Select Language

ドマーキ語の文法記述(2023-2027)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|基盤研究(B)

吉岡乾

目的・内容

研究の概要

パキスタンの北部、カラコラム山中で僅かな話者によってのみ話し残されているドマーキ語という危機言語に関して、現地調査に基づいてその文法構造を明らかにし、文法記述をするのがこの研究である。
周辺の言語と少しばかり系統的に遠い位置にあるこの言語にはもう、これまでの調べで、3つの集落で数名ずつ、合計でも100人に満たないくらいにしか流暢な話者が居ないことが明らかになっている。
毎年、現地調査に赴いて少しずつその実像を調べ上げ、2年目後半頃に簡易文法スケッチ、5年目には集大成として詳細な文法書を書き上げるのを目指している。

研究の目的

本研究は、現地調査で集めたデータに基づいて、パキスタン北部の、消滅の危機に瀕している言語であるドマーキ語の文法を詳らかにすることを目的としている。
国際的に危機言語に対する意識の高まっている昨今であるが、現地入りして言語を記述する動きは、危機言語に限らず、量的に依然としてそう多くない。本研究で対象とするパキスタン北部は幾つもの系統の言語が多々入り乱れている地域であるが、それらの言語の記述研究は過去から現在まで、常に研究者不足の状況にある。本研究ではその中でも特に、ギルギット・バルティスタン州フンザ県モミナバード村などで話されているドマーキ語を、現地調査で得られたデータを基に記述する。この言語の包括的な文法記述は古い枠組みでされたものがあるのみであり、他の研究者の取り組めていない喫緊のテーマである。

活動内容

2023年度実施計画

初年度である本年度は、既に本格調査に着手しているモミナバード村以外でドマーキ語話者のあるという二つの集落、すなわち、ナゲル谷の大ナゲル町ベディシャル集落と、ゴジャール谷のシシカト村とを調査に訪れ、今後の継続調査のための、協力者探しと、簡便な方言差の確認を中心に進めたい。
一方で、二年目の後半に途中経過としてドマーキ語の項目網羅的な文法スケッチを書き上げるのを目標としているため、モミナバード村の調査でも手薄になっている文法事項(情報構造など)に関して、手広く聞き出しを進める。
どうしても言語接触が強くあると想像される、ブルシャスキー語や、シナー語、それにワヒー語などに関しても、随時、予備的に調査を図る。
特に後二者はこれまでに十分調査できていないため、多めに調査を実施したく考える。
調査によって新たに判明したこと、却って不明になったことなどは、適宜まとめて、研究会や学会などで発表をし、論文としてまとめ上げて行く。