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DNA多型を用いたタマリンドのマダガスカルへの移入経路と分布拡大過程の解明(2020-2023)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|基盤研究(C)

市野進一郎

★2021年10月1日転入

目的・内容

研究の概要

本研究の目的は、熱帯地域に広く生育する有用果樹であるタマリンドの起源地とそのマダガスカルへの移入経路を解明することである。起源地としては、アフリカ大陸、インド、マダガスカルの3つの仮説が提唱されているが、現時点で結論は出ていない。本研究では、葉緑体DNAと核DNAの遺伝的変異をこれら3地域で比較することで起源地を推定するとともに、各地の地域集団間の遺伝的類似度からタマリンドがどのような経路でマダガスカルや他の地域に広がったかを解明する。

研究の目的

本研究の目的は、熱帯地域に広く生育する有用果樹であるタマリンドの起源地とそのマダガスカルへの移入経路を解明することである。マダガスカルに住む人びとは、東南アジア、アフリカ大陸、アラブ地域、南アジアなどからの移住者によって形成されたと考えられているが、ヨーロッパ人到達(1500年)以前のアフリカ大陸との交流については情報が不足している。タマリンドは世界の熱帯地域に広く生育する樹種で有用樹として多くの地域で利用されている。マダガスカルでは、ヨーロッパ人到達以前に持ち込まれた「史前帰化植物」とみなされており、アフリカ大陸との交流を示す証拠とされる。その一方で、タマリンドがアフリカ大陸から持ち込まれたという確実な証拠はなく、逆にマダガスカルがタマリンドの起源地であると主張する研究者もいる。本研究では、遺伝学的手法を用いて、この論争に結論を出す。

活動内容

2023年度実施計画

2022年度事業継続中

2021年度活動報告(研究実績の概要)

本研究では、熱帯地域に広く生育する有用果樹であるタマリンドの起源地とそのマダガスカルへの移入経路を解明することを目的として、DNA多型解析とマダガスカルにおけるタマリンド林の形成・維持に関する聞き取り調査をおこなっている。今年度は、タマリンド試料を採取する現地調査を予定していたが、前年度に引き続き、新型コロナ感染症による渡航制限や航空便の運休によって海外渡航を延期せざるをえなかった。今後の現地調査再開に向けて、アンタナナリヴ大学との国際共同研究の準備を継続しておこなった。10月に研究代表者の所属研究機関の変更があったため、MTA (Material Transfer Agreement)や今後の調査許可等について確認作業をすすめた。同時に、マダガスカル西部のキリンディ森林における調査を実施するために、ドイツ霊長類センターとの国際共同研究の準備をおこなった。
前年度に引き続き現地調査が延期になったため、今年度も現地調査以外の方法で可能な研究をおこなった。マダガスカル南部におけるタマリンド、キツネザル、地域住民(タンドゥルイの人びと)の3者間の文化的・生態的関係を調べた結果をまとめ、African Potential Book Series(Langaa RPCIG)の論文集の1章として出版した。また、マダガスカルの事例と比較するために、アフリカ大陸部の地域住民によるタマリンドの利用について、文献調査をおこなった。その結果、特に西アフリカでの利用がさかんであることがわかったため、新たにトーゴのロメ大学の研究者との国際共同研究の準備をすすめた。

2021年度活動報告(現在までの進捗状況)

前年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症による渡航制限や航空便の運休によって、予定していたマダガスカル、アフリカ大陸、インドでの現地調査が延期になったため。マダガスカルの他の地域やアフリカ大陸部におけるタマリンドの利用に関する情報を収集するなど、現地調査をおこなわずにできる研究をすすめ、また現地調査再開にむけて、複数の国際共同研究の準備をすすめたが、全体としては大幅な遅れとなっている。

2020年度活動報告(研究実績の概要)

本研究では、熱帯地域に広く生育する有用果樹であるタマリンドの起源地とそのマダガスカルへの移入経路を解明することを目的とし、DNA多型解析とマダガスカルにおけるタマリンド林の形成・維持に関する聞き取り調査をおこなっている。研究2年目にあたる今年度は、マダガスカル、アフリカ大陸、インドなどでタマリンド試料を採取する現地調査を予定していたが、新型コロナ感染症による渡航制限や航空便の運休によって海外渡航を延期せざるをえなかった。現地調査再開に向けて、アンタナナリヴ大学との国際共同研究の準備を継続しておこなった。マダガスカル国内でタマリンド試料を採取するための調査許可、採取した試料を首都アンタナナリヴまで移動させる移動許可、採取した試料を国外に持ち出す輸出許可など、研究に必要な許可手続きについて確認し、その準備をすすめた。その一方で、渡航の目処が立たなかったため、生物多様性条約の遵守に必要な、事前情報に基づく同意(PIC)や遺伝資源の利用に関する合意(MAT)の作成に必要な研究計画などを新たに作成することはできなかった。
現地調査が延期になったため、現時点で分析に必要なタマリンド試料を採取できていない。そのため、前年度に引き続き、現地調査以外の方法で可能な研究をおこなった。タマリンドに関する地域住民の認識と利用実態について、これまでの調査で収集した情報や文献調査によって得られた情報を取りまとめた。タマリンド、キツネザル、地域住民(タンドゥルイの人びと)の3者間の関係に着目して、その文化的関係や生態的関係を調べた。その結果、この3者間の関係が相互に利益のある関係として成立していることを明らかにした。この成果は、国内の研究集会で発表し、カメルーンの出版社(Langaa RPCIG)から刊行予定の論文集
(African Potentials Book Series)に掲載予定である。

2020年度活動報告(現在までの進捗状況)

新型コロナウイルス感染症による渡航制限や航空便の運休によって、予定していたマダガスカル、アフリカ大陸、インドでの現地調査が延期になったため。マダガスカルにおけるタマリンド林の利用に関する情報を収集し、研究集会で発表するなど現地調査をおこなわずにできる研究をおこなったが、全体としては大幅な遅れとなっている。