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水俣病運動アーカイブズの形成と活用、行為主体性に関する民族誌的研究(2023-2026)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|基盤研究(C)

平井京之介

目的・内容

研究の概要

本研究の目的は、熊本県水俣市にある社会運動団体のアーカイブズを調査研究することにより、アーカイブ実践と社会運動とのあいだにいかなる相互作用があるか、運動団体のアーカイブ実践が主流派アーカイブ実践に対していかなる急進的なモデルを提供するかを明らかにすることである。具体的には、現地調査を実施し、以下の問いに答える。①運動アーカイブズはどのように形成され、その資料はいかなる性質をもつか。②社会の関心や価値観が変化するなかで、運動アーカイブズの資料は利用者からどんな新しい意味を付与され活用されるようになったか。③アーカイブ実践が変化することにより、運動団体の運動実践にどのような影響がもたらされたか。

研究の目的

本研究の目的は、熊本県水俣市にある社会運動団体のアーカイブズについて民族誌的な調査研究を実施することにより、以下の3つの問いに答えることである。
①熊本県水俣市にある水俣病センター相思社(以下、相思社)のアーカイブズがどのように形成され、いかなる性質をもつかを明らかにする。
②社会の関心や価値観が変化するなかで、かつて運動のために収集された相思社のアーカイブ資料が、研究者や一般市民など、新たな利用者にどのような新しい意味を付与され活用されているかを明らかにする。
③所有するアーカイブ資料が新たな目的のために活用されるようになったことにより、相思社のアーカイブ実践や運動実践はどのような影響を受けたかを解明する。

活動内容

2023年度実施計画

本研究は、熊本県水俣市の水俣病センター相思社でアーカイブ資料とアーカイブ実践に関する計8か月間の現地調査を実施し、そのデータを分析することにより研究を推進する。現地調査においては、相思社を研究拠点とし、参与観察を中心とする民族誌的な調査方法を採用する。ここでの参与観察とは、申請者が可能な限り職員と同じ活動に従事しながら観察してデータを収集することである。歴史的データの収集については聞き取り調査と文献資料調査を組み合わせておこなう。なお、相思社のアーカイブ資料の実態調査においては、膨大な作業を効率的に進めるため、最初の3年間に研究補助を雇用する。具体的な研究計画は以下の通りである。
<令和5年度> 相思社において約2か月間の現地調査を実施し、資料の収集年代やその特徴、分量、分類、保存など、アーカイブズの全体像を把握する。
<令和6年度> 相思社で約3か月間の現地調査を実施し、アーカイブ資料がどのように作成され収集されてきたか、資料の内容にどのような特徴があるかを明らかにする。また、国立民族学博物館の共同研究会等において発表をおこない、研究成果を確認する。
<令和7年度> 約2か月間の現地調査を実施し、1990年代以降の水俣病運動をとりまく環境変化のなかで、活動家以外の、環境や人権に関心のある教員や学生といった新たな利用者によって、資料がどのように活用されるようになったかを解明する。また関連する学会で発表をおこない、成果を確認し、課題を設定する。
<令和8年度> 約1か月間の現地調査を実施し、相思社のアーカイブズやアーカイブ実践が相思社の社会運動をどのように方向づけてきたか、また現在の活動においてどんな役割を果たしているかを明らかにする。また昨年度の発表原稿を改稿し、新しいデータを付加して 最終的な成果刊行をおこなう。