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ソースコミュニティに優しい民族誌資料公表モデルの構築に向けた博物館人類学的研究(2021-2026)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|挑戦的研究(開拓)

伊藤敦規

目的・内容

研究の概要

本研究では、民族誌資料の公表分野での「Indigenization(民族誌資料が由来する文化的脈絡に配慮する試み)」を展開する。具体的には、日本国著作権法が定める権利者捜索のための「相当な努力」の枠組を参考にしながら、民族誌資料公モデルを新たに構築する。ソースコミュニティの人々にとって優しい、法的・文化的に配慮した公表モデルを学界や博物館団体などに提唱することで、これまでの民族誌資料の取扱いをめぐる人類学と博物館の体系や方向を大きく変革・転換させる。

研究の目的

世界の人類学博物館は21世紀に入り「Indigenization(民族誌資料が由来する文化的脈絡に配慮する試み)」に取り組んでいる。代表者もその一環としてソースコミュニティとの「再会」を図り、民族誌資料の文化的生命力を回復できることを証明した。「再会」の結果、作り手の思想または感情を創作的に表現した代替不可能な著作物が多く見つかり、アノニマスな人々による代替可能な民具的な物質文化という従来の民族誌資料の前提が覆された。本研究では資料の公表分野での「Indigenization」を展開する。具体的には、日本国著作権法が定める著作権者探しのための「相当な努力」の枠組を参考にして民族誌資料公表モデルを新たに構築する。ソースコミュニティの人々にとって優しい公表モデルを学界や博物館団体に提唱することで、従来の民族誌資料の取扱いをめぐる人類学と博物館の体系や方向を大きく変革・転換させる。

活動内容

2022年度実施計画

当初の研究計画に則り、二年度目も、これまでに収録したソースコミュニティの人々による「もの語り」映像記録の整理と映像編集に注力する。

2021年度活動報告(研究実績の概要)

ソースコミュニティの人々による「もの語り」映像記録に関して、日本語翻訳と映像に字幕や関連画像を挿入する編集作業を済ませた107本について、国立民族学博物館2階本館展示場(データステーション)で公開した。
国立民族学博物館のフォーラム型情報ミュージアム資料集として査読付き編著を二冊刊行した。
日本国著作権法が定める権利者捜索のための「相当な努力」の枠組を参考にしたソースコミュニティに優しい民族誌資料公表モデルの概要について、国立民族学博物館2階本館展示場(探究ひろば)でパネル展示を行った。また、民族誌資料公表のために文化庁長官裁定制度を実際に活用した。その際、ソースコミュニティへの優しさに配慮し、ソースコミュニティの人々(米国スミソニアン協会国立アメリカインディアン博物館館長のシンシア・チャベス・ラマー博士(プエブロ諸民族のサンフィリペ出身)とアメリカ先住民アート文化博物館/人類学研究所の副館長のマシュー・マルティネス博士(オーケーオウィンゲ出身)に照会し、彼らの見解を添えて申請し、受理された。

2021年度活動報告(現在までの進捗状況)

新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延により、カウンターパートの中に感染したり、死去した者がいた。
国内・国外出張がままならないものの、これまでに収録したソースコミュニティの人々による「もの語り」映像記録の整理を集中的に行うことができた。公開に至っていないものの、松永はきもの資料館に関しては184点の映像編集を終えた。