Select Language

宮古語諸方言の言語記録のための基礎的研究とデータ収集(2016-2021)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|若手研究(B)

林由華

★2021年1月1日転入

目的・内容

本研究の目的は、消滅の危機にある南琉球宮古語について、豊かな方言バリエーション全体を記録保存するためのデータ収集、および記録のための社会言語学的基盤、電子公開の基盤の整備である。宮古語の方言は数十あるとも考えられるが、実際に話者が区別しうる方言数はどのくらいあるのか、それがどのような区分を成しているのかについては、明らかでない。本研究は、そのような話者の言語意識に基づく方言区分・方言数を明らかにしてその記録の単位を割り出すとともに、それぞれの方言についての動画による談話資料を収集し、共有のために電子公開を行う。

活動内容

2021年度実施計画

①言語意識に基づく方言区画の聞き取り調査や③動画収録、アノテーションの確認については、コロナ禍の状況次第で実行可能性が変わってくる。このため、次年度においては、現時点で可能なデータについての②ウェブサイトでの公開作業を完成させる作業、ウェブサイトの情報を充実させる作業を優先的に行う。また、公開箇所以外のアノテーションの整備、データ整理を進め、アーカイビングセンターへのデポジット準備も、残りのデータ収集に先駆けて済ませる。そのうえで、渡航調査が可能になり次第、①および③を可能な限り進めることとする。

2020年度活動報告(研究実績の概要)

本研究は、①言語意識に基づく方言区画の聞き取り調査、②ウェブサイト(「みゃーくの方言―宮古語諸方言の記録―」http://miyakogo.ryukyu)でのデータ公開、③話者コミュニティとの共同での記録・コンテンツ作成 を行うが、本年度はコロナ禍に伴う出張や打合せなどの困難により、特に①および③を進めることができなかった。②については、既に収録分の公開予定データのアノテーション、公開許可を取っている分のデータ公開、および、アーカイビングへの準備として、収集データ内で本研究期間に公開予定ではない箇所のアノテーションも進めた。②③について、地域コミュニティ(高等学校)と協働での方言記録保存活動としての報告を、学会において発表することになっている。
本年度は繰越したうえでの最終年度だったが、再繰越を行い、次年度に状況に応じて可能な範囲でこれらの作業を行う。

2020年度活動報告(現在までの進捗状況)

前前年度までは代表者の出産育児による研究中断・渡航困難により研究に遅れがあったため、繰越を行っていたが、前年度はコロナ禍の影響により、それらの遅れ分の作業の大部分が推進不可能であった。データ公開やアノテーションの作業については進められているが、予定していた最終年度としての作業の大部分ができなかったため、「遅れている」の区分とした。

2019年度活動報告(研究実績の概要)

本研究の目的は、消滅の危機にある南琉球宮古語について、豊かな方言バリエーション全体を記録保存するためのデータ収集、および記録のための社会言語学的基盤、電子公開の基盤の整備である。宮古語の方言は数十あるとも考えられるが、実際に話者が区別しうる方言数はどのくらいあるのか、それがどのような区分を成しているのかについては、明らかでない。本研究は、そのような話者の言語意識に基づく方言区分・方言数を明らかにしてその記録の単位を割り出すとともに、それぞれの方言についての動画による談話資料を収集し、共有のために電子公開を行う。
昨年度に引き続き、①言語意識に基づく方言区画の聞き取り調査、②ウェブサイト(「みゃーくの方言 ―宮古語諸方言の記録―」http://miyakogo.ryukyu)でのデータ公開、③話者コミュニティとの共同での記録・コンテンツ作成を進めたが、①②については代表者の出産育児による研究中断に伴う渡航や時間的制限により数件に留まり、本研究で計画していた作業を完了できていない。③については、新たに3地点(佐良浜、大神、西里添)での収録を行い、アノテーションを進めた。
本年度は当初予定の事業期間最終年度であったが、2018年度および2019年度に研究推進困難期間があり、研究計画の一部が実施できていないため、事業期間を来年度まで延長してこれらを完了させる。

2019年度活動報告(現在までの進捗状況)

今年度は当初予定の最終年度だったが、実績概要にも述べたように、前年度に引き続き代表者の出産育児による研究中断・渡航困難時期があったため、計画通りの調査及び作業を完了できてない。このため、事業期間を一年延長することとしている。具体的には、①言語意識に基づく方言区画の聞き取り調査、②ウェブサイト(「みゃーくの方言 ―宮古語諸方言の記録―」http://miyakogo.ryukyu)でのデータ公開、③話者コミュニティとの共同での記録・コンテンツ作成のうち、特に①について、実地調査が20%ほど残っている。③については、残り1地域の収録と今年度収集したデータのアノテーションを含むコンテンツ作成、②についてはそれらのデータ公開承諾のための打ち合わせやアップロード、ウェブページの整備の作業などを残している。

2018年度活動報告(研究実績の概要)

本研究の目的は、消滅の危機にある南琉球宮古語について、豊かな方言バリエーション全体を記録保存するためのデータ収集、および記録のための社会言語学的基盤、電子公開の基盤の整備である。宮古語の方言は数十あるとも考えられるが、実際に話者が区別しうる方言数はどのくらいあるのか、それがどのような区分を成しているのかについては、明らかでない。本研究は、そのような話者の言語意識に基づく方言区分・方言数を明らかにしてその記録の単位を割り出すとともに、それぞれの方言についての動画による談話資料を収集し、共有のために電子公開を行う。
本年度は、①言語意識に基づく方言区画の聞き取り調査、②ウェブサイト(「みゃーくの方言 ―宮古語諸方言の記録―」http://miyakogo.ryukyu)でのデータ公開、③話者コミュニティとの共同での記録・コンテンツ作成を進めた。①については、対面調査と電話による調査を組み合わせて行い、全地点の80%程の調査を済ませた。②について、実際にウェブサイトに掲載した状態での動画を話者に見てもらい、承諾を取り、9地点のデータを公開した。また、英語版サイトの構築も進めた。③について、FUMO 山本史氏の協力のもと、宮古総合実業高校生徒と共同で、地域の民話と方言に触れることのできる紙芝居作成を行った。この作品についても、ウェブサイトでの公開準備を進めている。また、これらの活動や方言記録のためのウェブサイトのデザイン、開発済みの字幕システムなどについて、国際学会で発表を行った。

2018年度活動報告(現在までの進捗状況)

本年度は代表者の身体的都合(出産育児関連)による渡航困難時期があったため、談話資料の収集、話者の言語意識に基づく方言境界の調査について、目標通りの進捗がなかった。一方で、ウェブサイトの整備拡張や、話者コミュニティと共同でのコンテンツ作成、また調査や談話収集のための打ち合わせを進めており、全体としては「やや遅れている」とした。

2017年度活動報告(研究実績の概要)

本研究の目的は、消滅の危機にある南琉球宮古語について、豊かな方言バリエーション全体を記録保存するためのデータ収集、および記録のための社会言語学的基盤、電子公開の基盤の整備である。宮古語の方言は数十あるとも考えられるが、実際に話者が区別しうる方言数はどのくらいあるのか、それがどのような区分を成しているのかについては、明らかでない。本研究は、そのような話者の言語意識に基づく方言区分・方言数を明らかにしてその記録の単位を割り出すとともに、それぞれの方言についての動画による談話資料を収集し、共有のために電子公開を行う。
本年度は、談話の収集と言語意識に基づく方言区画のほか、本研究の計画の一部である地元の高校生(宮古総合実業高校)と協同でのデータ収集および公開用コンテンツの作成、公開を進めた。試作済みのウェブサイト(「みゃーくの方言 ―宮古語諸方言の記録―」http://miyakogo.ryukyu)について、作成依頼先のcoban.lab 上田寛人氏との相談のうえ、より多方言記録に適した構造に改良し、またデータアップロード時のユーザビリティも向上させ、高校生が自身でデータのアップロードやページ作成ができるようにした。これにより、本ウェブサイトにあげられたデータの一地域(来間)を高校生が担当する形になっている。これらの活動や方言記録のためのウェブサイトのデザインについて、次年度国際学会で発表を行う予定である。談話データは、新たに2地域、既にデータがある2地域での収集を行い、目標の新規4地点には及ばなかったが、これまで代表者が収集した談話データも含め、旧市町村すべてを網羅するデータが揃った。方言区画調査についても、対面調査での方式を継続したため目標の全地点での調査は行えていないが、主として中心部平良地域での調査を進め、平良地域内ではほぼ言語意識としての方言差がないことがわかった。

2017年度活動報告(現在までの進捗状況)

本年度の研究実施計画では、A.宮古語諸方言の談話収集4件、B.話者コミュニティの意識としての方言の数および区分を抽出するための調査を全域で実施、C.ウェブページでのデータ試公開を計画していた。本年度は高校生との協同作業によるAおよびCの作業が予定以上に進展したが、Aについては、収集は4件だがこのうち既に収集した地域のものが2件、新規のものが2件にとどまり、新規4件の目標には至らなかった。またBについては、昨年度末に計画した大量一括調査かのうな郵送アンケート方式による問題点がわかり、実際に行ったのは対面式調査のみで、目標の全域での調査には至らなかった。全体の計画目標を変更するほどの遅れではないが、これらにより、「やや遅れている」の評価とした。

2016年度活動報告(研究実績の概要)

本研究の目的は、消滅の危機にある南琉球宮古語について、豊かな方言バリエーション全体を記録保存するためのデータ収集、および記録のための社会言語学的基盤、電子公開の基盤の整備である。宮古語の方言は数十あるとも考えられるが、実際に話者が区別しうる方言数はどのくらいあるのか、それがどのような区分を成しているのかについては、明らかでない。本研究は、そのような話者の言語意識に基づく方言区分・方言数を明らかにしてその記録の単位を割り出すとともに、それぞれの方言についての動画による談話資料を収集し、共有のために電子公開を行う。
本年度の成果は次のようである。まず方言区分について、8地域での聞き取り調査を基に、言語意識に基づく方言区分が主に自治会ベースの行政区境界にある可能性が高いことを示す学会発表を行った。動画については、3地域(上地、久松、来間)で談話収集を行い、書き起こしと訳を付し、別財源(特別研究員奨励費 課題番号:25・40096)で作成したウェブページに試公開している(「みゃーくの方言 ―宮古語諸方言の記録―」http://miyakogo.ryukyu 2017年4月現在試公開中)。また、本研究内で、サイト内で使用するより見やすい動画の字幕表示機構を作成した。書き起こし全体を俯瞰しながら現在再生中のテキストを強調するシステムとなっており、多言語対応で切り替えが可能である。本システムは、危機言語記録保存を主な目的とした研究者や話者コミュニティに配布する準備を進めている。

2016年度活動報告(現在までの進捗状況)

本年度の研究実施計画では、A.宮古語諸方言の談話収集2~3件、B.話者コミュニティの意識としての方言の数および区分を抽出するための調査、116地域中半数での調査実施、C.電子公開のためのウェブページの作成・開設とデータ公開を計画していた。まず、Aについては、3件の談話を収集している。Bに関しては、年度内の調査実施地点としては目標に至っていないが、調査実施のための基盤づくり(調査票、話者コミュニティとの連絡)が進んでおり、次年度に進展が見込める状態となっている。Cに関しては、業者にサイト作成依頼を出すところまでを目標としていたが、既に公開のためのサイトを作成し試公開を行っている点、またよりよく公開するための字幕システムの整備・作成を行っている点などで、期待以上に研究を進めることができた。以上から全体として、おおむね順調に研究が進展しているといえる。