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薄明宗教空間における多色視覚芸術の再現と認知に関する科学的研究(2023-2025)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|基盤研究(B)

末森薫

目的・内容

研究の概要

燃焼光で照らされた薄暗い空間において、さまざまな色彩が用いられた視覚芸術がどのような役割を果たしているかを科学的に検証することを目的として、①3次元技術と模写による再現洞窟空間モデルの制作、②分光画像計測による洞窟空間の色情報および燃焼光の分光特性の取得、③色情報と光環境を実装した仮想再現空間の構築、④脳神経科学による仮想再現空間の評価、の4つの項目を軸に研究を展開し、洞窟の光環境が視覚芸術の創造に及ぼす影響や、視覚芸術で彩られた宗教空間における体験が人びとの精神・神経活動にもたらす意味を考察する。

研究の目的

古来、人は蝋燭などで照らされた薄暗い洞窟に絵を描き、精神世界を創造してきた。仏教の世界を創造した石窟寺院には、暗い空間にもかかわらず多くの色を用いて壁画が描かれている。中には配色によって幾何学性を示し、光と色の効果を巧みに用いた図もある。本研究は、蝋燭などの燃焼光で照らされた石窟寺院において、多色を用いる視覚芸術を人がどう創造し、またどう認知したのかを科学的に検証することを目的とする。

活動内容

2023年度実施計画

本年度は、中国における現地調査を実施し、研究対象とする洞窟空間を選定するとともに、対象の洞窟空間における3次元計測を実施する。また、3次元データをもとに3次元印刷をおこない、模写・模型を制作する準備を進める。
また、対象とする壁画に用いられた色材の分光特性や、異なる材料でつくられた各種の燃焼光の分光特性を取得し、仮想的に薄明空間を再現するために必要となる情報の収集、それらのデータの実装方法を検討する。
さらに、多色視覚芸術の視認における脳活動を検証するために、規則的な配色で色彩を再現して描いた壁画模写作品を用いた予備実験を進める。