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生物としてのヒトと言語変化(2021-2023)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|挑戦的研究(萌芽)

菊澤律子

目的・内容

研究の概要

本研究では、人間の言語の特徴を、ヒトの生物としての特徴という視点から見ることで、新たな言語観と言語研究の手法の創出につなげようとするものである。これまでの言語変化の研究では、具体的な言語現象を分析し、そのパターンと変化が起きる条件を解明することを主軸としてきた。これに対し本研究では、伝達シグナルの異なる音声言語と手話言語という異なるモードの言語を対象とし、生理学的・生物学的な視点から言語現象を分析することで、言語に関する新たな知見を拓く。なお、ここでいう「手話言語」とは、音声言語を視覚化した対応手話ではなく、音声言語とは異なる独自の文法を持つ、ろうコミュニティーで使われる手話言語のことを指す。

研究の目的

本研究では、言語変化を対象とし、「言語のあり方」を「ヒトという生物が使うもの」という視点から見る新たな研究分野を開拓することを目的とする。これまでの言語変化の研究では、具体的な言語現象を分析し、そのパターンと変化が起きる条件を解明することを主軸としてきた。また、言語変化に影響を与える要素としては、生産(発音)と受容(理解)という相反する効率化の拮抗などの内的要因、多言語社会との接触を含む社会構造、教育やメディアの影響などの外的要因が知られている。これに対し本研究では、伝達シグナルの異なる音声言語と手話言語というふたつのタイプの言語を対象とし、生理学的・生物学的な視点から言語現象を分析することで、言語に関する新たな知見を拓く。なお、ここでいう「手話言語」とは、音声言語を視覚化した「対応手話」のことではなく、音声言語とは異なる独自の文法を持つ、ろうコミュニティーで使われる手話言語のことを指す。

活動内容

2022年度実施計画

二年度目は、各関連分野、また、これまで言語研究に直接関連づけられてこなかった分野の現状と研究成果、また、言語に対する見方などの共有を進める。分野の異なる研究者同士の交流の中で、キーとなる概念や人間の動きを選定する。これを基盤として、三年度目にはこれまでと異なる視点で言語変化にアプローチするための具体的な方向性を見出す。

2021年度活動報告(研究実績の概要)

オンラインでの研究会を開催し、スタートアップメンバーによるそれぞれの分野の紹介と視点の共有を行った。分野ごとの視点の違い、また、言語変化や言語変化に関する興味の持ち方の違いを明らかにするのが目的であったが、実際にはそれ以前に、各分野で基盤となっている知識について、分野が異なる研究者間でほとんど共有されていないことが明らかになった。そのため、まず、脳に関すること、文化に関すること、言語そのものに関すること、動物のコミュニケーションに関すること等、まず一歩立ち戻った基礎情報の共有をする必要性が指摘された。これを受けて、言語が伝わる仕組み、言語習得、言語教育と言語の継承、言語損傷、動物のコミュニケーション等について、一般向けの概要をまとめ、メンバー間で共有するだけでなく、民博の秋の特別展示で紹介できるようにした。また、二年度目以降に開催する研究会の具体的なテーマについて検討を進めた。

2021年度活動報告(現在までの進捗状況)

これまで言語変化については、言語そのものの変化の方向性と特徴に対象がしぼられてきたが、実際には、生活や身体的な制約等のしばりを受けている。言語変化を新たな角度から見るための、異分野間交流とその方向性について検討することができた。ただし、対面の方が好ましい議論はできないという制約はあった。