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アディゲ人の歌謡と舞踊にみる共同体意識とジェンダー観:ジョージアとの比較を通じて(2022転入-2023)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|若手研究

久岡加枝

★2022年4月1日転入

目的・内容

近年では日本においても、ジョージアやアディゲなどのコーカサス地方の音楽や舞踊の受容が進みつつある。こうした状況をふまえて、本研究では、音楽や舞踊によって表現されるコーカサスの神話、叙事詩などに基づく世界観について、これまで主に現地で行われてきた民俗学研究の成果から分析したうえで、観光化が進む現在のコーカサスにおいて、いかなる民族、地域文化の表象行為が行われているのか調査を行っていく。

活動内容

2023年度実施計画

2022年度事業継続中

2022年度活動報告(研究実績の概要)

本研究では、ジョージア(グルジア)人とアディゲ(チェルケス)人の歌謡と舞踊の事例から、コーカサス地方における伝統の保存活動と共同体意識と結びついた文化表現のあり方を明らかにする。
科研費での研究中断期間中(2021年8月~2022年3月まで)の期間を利用してロシア連邦のアディゲ共和国に渡航した際に、アディゲ人の若い世代の間で、伝統楽器を用いた音楽やナルト叙事詩の他、民族舞踊団で上演される舞踊のレパートリーが民族文化(習慣)「Khabze」として重視されていることが明らかになった。
特にジョージア人などと共通するレズギンカをはじめとするアクロバティックな舞踊は汎コーカサス的な文化のアイコンとみなされていることが明らかになった。2022年2月以降、ロシアのクライナへの軍事侵攻が始まり、ロシアでの調査を継続することが難しくなったため、ジョージアで調査を行うことにした。
ジョージア文化・スポーツ省の管轄下にあるトビリシのチェルケス・文化センターは、チェルケス人だけでなく、チェチェン、イングーシ、ダゲスタン、オセチアなどの北コーカサスからの研究者を招待した学会を頻繁に開催しており、コーカサスにおける文化研究の重要な拠点として機能していることが明らかになった。特にチェルケスをはじめさまざまな民族の間に伝わるナルト叙事詩は非常に重視されており、本研究ではコーカサスのナルト叙事詩の基本的なヴァリアントと考えられてきたオセット人のナルト叙事詩についてまず調査を行うことにした。トビリシの議会図書館で『Etnograficheskoe obozrenie』などの帝政期の雑誌における民族誌的記述の他、ソ連時代に南オセチアで刊行された学術雑誌『Izvestiya』の複写を行い、ナルト叙事詩が現地の研究者の間でどのように研究されてきたのかロシア語、オセット語、グルジア語の文献の調査を進めた。

2022年度活動報告(現在までの進捗状況)

2022年度はジョージアに渡航し、研究を進めることができた。