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用の美の継承 ーデザインミュージアムを想定したアーカイブ・展示手法の開発(2023-2027)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|若手研究

宮前知佐子

目的・内容

研究の概要

本研究の目的は、日本にはまだ存在しないデザインミュージアムを想定し、博物館を通じて、「用の美」を継承していくための情報公開・展示手法を提案することである。デザインミュージアムが備えるべき機能について調査を行いながら、「手になじむ」と称される日常の中のデザインを対象に、外形の美しさや、時代に適応した機能性をアーカイブ化する手法を検討し、「用の美」の継承方法を開発する。工学的な機能性と美学的な意匠を併せ持つ実用品の、多面的な「美」の定量化、美の理解に向け、外形を精確に測るという工学的手法や、時代によって変容するコンテクストを記述するという人文社会学的な視座を融合する。

研究の目的

本研究の目的は、「手になじむ」と称される日常の中のデザインを対象に、「用の美」すなわち、外形の美しさや、時代に適応した機能性を、いかにして測り記録していくのか、アーカイブ手法を検討し、「用の美」の継承方法を開発することである。
デザインミュージアムの抱える問題点を調査し、複雑な著作権や意匠権を考慮したコンテンツ公開方法を検討しながら、異なるバックグラウンドに向けて、「用の美」の魅力を訴求する情報発信手法・展示公開手法を提案する。
情報科学の技法を用いた文化遺産のデジタル記録手法および新たな展示手法の開発や、文化遺産を保護しながら公開する手法の研究で培ってきた知見を活かし、「用の美」の記録手法を検討していく。
また、海外の先行事例を調査し、本格的なデザインミュージアムが存在しない日本において、博物館など文化施設での「用の美」の展示手法を検討し、継承手法を開発する。

活動内容

2023年度実施計画

初年度である2023年度は、研究動向や業界動向を把握するための書籍の購入費や、実用品を収蔵する海外のデザインミュージアムの抱える問題点などを解明するための費用として、外国旅費を計上している。「用の美」に限らず、広く文化施設における収蔵品の記録手法ならびに情報公開手法・展示手法を調査する。
2024年度は、これまで計測が難しいとされてきた陶磁器、ガラス製品、漆器などの記録手法を検討する。精密な計測が難しいこれらの素材に対して、設計図やスケッチなどをもとに、外形の三次元的な復元が可能であるかを検証する。外形の三次元的な復元ならびに、復元した後の3Dデータの保存・公開手法を研究していくにあたり、3Dデータの可視化が必要である。そこで、3Dデータの表示・編集用のソフトウェアの費用を計上している。また、「用の美」のデザインとしての実用品を保持している美術系や工学系の大学博物館などの調査のため、国内旅費を計上している。引き続き、先行事例として、海外のデザインミュージアムを視察するための外国旅費も計上している。展示のために必要なコンテクスト情報や、外形以外に記録が必要な項目などを調査するためである。なぜ日本国内ではデザインミュージアムが設立されてこなかったのか、デザインミュージアムではどのようなコンテンツが求められているのかを解析するため、国内旅費ならびに海外旅費など旅費に予算配分の比重を置いている。
2025年度は、2023年度と2024年度の調査をもとに、博物館内などの展示を想定してコンテンツの試作を行う。そのためコンテンツ試作の費用を計上している。また、コンピュータグラフィックスを用いたデジタルコンテンツだけではなく、3Dデータの出力先として、3Dプリンタの利用も検討しているため、3Dプリンタの利用に関する費用も計上している。3Dプリンタの性能も近年向上がめざましく、最新の3Dプリンタを利用しプロトタイプの出力を試みることは、業界動向調査の一環でもある。これらの試作に関して、その成果を、科学コミュニケーション学会や、国際博物館会議など、関連する国内外での学術会議で発表するための旅費も計上している。
2026年度は、2025年度の国内外での学術会議で発表後の評価を踏まえ、コンテンツの改善点を検討する。また、試作したコンテンツに関しても評価を行い、その結果を国内外の学術会議で発表するための旅費も計上している。国際会議への参加は、動向調査も兼ねている。
2027年度は、2026年度までの研究成果を踏まえ、博物館内などの展示を想定したコンテンツの改良を行うためのコンテンツ編集費用を計上している。また、最終的な成果を発表するための旅費も計上している。