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ポピュラー音楽と国軍の関係からみる現代インドネシアの文化と民主政治(2021-2024)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|若手研究

金悠進

目的・内容

研究の概要

本研究は、インドネシア国軍の役割に着目し、同国におけるポピュラー音楽の歴史的発展過程とその政治的背景を解き明かす。具体的には、ロック音楽の地方巡業における軍ビジネスや軍用地のライブ会場への転用など、音楽活動の具体的な「場」に、国軍がいかなる役割を果たし、それに対し音楽実践者がいかに対峙してきたかを中心に考察する。その考察の過程で、一見すると文化表現を抑圧する国軍が、じつは音楽文化の発展に寄与している可能性を提示する。同時に、本考察を通じて、民主主義時代になぜ非民主的な構造が温存されているのかを、音楽実践者たちの政治権力への依存構造から解明していく。

研究の目的

本研究は、インドネシアを事例に、スハルト権威主義体制から現在の民主主義期におけるポピュラー音楽の発展過程を、地方巡業や基地などの「場」における軍の役割に着目して考察することを目的とする。その考察の過程で、一見すると文化表現を抑圧する国軍が、じつは音楽文化の発展に寄与している可能性を提示する。さらには、単なるインドネシアの戦後大衆文化史の叙述にとどまらない、ポピュラー音楽実践からみる同国の現代政治構造の分析、そして従来の米軍基地文化論を乗り越える、新たなアジア比較文化・政治研究に地平を拓く。

活動内容

2022年度実施計画

今後は、引き続き文献調査およびオンラインを通じた研究会やインタビューを行う。その上で、COVID-19の拡大が収束し次第、インドネシアへ渡航し、音楽イベントの参与観察やミュージシャンへのインタビュー調査を行いたい。

2021年度活動報告(研究実績の概要)

本研究は、インドネシアを事例に、スハルト権威主義体制から現在の民主主義期におけるポピュラー音楽の発展過程を、軍の役割に着目して考察することを目的とする。本考察を通じて、1998年の体制崩壊と民主化が同国のポピュラー音楽文化に与えた影響だけでなく、民主主義時代になぜ非民主的な構造が温存されているのかを、音楽実践者たちの政治権力への依存構造から解明していく。
具体的には、ミュージシャンの公演において軍ビジネスがいかに絡んでいるのか、あるいは軍用地のライブ会場への転用などを通じてミュージシャンたちは軍権力といかに対峙しているのかを分析する。その考察の過程で、スハルト権威主義体制から民主主義期にわたり「文化表現の抑圧者」とみなされてきた国軍が、じつは音楽文化の発展を下支えする役割を果たしている可能性を提示する。これは単なるインドネシア大衆文化史の記述にとどまらず、ポピュラー音楽実践からみる同国の現代政治構造の分析、そして〈文化と政治〉の普遍的議論へと向かい、新たな比較文化・政治研究に地平を拓く。

2021年度活動報告(現在までの進捗状況)

COVID-19拡大を受け、一年目に予定していたインドネシアでの調査が不可能となり、主な研究活動は、国内での文献調査や、インターネットを通じた情報収集に限定された。とはいえ、本研究のたたき台として〈研究ノート〉を投稿し、学術誌に掲載されたという意味では、やや遅れながらも、部分的に進んでいるところもある。