しずつ、モンゴル人へと移っている様相が観察された。中国内モンゴルの東部(庫倫旗)と西部(シレート召、昭化寺、チャガリグル)においても調査を行った。この調査では、活仏の活動および活仏に関する宗教文化資源がいかに運営されているか、という関心のもとに寺院組織についてフィールド調査した。従来、モンゴル仏教の寺院の大きな組織のなかで活仏を支えるシステムが存在し、現在その組織に大きな変化訪れていることが分かった。
一方、日本の東京、大阪等においてもモンゴル仏教の化身ラマ(活仏)、アジャ・リンポチェのグローバルな活動に関する参与観察調査を行った。
研究実績としては、2017年11月18日に滋賀県立大学で催された日本モンゴル学会秋季大会において「特別セッション:現代モンゴルにおける仏教実践の諸相」を組織した。代表者である島村のほか、分担者の趙、海外研究協力者のハグワデムチグ(モンゴル国立大)、ルスタム・サビロフ(モスクワ大学)が発表した。
個別の発表としては、ハンガリー、モンゴル、日中社会学会などで発表を行ったほか、論文も順調に生産されている。また海外共同研究者のJadamba Lkhagvademchig氏(モンゴル国立大・専任講師)が代表者の本務校である滋賀県立大学において、本科研のテーマに合致するテーマである「現代モンゴル仏教教団内部の政治に関する歴史人類学的研究」で論文博士号を取得したのも成果のひとつである。

2017年度報告(現在までの進捗状況)

29年度は、活仏誕生を巡るグローバルなネットワーク構築やポリティクスを中心に調査するものとしていた。当初はインドおよびアメリカを予定していたが、研究上の必要性に応じてインド、日本、モンゴル、内モンゴルなどと調査地を少し変更したが、十分な研究データを蒐集できた。また、十分な成果も出ていることからおおむね順調に進展していると判断した。

2016年度活動報告(研究実績の概要)

本研究はモンゴルのみならずインド、中国、アメリカなどを舞台にグローカルに展開されているモンゴル仏教の実践を、特に「転生活仏」誕生のポリティクスに焦点を当てて明らかにすることを目的とする。かつて清朝時代モンゴル高原には清朝公認・非公認の転生活仏がいたが、こうした活仏が現在、次々と誕生している。そもそも活仏はインドのダライラマ法王庁の認定を必要とするが、モンゴルのローカルなポリティクスが深く関わっている。そこで従来の神秘主義的な説明とは異なる活仏誕生の現実を学際的かつ国際的(多拠点調査)によって明らかにしていく。本研究は、第一に国際的研究競争の第一線に位置しているという点、第二に学際研究である点、第三にモンゴルを対象とした地域研究であるが、インド・中国・アメリカなどに跨った現象を対象とする「グローバルな地域研究」という点において意義深い。
2016年度は、まずモンゴル国において、総本山ガンダン寺(ウランバートル)、ザイ活仏が誕生したアルハンガイ県やナロワンチン活仏ジャルハンズ活仏を擁するザブハン県において、社会主義時代の活仏信仰の実践や活仏誕生のプロセスに関するフィールドワークを行った。次に中国内モンゴルにおいて 四子王旗のシラムレン寺やフフホトのラマ洞召、包頭のメルゲン・ゲゲン寺、青海省などにて活仏に関する生活史、文革期の宗教粛清や寺院再建活動などについて調査・資料収集を行った。さらにアメリカにおいては、インディアナ州ブルーミントンにあるチベットモンゴル仏教文化センターにて催されたセンター設立10周年記念イベントに参加し、在米モンゴル人の宗教ネットワーク活動の一端を明らかにした。また、中国北京市およびロシア連邦サンクトペテルブルク市にも調査の翼を広げ、モンゴル仏教寺院と活仏の現状について研究活動を行った。またの他の科研と共催で滋賀県立大にて国際ワークショップを開催した。

2016年度活動報告(現在までの進捗状況)

初年度は、モンゴル国、中国内モンゴル自治区、中国青海省を対象地域として研究目的1)の「ローカルな力と富をめぐるポリティクス」および2)の「他宗教とのせめぎあい」を中心に調査する。分担者がそれぞれの担当地で調査を行う予定としていた。時間的制約からモンゴル東部地域への調査ができなかったものの、29年度に調査予定であったアメリカや新規に重要性が確認されたロシアに関しても調査が行われたという点において、おおむね順調に進展しているといってよい。