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ミクロネシア-南琉球の比較分析による初期人類の島嶼適応戦略の解明(2020-2022)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|特別研究員奨励費

代表者 山極海嗣

目的・内容

本研究は、ミクロネシアを含むリモート・オセアニア地域と日本列島の南琉球地域における先史時代で確認された「土器利用文化の喪失」や「貝器(貝斧)利用文化の発達」という共通する文化的現象を研究対象とし、考古学的データと民族学的データを用いた比較分析によって、その背景ある人間行動や文化形成メカニズムについて検証する。考古学的データの分析では、オセアニア・南琉球の両地域に確認される土器利用の喪失や貝器利用の発達における共通性・相違性を考古学的な型式学的分析や理化学的分析・数理統計的解析によって比較分析し、その上で、こうした人間行動に関わる民族学的な記録や観察データを援用することで文化現象を人間行動として復元することで、両地域間の文化接触の可能性に加え、こうした地域間の文化的現象の類似が島嶼地域に居住した人びとが選択する環境適応として理解できる事象なのかどうかを総合的に検証する。

活動内容

2020年度実施計画

本年度はミクロネシアの考古学的データに基づく分析と南琉球との比較を実施し、ミクロネシアでの発掘調査による考古学的データの獲得・既存の発掘調査記録からのデータ収集・資料の観察調査を通して、先史時代のミクロネシアと南琉球における共通の文化的現象の考古学的データの共通性や相違性を検証する。そのため、ミクロネシアにおける発掘調査・現地調査に関わる旅費を計上し、調査に必要な機器やソフトウェア・関連文献の購入費を計上した。また、発掘調査などで獲得した土器資料は以前に応募者が琉球大学で構築した独自の理化学的分析手法を用いて解析し、この際に南琉球に関する補足的な調査も実施するため、これに関わる機器利用費・資料輸送に関わる備品費と沖縄への旅費を計上した。なお、こうした調査・研究成果は本年度から国際的な論文雑誌への投稿を積極的に目指すため、論文投稿やその英文校閲に関わる費用も計上した。
しかしながら、本年度は世界的な新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、計画時点で調査予定のフィールドへの渡航制限がかけられいる状況にあり、今後の制限解除の見通しが立っていない。そこでフィールドに行けない場合は文献データの収集分析や、2年目以降に行う予定であった国立民族学博物館での収蔵品調査を前倒しして行うなど、本年度は状況に応じて柔軟に対応する。