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ミックスをめぐる帰属と差異化の比較民族誌――オセアニアの先住民を中心に

研究期間:2022.10-2025.3

山内由理子

キーワード

先住、ミックス、オセアニア

目的

本共同研究では「先住(Indigenous=先住/土着)」かつ「ミックス」とされる人々をめぐる帰属と差異化の比較民族誌的考察を行い、ポスト・ポストコロニアルな現代世界での生の経験を説き明かす。「ミックス」とは「混血」とも呼ばれてきた複数のエスニックカテゴリーに跨る人びとを指す。
大規模な人の移動をもたらした植民地化に伴い形成された「ミックス」の人々は、近代西洋的な排他的二分法に基づく植民者/被植民者(非先住民/先住民)の境界に関わるとして植民地当局に管理された。一方で、在地の論理においては親族やサブスタンス等に基づき受容と差異化のポリティクスが展開され時には帰属が問われる対象だった。脱植民地化以降も「先住」性を主張する人々には往々にして前者的な排他的二分法が自他双方により適用され、そのミックス性の実態には長らく目が向けられないできた。
本研究はこの「先住」であり「ミックス」である人々の経験を対象に、非入植国家と入植国家が混在し、植民地化の影響が残る現在のオセアニアで近代西洋的な論理と在地の論理の展開と絡み合いを探る。各地の事例を比較し一般理論の構築を目指す。

2023年度

研究会
2023年6月10日(土)14:00~19:00(国立民族学博物館 第4演習室 ウェブ開催併用)
長島玲央(東京成徳大学)「グアム・チャモル(チャモロ)にとってのミックスと先住性」

2022年度

研究会を2回開催する(10月、1月)。当研究会は既にパイロット的に2021年の11月、2022年2月、2022年4月に研究発表がなされ、研究会の趣旨、研究枠組み、共通購読文献などについて参加メンバー間の確認や意見交換が行われた。2022年10月と2023年1月の研究会においては以上を踏襲し、複数のエスニックカテゴリーを横断する経験を通じての「先住性」カテゴリーの相対化や、ミックス性が発現される場やコンテクストへの注目などを基本的な方向性とする。毎回2名程度、オセアニア各地の「先住」であり「ミックス」である人々の経験を焦点とした民族誌的事例に基づいた研究発表とディスカッションを予定している。参加メンバーの担当地域は下記の表のとおりである。

【研究地域分担】 <入植国家>
オーストラリア 山内由理子(兼総括)、飯嶋秀治
ニュージーランド 深山直子
ハワイ 井上昭洋
グアム 長島怜央
 
<非入植国家>
サモア 山本真鳥
フィジー 丹羽典生
ソロモン諸島 佐本英規
パラオ 紺屋あかり
タヒチ 桑原牧子
【館内研究員】 丹羽典生
【館外研究員】 飯嶋秀治、深山直子、井上昭洋、長島怜央、山本真鳥、佐本英規、紺屋あかり、桑原牧子
研究会
2022年10月29日(土)17:00~22:00(国立民族学博物館 大演習室 ウェブ開催併用)
深山直子(東京都立大学)「ニュージーランド先住民とミックスであること」
2023年2月6日(月)14:00~18:00(国立民族学博物館 大演習室 ウェブ開催併用)
紺屋あかり(明治学院大学)「パラオにおける日本残留孤児をめぐる排除の論理」(仮題)